名作・神スレ

【名作スレ】星新一っぽいショートショートを作るスレ『飽きっぽい人』

186: 99 ◆cnkCYB/0Q2 :2008/12/20(土) 00:42:48 ID:iRn/vgKZ

「日記」
とある小学校のクラスでは、宿題として毎日の日記が決められていた。
前日のうちに書かれた日記を提出し、それを毎日教諭がチェックする。
ある日、とある教諭は一人の女子生徒の日記がオカシいことに気づく。

はじめはふざけているのかと思っていた教諭だったが、
数日のうちにオカシさの理由に気づいた。
その女子生徒の日記には、次の日(教諭が日記をチェックする日)のデキゴトが書かれていた。

女子生徒の日記は一日ずれていたのだ。
教諭はおどろくと同時に、これを金儲けに利用できないかと考えた。
株、先物、為替。

しかしそのどれもが小学生が日記に書くようなことではないし、
それを書くようしむけることもできそうになかった。
教諭があれこれ考えをめぐらすあいだにも、
女子生徒の日記には、翌日のTV番組のたわいない感想や、
翌日の友達との会話が書かれていく。
そんな、金にもならない未来の日記に、教諭は歯がゆいおもいをしながら目を通していた。

そして悩みに悩んだ末、教諭は「宝くじ」という結論を得た。
それは自分で好きな番号をえらび、
発売しめきりの翌日に当選番号を発表するたぐいのものである。
これなら数字を書くだけでいいし、しむけるのも簡単そうだと踏んだ。

しかし大金を得るためには、宝くじの発売が終わる前に――つまり日記を書くその日に、
女子生徒の日記を読まなければならない。
教諭はまず、女子生徒に宝くじの話題をして興味をもたせた。

はじめはうまくいかずに、いらだちを募らせたが、
数週間つづけた結果、女子生徒は日記に宝くじの当選番号を書いてきた。
それは確かに当選番号だった。

そして教諭は行動に移した。
宝くじ〆きり日のホームルームを使って、生徒たちにその日の宿題をするように告げた。
そのまま女子生徒の日記をみて、当選番号を知ろうとしたのだ。

算数ドリルや、漢字の書きとりをする生徒たちに、教諭は日記を書くことをすすめる。
生徒たちは次々と日記を書き始める。
が、女子生徒だけは日記を書かなかった。冷静さを装いながら教諭がうながすが、女子生徒は、
「書けない」「どうして書けないのかわからない」
と言うばかりで、一向に鉛筆を走らせない。

早くしないと売り場が閉まってしまう。あせりから徐々に語気が強まっていく教諭に、
ついに女子生徒は泣きだした。その泣き声で、その怒りは頂点にたっする。
「どうして書かないんだ!」
教諭は怒鳴りあげると、鬼のようなぎょうそうで女子生徒の首に手をかけた。

女子生徒は「書かなかった」のではなく「書けなかった」ことに、
元教諭は牢屋のなかで気づくこととなる……

187: 創る名無しに見る名無し:2008/12/20(土) 00:47:31 ID:Uvlhek0+
なるほど、死んじゃったら明日はないもんな
これはいいSS
GJ!

190: 創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 07:41:13 ID:y/01wEcm
これだけの短さで見事にまとめてるところが凄いね

191: 創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 14:45:40 ID:vMgD8pTE
好き。

なんか世にも奇妙な物語とかにもありそう。

10:『夢の男』:2008/09/16(火) 13:59:52 ID:yEJjhkfU

『夢の男』

女は眠りにつくと、毎晩同じ夢を見た。異国の地で理想の男が現れる幸せな夢だった。
だが女は悲しみに暮れていく。いつも夢が途中で途切れるからだ。

それでも女は夢の男を忘れることが出来なかった。
女は、夢で見る異国の地を旅して回ることにした。
真新しくも懐かしい印象を与えてくれる異国の地は、次第に女の心を癒やしていった。

ある時、女は夢の男にそっくりな男を見つけた。勇気を振り絞り男に声をかける。
話をしてみると、驚いた事に男の方も毎晩夢で見る女の事を探して、異国の地に訪れていたのだという。

「よかった。これで悪夢から解放される。実は私、結婚しているのです」
その日から女は夢を見る事はなくなった。

11: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 14:56:30 ID:1a01s1x6
100年の恋も冷めたかw

やっぱSSって最後のオチが重要だよなぁ

18: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 17:29:24 ID:SZhRF4iw

死者蘇生装置

エヌ博士は長年の研究の末に、ついに死者を蘇生する装置を開発した。
「博士、おめでとうございます。やりましたね!」
「うむ……しかしな、動物実験では成功したが、実は人体実験がまだなのじゃ」
「ええっ?」
「医者や坊主の知り合いはおらんし、都合の良い死体が転がっているわけでもなし。
 どうじゃ、助手君。いっぺん死んでみてはくれんか?」
助手はその日の内に研究所から逃げ出した。

それからもエヌ博士は、妻や子ども達、
数少ない知り合いに同じ提案をし続けたが、それを受けてくれる人間は現れなかった。
勿論、かかりつけの医者や坊主も、人体実験のために死体を分けてくれる訳がない。
「……誰も、わしの発明を信用してくれん。こうなったら、わし自身で実験をするしかない」
エヌ博士はそう決意するしかなかった。

エヌ博士が自分自身を実験に使う上で、ひとつの問題点があった。
「わしが死んだら、誰が装置を動かすのじゃ?」
装置は非常にデリケートなもので、スイッチを入れてそのままという訳にはいかない。

誰かがとても複雑な数値を計算し、更に複雑な装置の操作をする必要があった。
「助手は全て逃げ出してしまったし。……そうじゃ、ロボットにやらせよう」
その日から、エヌ博士のロボット開発が始まった。

それから十数年後。エヌ博士はついにロボットの開発に成功した。
「XX新聞です! 博士、世界一精巧で頭の良いロボットを作り上げたというのは、本当ですか?」
「そうじゃ。自分で考え、動く事ができる」
「ということは、これからロボット工学の新たな時代が拓けるという事ですか?」
「そんなレベルの話ではない。じきに、もっと凄い技術をお目にかけよう」
エヌ博士は一躍時の人となった。

「では、私はこの薬で死ぬ事にする」
<ハイ、博士>

「後の事はわかっておるな?」
<ハイ、博士ノ生命反応ガ途絶エタ後、装置ヲ起動シマス>

「これでわしは、わしから離れていったあの憎い者どもを見返すことが出来る。頼んだぞ」
<ハイ、博士>

「お前は賢いな。ありがとう、わたしの味方はお前だけだ」
<アリガトウゴザイマス、博士>
しばらくして、エヌ博士の心臓は停止した。

その直後、研究室のドアを乱暴に蹴破るようにして入ってくる者達がいた。
「博士! 私は信じておりました!」
「あなた! 貴方から去ったあたしをゆるして!」
「親父ぃ! すげぇ発明したんだって? ぼろ儲けじゃねえかよ……って、あれ?」
「博士!? ……亡くなってる」
「あ、あなた!?」
「まじか!? ……これ、遺産とかどうなるんだ!?」

……その光景を見ていたロボットには、その後の彼らの有様が手に取るようにわかった。
研究成果の横取り、莫大な名誉と特許収益、それに群がる猛禽達への遺産分与……。
あまりにも醜い未来予想。目覚めた博士はそんな現実を見て、どう思うだろう?
ロボットは、エヌ博士の蘇生をやめる事にした。

20: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 18:55:56 ID:RRsqCOgb
>>18
面白かったよ!
自分で言ってるけど、ロボットが雰囲気出てるw
ロボットのほうが人間より人情的なところが皮肉でいいね

助手に逃げられるまでのくだりは省いて
ロボットに博士が事情を説明する形で始めるともっと星っぽくなるかと思った
なんか偉そうにすまん

36: 生活維持省 ◆KHC5lsDe6g :2008/10/06(月) 19:09:11 ID:XtLfWI+H
>>18 
うまい。星新一クオリティー

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41: 受賞者の先祖:2008/10/17(金) 19:19:32 ID:e/7CFlZd

受賞者の先祖

「もう私がノーベル賞を受賞することはなさそうだ」
博士はその老体を実感しながら呟いた。

「博士、希望を捨ててはいけません」
「いや、私が老い先無いのはもうわかっておる、せめて、息子か、孫、私の子孫に受賞者が出ればいいが」
「では博士、こんな機械を作ってみてはどうでしょう」
私はたった今思いついたアイディアを話す。

「情報のタイムマシンです。もう博士は時間旅行も苦しいでしょう。なので未来の情報を読み取れる機械を作るのです。そして博士の子孫を検索にかけて、受賞者が出たのかを調べるのです」
「エヌくん、それはいいアイディアだ、さっそく開発するとしよう」
時間工学においては天才的な頭脳を持つ博士は、一晩でその機械を作ってしまった。

完成したこの検索機に博士の名字と受賞者のふた単語で検索にかける。
「ケンサクケッカ 1ケン です」
私と博士はそのページを開いた。
そこには博士の子孫が三百年後に、ノーベル平和賞を受賞すると書いてあった。

「エヌくん、私はこれを見て安らかに行くことができるよ」
博士は満足して、そのまま他界してしまった。
私はこの検索機をさらに改善して、小型にし、世間に広く広めた。
そのおかげで私はノーベル化学賞を受賞した。

三百年後、街頭ビジョンではニュースが流れている。
「本日、世界が完全に平和となりました。それにともない、
全国民に平和の貢献の証として、ノーベル平和賞が授与されました。おめでとうございます」

51: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 09:00:07 ID:zMZ1FrcW
>>41さんの作品よかったネ

このスレの趣旨にぴったり。

42: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 19:54:51 ID:/Sqa5us7
おお、このオチはいいなw GJ

52: 時計調整機:2008/10/21(火) 22:41:58 ID:tDpEUpvp

時計調整機

C市の時計屋は、金持ちだがものぐさなことで知られていた。
時計屋の主人には、店中の時計を調整するという日課があったのだが、
ものぐさな彼には、この日課が面倒で面倒で耐えられなかったのだった。

ある日、主人は奇天烈な発明で有名なエヌ博士のところに、
大金の入ったアタッシュケースを持って訪れた。
「あなたが、変な発明をしてくれるっていうエヌ博士かい?」
「変かは知らないが、人の作らない機械なら、何でも作りますよ。」
「私の店には時計が300個くらいあるんだが、毎日調整するのが面倒でしょうがないんだ。
金はあるから、全部の時計を調整する機械を作ってくれないか?」
「ふむ。なかなか興味深い題材ですね。分かりました。1週間後にまた来て下さい。」

1週間後、時計屋の主人は再度エヌ博士の元にやってきた。
「博士、機械はできましたか?」
博士は、アタッシュケースに真空管がついたような機械を前に、うーんとうなっていた。

「電流中継型水晶体振動調整による共振理論は完成したよ。ただ、欠点があってな・・・」
「ええ!? それじゃぁ、全部の時計を調整することはできないんですか?」
「いいや、時計はすべて自動で調節できるよ。ただ・・・」
「なんだ、完成したんじゃないですか。じゃぁ、もらっていきますね。」
機械の完成を待ちきれなかった主人は、エヌ博士の話が途中なのを構わずに、機械を持ち帰ってしまった。

急いで店に戻り、機械の電源を入れ説明書を広げる。
「なになに・・・コンセントにつなげてから、本体のダイヤルを調整したい時刻に設定し、
赤いボタンを押してください・・・なるほどなるほど。」
さっそく、ダイヤルを現在時刻の12時に設定し、わくわくしながら赤いボタンを「えいっ」と押した。

そして、全世界の時計が12時に調整された。

53: 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:28:24 ID:/AN6pzXo
乙 短くていいと思う

92: 創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:53:18 ID:DQOORTje

運が良くなる薬

エル博士が長年の研究の結果、新たな薬を開発した。
被験者となる青年を前に、博士は薬の効能を説明していく。
「この薬を飲めば、君の運はぐんとよくなる。これで今までのツキのない人生とはおさらばじゃ」
「博士、それは本当なのですか? 本当に私の運がよくなるんですね」
「もちろんじゃ。君の境遇はよく知っている。だからこそ君を被験者に選んだのだ」

人は運を使うたびにその運を失っていく。失っていくのなら増やす事だってできるはずだ。
そう考えたエル博士の長年の努力が実を結んだのだ。この薬を飲めば人間の運を増やすことができる。
この薬を試す上で一番問題となるのは、その効果そのものである。

なにしろ運を左右する薬なので、仮に普通の人間に投与して運がよくなったとしても、
それが本当に薬の効果なのか、「たまたま」運がよかったのかが区別できないのだ。
エル博士もこの問題に対して相当悩んでいた。しかしある日この青年に出会い、その問題もすぐに解決した。

この青年には運がまったくないのだ。そのことは事前の検査で明らかになっている。
すでに運を使い果たしているのだ。
具体的に言えば買った宝くじはみな外れ、
試験で適当に選んだ選択肢は全部不正解、じゃんけんですら負け続きなのだ。
この青年の運がよくなったのならば、薬がきちんと作用することが明らかになるのだ。

博士は薬の入ったビンを青年に差出した。
「さて、早速薬を飲んでくれたまえ。そのあと運を使う実験をいくつかやろう
「はい。では飲みます」
そういって青年はビンの中の薬を飲み干す。

薬だけあって苦味があったが、何かが体に満ちてくるような感じもした。
「博士、なんだか運がよくなったような気がします」
「そうかそうか。では早速実験じゃ」

そして二人はいくつかの実験を行ったが、なぜか結果が出ない。
やはり宝くじは当たらず、適当に選んだ選択肢は不正解で、じゃんけんも負け続けなのだ。
「たまたま」運が悪かったのではないかと考えて、何度も実験を行ったが、それでも一向にいい結果が出ない。

「これはおかしい。作り方を誤ったのだろうか。それともこの薬は効き目がないのだろうか」
博士はいったん青年を帰した後、この薬に関する資料を調べることにした。

調べていくうちに恐ろしいことが分かった。
この薬には人間の運を増加させる作用がある。これは間違いなく本当のことである。
しかし、同時にこの薬は猛毒でもあった。
この薬を飲んだ人間はほとんどの場合すぐに死んでしまうのだ。
そう、「よほどの運の持ち主でもない限り」必ず。

93: 創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 00:01:06 ID:O/S3En/g
>>92
そんな危ないもの人に飲ませるなwww

面白かったぜ、乙

95: 創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 00:10:51 ID:/EOCs+jF
増えた運を猛毒回避で使い果たしたと言うことでしょ。
>>92 乙 面白かった。

131: 125:2008/12/06(土) 14:57:46 ID:iL6tXWYS

『老化と幼児化』

エス博士は脳医学の研究をしていた。テーマは『老化と幼児化』
これは、老化による痴呆症は幼児化であり、
誕生→発達→衰退、の流れで子供に戻っていくのが人生であるなら、
折り返し点というピークがあり、その時点がわかれば寿命も予測できる、というものであった。

しかし、博士の研究は医学の進歩により無意味になってしまった。
臓器の機械化により脳さえ活性化することができるようになり、
人は望まなければ死なない体を手に入れたのだ。

博士は身体の機械化を拒否していた。時間が限られないということは、
人間らしさがなくなることだ、という考えからである。
そして博士にも痴呆が進んでいた。

忘れていた母の声が聞こえた。「元気に生まれてくるんでちゅよ~」
博士は暖かさに包まれ幸せだった。

132: 創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:41:50 ID:5DigQPw6
>>131
これはいい!

133: 創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:56:51 ID:J7FwE8LJ
>>131
これ好きだ

141: 創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 18:42:28 ID:8+9YA+TN

タイムマシン

ケイ博士は研究の末にタイムマシンを完成させた。
ケイ博士は学者としては優秀であったが、経済的には恵まれていなかった。
タイムマシンの研究も金銭的な困難に直面することが多々あったが、
そのたびに何処からともなくお金が入ってきて、それで開発を続けることができた。
ケイ博士のタイムマシンはそうした苦労の上に完成したのだった。

「さて、早速実験したいところだが、その前に部品代を支払っておかねばならぬ」
ケイ博士はいくつかの重要な部品を買うために借金をしており、
「借金を返すまでタイムマシンを使わない」という約束をさせられていたのだ。

とはいえ手元に借金を返せるだけの金はなく、
困ったケイ博士はいつものように金が現れてないかと探し始めた。
すぐに通帳に心当たりのない入金がされているのに気づき、
早速銀行に振り込んで借金の返済を終わらせた。

これでいつでも使えると安心したケイ博士は、行き先を決めるヒントにならないかとテレビを見ることにした。

テレビではたまたまニュースをやっていて、先日行われた競馬で大穴の馬が勝利した事を伝えていた。
「そうか、過去に戻ってこの馬に賭ければ大儲けできるぞ」
ひらめいたケイ博士は早速このレースが行われる日に戻って、
手持ちのお金をすべて大穴とされているこの馬につぎ込んだ。

そしてレース本番。未来で見たとおりの展開で
ケイ博士が賭けた馬は見事勝利を収め、ケイ博士は大金を得ることになった。
さすがに大金を札束のまま持ち帰るのははばかられたので、
ひとまず銀行に預けて、ケイ博士は元の時間にに帰ることにした。

帰ってきたケイ博士はさっきの出来事が夢でなかったか確かめるために通帳を調べた。
確かに通帳には先ほどの稼ぎが入金されていた。
しかし、その金はすでに使われていたのだ。ほかならぬケイ博士の手によって。

143: 創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 18:49:22 ID:PgWgbUc7
いいねぇ
まさに星新一って感じがするぜ

161: 創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 22:10:12 ID:6VLsBxCG

『理想郷』

宇宙船が逆噴射をしながら、大地に降り立った。
銀色の宇宙船からタラップが伸び、男が二人出てきた。

「この星は我々の居住に適しているのだろうか」
「どれ、調べてみようじゃないか」

男たちは幾つかの計器を宇宙船から持ち出し、何やら計測をし始めた。

「どれどれ、酸素濃度、二酸化酸素濃度ともに完ぺきだ。有害な物質もなさそうだ。そっちは如何だい」
「放射能の影響もなさそうだ。気圧も良好。マスクを外しても大丈夫だぞ。」
「ぷはぁー、なんとも爽やかな空気じゃないか。まるで理想郷だ。」
「おっ、向こうに遺跡のようなものがあるぞ!行ってみよう。」

「こりゃたまげた!高度な文明がこの星にはあったのだ!」
「もしかしてまだこの星には知的生命体がいるんじゃないのか?この環境の素晴らしさだぞ。」

「おーい、でてこーい」

チル星人の呼び声は、人間が最早住めなくなった地球の荒野に響き渡った。

164: 創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 23:20:46 ID:t3Hs22e1
>>161
おお、こいつは巧い。
「星新一の作品です」と言われても、違和感なく信じるかもしれん。

少なくとも俺が今まで読んだ中には、こういう話はなかったと思う。

166: ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2008/12/09(火) 15:26:04 ID:G1aj4OwH

【神様発売】

エフ氏は仕事で疲れきった重い足取りでコンビニの前に立っていた。
ドアを押して店内に入ると、さっそくいつもの場所に向かう。
エフ氏の毎日の楽しみは、その日発売の雑誌の立ち読み。
ラックから1冊の雑誌を手に取り、楽しそうにパラパラとチェックをはじめた。

…と…ある記事が目に止まった。
「んん!!か・み・さ・ま・はつばい??」
そこには、『あなただけの神様発売!』とあった。
値段を見ると思っていた程の高価な数字では無かった。
何より、面白そうだったので、エフ氏は、さっそくアパートへ帰り、ネットで注文。

無料お急ぎ便で次ぎの日には届いた神様をさっそく箱から取り出す。
取り扱い説明書の表紙には印象の残る字体でこう記されていた。
『この神様は既存の宗教で存在し、崇拝されているような種類の神様とは、
まったく異なり、関係は有りません』
「ふーん。まあいいや。要するに、どの団体にも属さないフリーの神様ってコトね!!」
で、さっそく真空パックされた袋を切ると、中からは白い気体で形創られた人型の神様が微笑んで現れた。

29歳、独身、毎日のバイト生活、ワンルームのアパート暮らし、彼女はいないし、
友達もどちらかといえば少ない方のエフ氏にとってこの神様は、
良い話し相手であり、相談相手にもなってくれた。
「神様!あんた!意外といいヤツじゃんか!!」
「エフ君!キミもなかなか素直で見込みアル人間だよ!」って気さくな感じ…

       1ヵ月後…

神様の登場でエフ氏の生活は少しづつ変わってきた。
これまで休みの日はゴロンと部屋で寝てばかり過ごしていたが外へ買い物に出かけ、新しい服を買ったり、
散髪も半年に1回だったのが月イチにへと変わり…と、神様のアドバイスを聞き、変化してきた。
何も無く、殺風景だったエフ氏の部屋も目新しい家電にあふれていた。

今日も(大手ネット検索会社連動の)神様が気さくな口調で言った。
『これからの社会人にとって何より大切なのは心地よい睡眠だよね』

       2日後…

給料1年分位の高価な布団セットがどーんと狭いワンルームに敷かれていた。

167: 創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 20:52:01 ID:DqtHl13M
>>166
台詞回しは星っぽくないけど、展開やオチはまんま星だww
すげえww

182: 草:2008/12/17(水) 23:44:38 ID:pnaePiWJ

「穴」

とある国の、とある町。
子どもたちの間で落とし穴づくりが流行していた。
はじめは砂場や空き地に穴を掘って子どもどうし落とし合うことで済んでいたのだが
だんだん遊びはエスカレートし、一般道にまで落とし穴が出現し始める。
被害にあって腹を立てた大人たちは、落とし穴作りを禁止してしまった。

しかし、落とし穴はなくならなかった。埋め戻しても、翌朝にはまた落ちる人が出るのである。
大人は子どもたちを問いただしたが、皆一様に自分の仕業ではないと否定した。
それでも落とし穴の出現は止まらず、やがて、舗装道路にまで本格的な落とし穴が出現しはじめた。

人々の外出には、地面を叩いて安全を確認するための杖が必需品となったが、
細心の注意を払っても穴に落ちる人はあとをたたず、足首捻挫や骨折までする住人が続出する事態に。

町では有志による自警団が設立され、夜間パトロールが始まった。しかし犯人は捕まらない。
もう埋め戻しは間に合わず、町は穴だらけになっていた。
人々は外出もままならなくなったが、家の中にいても安全なわけではなかったのである。

ある日、突然轟音とともに住宅が消えた。
家の消えたあとには底の見えない巨大な穴がぽっかりと口を空けていた。

今となってはもう誰も、これが人間の仕業だとは思っていなかった。
巨大な穴ができたと思うと、翌日には何事もなかったかのような地面が現れる。
けれどそこは、一歩足をのせた途端に全てを飲み込む落とし穴なのである。
うかつに避難することもできず、人々は次々落とし穴の餌食になっていった。
町ひとつにとどまらず、やがてその現象は世界に広がった。
人々はただまんじりともできずに、自分の足元が落ち込むその時を待つしかなかった。

そしてその日が来た。ボコリ、という音を聞いた者がいたのかどうか。
もし宇宙から「それ」見ている者がいたならば、
その星が一瞬「真っ黒い穴に落ち込む」のを見たことだろう。
音のない宇宙の一隅に真っ黒な穴が空いた。しかしそれは一瞬だった。
次の瞬間には、何事もなかったかのように元通りの星があった。

しかし、その星にはけして踏み込んではいけない。
それは、落ちてくれるものを待ち焦がれている巨大な、巨大な落とし穴なのだ。

うつろな闇を抱えて、その星は今も虚空に浮かんでいる。 (おわり)
・・・・・・・
何年か前、よそに落としたものですが、ここ読んでたら参加したくなってちょっと直し

183: 創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:52:40 ID:hK4X06so
独特の不安感が。
これはうまい。

185: 創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 00:40:42 ID:v+MOG4ou
これは怖い

194: not星 ◆tHwkIlYXTE :2008/12/29(月) 19:59:07 ID:bT16NCmD
星とか関係ないな
「アンタ、鈍感すぎ」

俗に言う出来ちゃった結婚と出産を済ませた直後に単身赴任になった僕を、
君は何年経っても罵り最後に決まってこう言う。

確かに僕は鈍感だったに違いない。
悪い結婚を見抜けずに深みにはまっているのだから。

でも君は鈍い男が好みなんだろう。
四十歳近いのに恐ろしくサバを読み、絵文字をびっしり使ってさ。
その相手もさぞかし「鈍感」なんだろうな。
可笑しくなってくるよ。

でも僕は君のような女性はタイプではない。
能動的に食事をし、満腹になったら横になる。
ほったらかしの庭に手付かずのガーデニング用品を見た時は本当に苛立ったよ。

愛していた頃の君が懐かしいよ。
とてもとても。
君も愛していないんだろう、きっと。
もう終わりにしないか。

似たもの夫婦とはよく言ったものだ。
僕と君は似ているらしい、皮肉にも。

僕も君も鈍感なんだよ。
僕が横に立っているのに気付かないのが何よりの証拠だよ。

でも、なにより君が一番気付くべきだったのは、僕がスコップを新調して土を買い足した事。

さあ、終わりにしよう。

204: 創る名無しに見る名無し:2009/01/02(金) 12:17:07 ID:pCDPObw5
>>194
最後でぞっとするね
好きだ

288: 創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 11:49:45 ID:8kB2JcgN
星では無いんだが
>>194が好きだ

195: 創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 20:25:19 ID:BJKAMj6v
これはいいホラー。

219: 総意:2009/01/31(土) 19:35:14 ID:NFiF2Pji

総意

あまりの人類の数の多さに、ある日、人類以外の動植物の意志が合意に至った。
魚も鳥もペンギンもアホウドリも、テレパシーで心を交わし、
人類を合理的計画的に減らしていこうということになった。
生物たちは増え過ぎた人間にうんざりしていた。

まずは人間を大幅に減らすことになった。
尖兵となったウイルスは、人間社会を良くするような有能で善良な人間から襲っていった。
ばたばたと「よい人」が死んでいった。

次々とよい人が天に召されるのを世界中の人間が嘆く間もなく、医師や、才能に溢れる子供、
他人のために働く人間、活動的で意欲に溢れる者、借金の多い働き者などが死んでいった。

残ったのは宿無し、無法者、殺人者、人に寄生して生きるもの、社会的弱者などであった。
一人では生きることの出来ないものは死に、また嘆きの余り自死し、殺し合い、
地球はより「きれい」になった。

そこで生き物のうちの、まだ多数を占めていた犬猫やカラスや鳩、
鼠や人間に寄生する生物からの運動が起こった。
「このまま人間が死に絶えてしまうと困ってしまう。ぜひ少数の人間には生き残ってもらわねばならない」

ウイルスや寄生虫も小さな声でこれに同意し、ペットたちが付け加えた。
「この決定を人間が知らないのは不公平ではないのか?」
皆が「それもそうだ」と思ったが、人間たちとテレパシーの疎通を計ることは出来ない。
 総意を伝えるのはペットたちではなく、害虫達に任され、
言い渡すのはまず最後まで生き残りそうな者ということになった。

その晩、地球上の多くの場所でこういうことが起こった。
ある宿無しの前に得体の知れない何かが現れた。
そしてこれまで人間が減ってきたことを述べ、最後に
「おまえは人間の中で生き残ることを許された」
と言い残し闇に消え去った。

「生存」を許された者にはやる気の無い、頑健でずるがしこい者たちや、頭のにぶい者も居た。
大抵の者は害虫の合体を神か啓示だと考え、生きる気力を取り戻し正直で勤勉になっていった。
そして進んで人助けをするようになった。

生物どうしの意見は混乱し二度とまとまることは無かった。
徐々に人類はまた地を覆うように繁栄の道を歩んでいった。

220: 創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 13:06:49 ID:nxYeRt6k
>>219
ループかw

222: 創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:21:30 ID:YMZE0g53
>>219
人類害虫論なSFは多々あれど、これは星っぽくすっきりしてて爽快ですた。
そうかゴキブリの働きで天啓を認めて世界平和なのか(違

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223: 創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:35:28 ID:6G2vqrRE

『子供の国』

わたしはスー、4才。ここは〈子供の国〉。お菓子だっておもちゃだって何でもあるの。
広い中庭でお友達と駆けっこもできるの。
国のお外のことは知らないわ。バイ菌がいっぱいで怖いんだって、ロボットのジェイが言ってたわ。

ここには私より大きな子はいないの。
〈学校〉ってところに行って、大人になるために〈勉強〉するんだって。
ずっと遊んでいたいのにね。でもまた皆と一緒だもん。きっと〈学校〉も楽しいはずよ。
ふわぁ眠くなってきた…今日も楽しかったわ。おやすみなさい…

「寝たか?」「ああ麻酔ガスがよく効いてるよ」「よし運び出すぞ」
子供の国に隣接した建物では、毎夜出荷作業に追われていた。
「これは等級A5だな。高く売れそうだ。」
ここは、人間牧場『子供の国』

224: 創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 20:30:09 ID:FLq544hG
>>223
ありがちだが、悲しい話だな

228: 創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 14:35:53 ID:75zzzUmJ
>>223
なんか悲しい話だけど気に入った

230: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/08(日) 14:21:37 ID:ZeLxNcFl
こんなスレあったのか…
即興で参加してみる。

呪い

まず、密閉された器を用意する。これは大きい方が良いが壊れやすいものでは意味が無い。
続いて多種多様な生物をそこに入れる。毒を持つ物を入れるのが一般的だが、毒の有無より種類が重要だ。

器に生き物を詰めて外に出られないようして、長時間放置すると中で熾烈な共食いがはじまる。
この中で最後に残った一匹は非常に強い生命力を持っていて、
これが呪いの媒介としても強力な効果を発揮…

「俺が聞きたいのは生命の起源だ!東洋の呪いじゃないっ!」
M氏は怒鳴り声を上げ、本を机に叩きつけた。
M氏を知る者がこの場に居たなら、普段思慮深い彼がこの様に声を荒くするのは珍しい、と驚くだろう。

「わかってるさ、だから56億年前の願い事について
丁寧に一から説明してやってるじゃないか。最後の一人よ。」
そう言って悪魔はニヤリと笑った。

231: 創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 15:56:45 ID:pLIfdgWU
これはいい。即興ゆえか、キレの良い作品に感じた

232: 創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 16:00:35 ID:6IN1pR7y
うん、オチも上手いな

236: 創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 22:20:20 ID:XoNkETVy
地球がひとつの蟲毒の壷…というわけか
そりゃ中で熾烈な共食いが起こってるもんなー

241: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/09(月) 23:58:48 ID:vlkfL5JA

星と美女

M氏は伝承研究を生業としていた。
今、草木をわけながら主道から外れた山道を歩いているのも
この地方の人が聖地と崇めている池が山中にあると聞いたからだった。

落ち葉をずしりと踏み締めると、朝の澄んだ空気に土の香りが溶け出す。
澄んだ空に染みるような朝の光が朝露を輝かせる。
小鳥はあちこちで愉快そうにさえずっていた。
M氏は周囲の自然のあまりの美しさに、
いっそ仕事の事は忘れようかと考えつつ、聖地と囁かれるのも無理は無いとも思った。

そんなM氏の耳が微かな違和感を感じ取った。
空から何か聞こえてくる、と思った瞬間、違和感は騒音に変わり、騒音は衝撃に転じた。
M氏の体は凄まじい風と振動に吹き飛ばされた。

M氏が気がついたのは、日がすっかり上がりきってからだった。
彼は周囲を見渡し、木々の倒れ方や、衝撃の起き方から、どうやら隕石が落ちたらしいと推測した。
倒木を辿って少し歩くと視界が開け、大きなクレーターが前方に見えた。
直径数十メートルはあるだろうか。

もう少し速いペースで進んでいたら、隕石はM氏を直撃していただろう。
ぞっとしながらM氏が目をやると、クレーターの真ん中の
まだ蒸気をあげている隕石の脇に誰か立っている。

隕石に興味を持ってやって来た地元民だろうか、M氏は大きな声で呼びかけた。
その人物は、こちらに気がつき振り向いたが驚いたことにそれは女性で、しかも絶世の美女だった。
彼女は静かであるが軽やか且つ速やかな足取りで、
その美しさに目を奪われているM氏の目前までやってきて、微笑みながらその口を開いた。

美女「あなたが落としたのは金の隕石ですか?銀の隕石ですか?」
M氏「いや、どちらも落としていない。」
美女「あなたは正直者ですね。」
M氏の体は再度、衝撃に舞った。

244: 源泉徴収票 ◆IM.RhdmmmE :2009/02/10(火) 08:16:15 ID:PDQE7dvR
>>241
黙って出されたらわからないかもしれない。

246: 創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 18:47:03 ID:4uWqEmPr
>>241
これ好きだ

247: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/10(火) 20:19:54 ID:8vWKn7eL

反旗

それは突然の独立宣言だった。
『もう我々は十分に虐げられた!搾取され、差別され、隔離された!
人種を超え、性別を超え、弱者たる我らが団結し、声あげる時が今こそきた!』
この宣言は多くの国民にとって寝耳に水だった。

M氏が加害者と糾弾した大半の国民は、
自分達の行為が差別や虐待にあたるとは全く思っていなかったのである。
『過去の歴史を振り返るがいい!人種差別、文化差別、性差別、
それらは安易な理論を土台にした磔台に過ぎなかった。
その眼を開けて見ろ。この習慣差別を!』

さらに国民を驚嘆させたのは、M氏の宣言への賛同者は意外に多く、
また高い地位の人物にも賛同者が多数いたことである。
『私は過疎化の進んだX島を買い取った。此処が弱者の為の新生の故郷となる!
今高らかに宣言する!喫煙者による喫煙者の喫煙者の為の国を打ち建てることを!』

独立宣言は大きな波紋を呼んだが、侃々諤々の議論の末に独立行政区としてX島は認定され、
それに対してM氏も「無用な争いは望むところではない。」として海外との直接取引、
領土の拡大、“国外”の禁煙区域での喫煙など数項目を承諾した。
ここに喫煙者独立紫煙法が制定されたのである。

「やあ、久しぶり。君の手腕には感動したよ。」
「いいえ、コロンブスの卵を立てただけですよ。」
「喫煙者の隔離と搾取。両方やってしまう方法があるとはね。」
「過疎化の改善も加えて下さい。実験的ですが。」
「M君どうだい?キューバ産の葉巻だ、ここでは希少なんだろう?」
「いえ、私は煙草は吸わないんですよ。」

248: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/10(火) 20:25:01 ID:8vWKn7eL
指摘される前に言っておくと、筒井康隆の短編をパクリました。
m(_ _)m

見たのは世にも奇妙な物語だけど。

249: 創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 21:05:32 ID:IMY4aB9w
いいね
ショートショートとしてのクオリティが高いのはもちろんだけど、
星っぽさが上がってきてる気がする

252: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/12(木) 00:10:31 ID:VcSF9G3e

空高く

ふーっ、と野原の真ん中で大きなため息をついているのは、赤鼻のピエロ“だった”M氏だ。
脇には布に包まれた大きな塊が幾つかおいてある。
それは、数日前までサーカス“だった”ものである。

発端は、サーカスの花形の空中ブランコ乗りがFサーカスに引き抜かれたことによる。
その後、ある者は実家を継ぎに故郷へ帰り、ある者は結婚し、
ある朝M氏が目覚めると座長も妻と娘を連れて夜逃げしていた。

何のことは無い、沈没船から一人逃げ遅れたネズミみたいなものだ、と彼は独り言を言った。
風船用のボンベが彼の目に止まった。サーカスが盛況だった頃は、
M氏はこれで次々と色んな形の風船を作って喜ばれたものだった。

M氏がサーカスに入りたてでピエロの芸もなにもできない時も、
このボンベで膨らませた風船を子供に配って楽しませた。
このボンベで作った多くの風船が彼を支えてくれた。だが、
肝心のサーカスの方が風船のように呆気なく割れて消えてしまった。

M氏の目元の緑の化粧が、ポタリと流れ落ちた。
「もう疲れた。これで終わりにしよう。」
M氏は首に紐を巻きつけた。

その時の経験を思い出すと今でも涙が出そうになる、
と言いながら横を向くとインタビューをしていた女子アナが神妙な顔をしていた。
慌てて、「でも、今では皆さんが僕を見に来てくれるから、とってもハッピーです!」と笑顔で言い繕う。

そう、ピエロは常に笑顔で無くてはいけない。
女子アナの顔に笑顔が戻り、締めのセリフが発せられる。
「人間なせばなるって事ですね。ハシゴ車の上から、
世界一首の長いピエロのMさんへのインタビューでした!」
アナウンサーの横で笑顔を振り撒くM氏の首を無数の明るい色の風船が支えていた。

253: 創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 00:13:45 ID:mkyS7yMb
なるほど
これはオチが全くわからなかったぜ

255: 創る名無しに見る名無し:2009/02/12(木) 14:54:35 ID:SLNJjzrf
あんた面白いねぇ

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264: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/13(金) 22:42:32 ID:hoi9TXSN

不幸を呼ぶ男

俺は三つ目の勤め先を、わずか3ヶ月で退職することとなった。
俺が大きなミスしたわけでは無い。人事担当は昨今の不況の影響が、
とか言っていたがそんなことに本当の理由は無いのは俺も察している。

先々月、出社途中の俺の目の前で車が炎上する交通事故が起こった。
先月は、昼休みに目の前でお局が不倫の果てのダイブを果たした。
前の勤め先からも不穏な噂が聞こえてきて、人事も動かざるを得なくなったのだろう。

俺は不幸を呼ぶのである。

学生の頃は大したことは無かった、俺の周囲でよく人が転んだり、物が壊れたりする程度だった。
その不幸がその場で俺に影響することは無かったが、必ず俺は“それ”を目撃した。
問題は、成人してから段々不幸が激しさを増してきたことだ。二十代半ばを過ぎてからは、
1ヶ月に一度は“人死に”を目撃するようになってきた。最近は殺人が増えてきてる気さえする。
いっそ完全にノータッチを決め込められれば楽なのだが、必ず目撃するので、
それがばれると事情聴取やら、裁判の証人やらで仕事も手につかない。

何はともあれ、次の仕事を捜さないことには俺が“人死に”してしまう。
見るのは段々慣れてきたが、体験するのはまっぴらだ。
しかし、いくら仕事を探しても、不特定の不幸を呼びよせる男に就職先などあるはずもない。
俺は段々自暴自棄になっていた。

「いっそ、手を翳したら相手が死ぬとかなら、まだ殺し屋にでもなれるのに…………そうか!」

一年後、俺はすっかり手慣れた風に仕事をしていた。
「犯人はあなただ!Aさん!自分の心は誤魔化せても、この名探偵Mの目は誤魔化せない!」

未だに自分で言ってて吹き出しそうになる。
それはそうだ、なんせ俺は必ず“それ”を目撃するんだから。

266: 創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 23:16:22 ID:6FwIfjO1
なんという転職wwww

金田一やコナンはこういうやつだったわけね

268: 創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 23:34:07 ID:4JwtPhUe
面白い、星というよりは筒井の短編にありそう

280: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/15(日) 10:58:09 ID:yVAvEIqr

間違い

半紙が机の上に広げられる。漆塗りの気品ある筆が漆黒の軌道を広げていく。
半紙には丁寧に“思想”と結ばれた。

「よく聞け。お前の普段の生活にはこれが無いんだ。
『思い、なお想う。』だらだらと生活してるから、家事でもミスをする。
お前と結婚して10年、もう直っても良いんじゃないか。」
半紙を手に取り、男は机を挟んで向かい合う妻に話し始めた。

男は三十代後半だろうか、その身だしなみから几帳面な性格が見て取れる。
「些細な事が大事なんだ。お前がそんな風だとカズキにも良くない。いいか…」
突然、気だるそうに話を聞いていた妻が、机を叩いて立ち上がった。

「なによ!あなたはあの子の教育に口出しするほどの事はなぁんもして無いじゃない!」
彼女は身を大きく乗り出し、相手の持つ“思想”の文字を奪い取り二つに引き裂いた。
「思想?なに言ってるの?私がもう持ちあわせて無いのはこれよ!」

彼女は手元のチラシの裏にマジックで“愛想”と書きなぐった。
「あんたの愚痴にはいい加減愛想が尽きたわ。今後10年、自分の皿は独りで洗いなさいよ!」
「なんだその言いぐさは!」
夫も負けじと“愛想”の二文字を引き裂いた。

「ただいまー!」
敵意に満ちた視線が交錯する中、沈黙を破ったのは帰宅した息子のカズキだった。
部屋に入って、不穏な空気に気づいたのだろう黙って二人の間に座る。

子供を挟んで喧嘩する訳にもいかない。
夫は新聞を大仰に広げ、妻は台所で水仕事を始めた。

夫は思った、
『どこで間違えたんだ。互いの足りない部分を補っていたはずの歯車が、すっかりずれてる。』
妻は考えた、
『カズキは私が引き取って、実家にしばらく世話になろう。それから…』

「遊びに言ってくるね。」
しばらく机の上で手慰みの様なことをしていたが、
二人の背中に耐えきれなくなったのだろう、カズキは外へ飛び出していった。

「車に気をつけて」「遅くなるなよ」短い言葉と視線で息子を送り出し、再び背を向けあう二人。
ふと、目の端が何かをとらえた。机の上に顔を向けると引き裂いた紙が机の上に一列に並べてある。カズキの手慰みだろう。

 想  思  想  愛

思わず小さく笑ってしまった。
相手を見ると、同じように苦笑している。

「本当は想の字が違うんだが。」
「あの子、知識はあってもそそっかしいから。」
もう一度、二人はクスリと笑いあった。
春の近づきつつあるある日の出来事である。

286: 創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 15:32:53 ID:gX6ZEKOr
>>280
いいねぇ
星というより向田邦子っぽい感じがしないでもない

281: 創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 11:05:40 ID:6QQaVIiS
これはなんていい話!
よく思いついたなー
俺は今までの中でこれが一番好きだな

287: 創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 21:52:09 ID:hngZJ09Q
読むとほんわかするね。この話好きだ。

316: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/18(水) 22:16:34 ID:xcx8FmqD

いかさま

Mの手に汗がにじむ。
まさに“天運”とはこのような事を言うのだろう。
大逆転への道が、Mにははっきりと見えていた。

赤、黄、茶色、色とりどりの球の中に一際輝く的玉。
今回のワンオンルールでは、Mがそれに持ち玉を当てた瞬間、彼の逆転勝ちが決定する。
Mは、まだ余裕の笑みを見せる対戦相手のKを無視して、ボールの動きをゆっくりとシミュレートする。

「いける。」

確信を持って小さく呟いた。
インパクトは持ち玉の真芯を捉えた。
赤銅色の持ち玉は、球と球の間隙を縫うようにして青い的玉へと一直線に突き進んだ。
最早、この勝利を遮るものは何も無い、とMが確信した瞬間、
的玉から飛び出した何かが赤銅色の軌道を曲げた。

「いかさまだ!」
Mは思わず声を上げて審判に顔を向けた。
だが、主審も副審も首を横に振り、Mの抗議を認めようとはしなかった。

~所変わって~
ニュースキャスター「各国の英知の粋を極めた対赤色彗星ミサイルは、
見事に彗星の軌道を変えることに成功しました!
地球の危機は去ったのです!
まさに、今この時の為に我ら人類が神によって地球にもたらされたと言っても過言ではないでしょう!」

317: (‘∀`)ウボァ ◆JGdfIM4Fic :2009/02/18(水) 22:36:07 ID:+tee8lgD
乙!
発想がすげえ(´∀` )

320: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/19(木) 21:47:01 ID:HLEiIVlg
>>317-
ありがとうございます。
また、何か考えよう。

( ゚∀゚)

最後の落ちにニュースキャスター持ってくるパターンは使いやすいけどちょっと控えます。

318: 創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 01:25:57 ID:UB4EKdLj
これは凄くいいな!!
オチに気がついたときはっとさせられたし

321: 創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 02:04:34 ID:XLZw2Iu2

飽きっぽい人

エフ氏は飽きっぽい人だった。
どのくらい飽きっぽいのかと言うと、
例えば新しい服を買ったと思ったら一回袖を通しただけで捨ててしまう。

もちろん日記は幼い頃から三日坊主だし、
彼の棚や押入れには読みかけの本ややりかけのパズルが沢山詰まっていた。
万事そんな具合だったから、エフ氏は定職に就かずにふらふらしていた。
というよりも仕事にすぐ飽きてしまうのだ。
もしかすると、彼にとっては服を捨てるのも仕事を辞めるのもほとんど同じ事だったのかもしれない。

エフ氏は長いこと色々な仕事に就いては辞め、就いては辞めを繰り返した。
サラリーマンも経験したし、公務員にもなった。
板前を目指して修業したり、大道芸人として食うや食わずの日を送ったこともある。
また時には危ない仕事にも就き、その金で自分の店を開いたこともあった。
しかしそのいずれも長続きすることはなく、エフ氏は次第に年をとっていった。

ある日、電気関係の仕事をしていた時だった。エフ氏は発作を起こして倒れてしまった。
集まった遺族に向かって彼はこう告げた。
「わしは、一度でいいから有名になってみたかった。
しかし、この飽きっぽい性格のため、何かをやり遂げることなどできなかった。
それだけが、どうにも無念じゃ…」
そう言い残してエフ氏は事切れた。

エフ氏が死んだ翌年。世界の様々な記録を記した本が出版された。
本は面白いと世界中で評判になり、空前のベストセラーになった。
その中には「世界一多くの仕事をした人」として、エフ氏の名前が大きく書かれている。

325: 創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 03:16:32 ID:uxxxpHoy
>>321
おお、いいね。特に導入のワンブロックが好きだ。

中学時代「三日坊主は一月で10個の物事にチャレンジできる人」
と言ってた先生を思い出したよ。
まぁ実際の飽き症はそんな大層なもんじゃないと思うがw
エフ氏はマジですごいと思う。
こういう生き方は何でもこなせる能力がないとできないよな。

323: 創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 02:22:14 ID:02IXS9eN
これはよくまとまってるな

327: 創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 10:45:51 ID:JereSOdY
このスレはこの発想はなかったわというのがすごく多くて楽しい

336: 創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 12:07:26 ID:BuxG0+4a

お迎え

午後二時。
幼稚園のプール教室に通う娘を迎えにいく時間となった。
気が進まないが、生活パターンを変えて、近所から無用な関心を
引いてしまうようなことはしたくなかった。

家を出ると、お盆休みの時期のためか、街中に普段の喧騒さはなかった。
太陽の日差しが、やけにまぶしく感じられた。

幼稚園に着くと、娘の担任が職員室の窓越しに声をかけてくれた。
窓辺の風鈴が涼しげな音を立てていた。
「あら?メグちゃんのお母様…残念でしたわね、すれ違いになってしまいましたね」
「すれ違い?ですか?娘は一人で帰ってないはずですが…」

先生は一瞬困ったような顔をしたが、職員室から出てきて説明してくれた。
「もちろん、園の規則では、園児一人での帰宅を禁止していますが、たった今、
メグちゃんのお父様が、お迎えに来てくださったんですよ」
先生の一言に、私は戸惑いを隠せなかった。

一瞬、強い風が吹き抜け、風鈴の音が激しく鳴り響いた。
「主人…主人は…外国に出張中で…迎えに来られないのですが…」
先生は、とっておきの知識を披露するのがおもしろくてたまらないという口調で、
「メグちゃんのお父様もお人が悪いですね。お戻りになったことをお母様にも内緒にされていたとは」

そんなはずはない! 旦那が娘を迎えに来られるわけがないのだ。
一ヶ月前、ちょっとした口論がきっかけで、カッとなって旦那を刺し殺してしまい、
バラバラにした死体を袋詰めにして、山に埋めてしまったのだ…

いつの間にか風は止んでいて、風鈴の音はとぎれていた。
園庭は、真夏の日差しを受けて白く乾ききって、死んだように静まり返っていた。
ただ、どこからか耳鳴りに似たセミの鳴き声が聞こえてきた…

呆然と立ちすくむ私に、先生はほほ笑みながら、こう付け加えた。
「突然のことだったので、メグちゃんもびっくりしていましたけど、
とても喜んでいましたわ…お父様もメグちゃんに会うのは、一ヶ月ぶりとのことで、
本当にうれしそうでした…『メグ、迎えに来たよ、お父さんと一緒に帰ろう』って、
仲良く手を繋いでお帰りになりましたわ」

337: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/02/21(土) 19:13:19 ID:Va5LEeWy
>>336
乙!
落ちの意外性だけでなく、物悲しい雰囲気が良い

341: 創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 03:03:32 ID:STDZQ725
>>336
ゴクリ……
なんかアウターゾーンを思い出した

353: 創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 01:05:22 ID:F3C61c4M

理想の身体

「ついに出来た!」
K氏は思わず声を上げた。
彼は産まれてこの方、ただの一度も
女性と付き合った事が無かった。

特別に醜い訳ではないが特徴のない顔立ちと
生来の臆病さが原因である。
彼はそんな自分を変えるべく、ある薬の研究に着手していた。

自分の考えた姿になれる薬。
それが今、完成したのである。
K氏は逸る気持ちを抑えながら薬を手に取る。

偶然完成した薬に替えは無く、チャンスは一度きりである。
研究の気晴らしに付けていたテレビではちょうど綺麗な女性が映っている。
「あぁ、私も早くあんな女性と付き合える身体に生まれ変わりたい」
K氏は一気に薬を飲み干した。

後日、芸能界に突如として現れた女性が、
世の女性の羨望を浴びる事になった。

354: 創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 01:07:11 ID:RwP0/JBZ
うん、オチは読めても良作w
短いって正義

358: 353:2009/02/24(火) 20:15:26 ID:F3C61c4M
分かり難いかもしれないですが、
K氏が作ったのは「考えた姿」に成れる薬です。
飲む直前に女性の事を考えてしまった為、
女性に成ってしまったという事です。

なかなかに難しいですね。

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375: XXX ◆TqnDIIRxZU :2009/03/01(日) 09:20:41 ID:dVS4yZLt

名産品

場所は王宮議事堂。
ここ数週間、国王、大臣、補佐官らは長い長い議論を交わしていたが、一向に答えは出そうに無かった。
議題はこの世界恐慌を凌ぐ金策の方法である。

この国は、王家の所有する国有地を民衆に農地や牧場として貸し与え、
野菜や穀物を輸出して経済を成してきた平和な国だった。
ところが、先進国が“食の安全”とやらに気を使いはじめ、輸出が伸び悩みだす。
収穫期を迎えれば、まだなんとかなると思われていたが、
収穫期前に取引先の大国が金融危機に陥り、連鎖式に大不況が広まった。

「時期が悪い。早く金策を考えて乗り切らないと、国内に及ぼす影響が計り知れない。」
「そうは言っても、我が国の野菜も果物も乳製品も生産を急には上げられない。金策と言ってもそうは無いぞ。」
「ここは一つ、国王の資産に援助頂いては…」
「不敬な上に馬鹿な奴め、この状況だと海外の資産家に二束三文で買い取られるのがわからんのか!」

会議は紛糾しつつも全く前に進まなかった。
国王は深々と溜め息をつき、思った。
『去年の春は良かった…、
国有地から出荷される作物の生産量報告を朝一番に受ける。
バルキ地区:桃17t、サンラ地区:牛肉18t、ニアデ地区牛乳22t…
民衆が働いている地区の名前を聞く度、やる気が沸いてきたものだ…。』

「そうだっ!」
M国王は手を叩いて飛び上がった。
「先進国では大きな建物や人の集まる場所の命名権を取り引きすると聞いた。
由緒正しい、M国の国有地の命名権を各国に販売しよう。

そして、そのお金で収穫期まで乗り切ろうではないか。」
大臣達は皆でM国王の意見を褒め称えたが、
内心『そんな物を買う酔狂な奴などいるはずがない。』と思っていた。
だが、かと言ってうまい考えも浮かばないまま会議は進んだ。

~3ヶ月後~
「国王、今年最初の生産量報告を報告に参りました」
「ご苦労、今年は輸出量も倍増していると聞いたが。」
「はい、これも我が国有地の命名権を売るという国王のアイデアのおかげです。」
「それほど大したものでは無いぞ。さあ、報告を頼む。」
「はい、“山形”地区:桃17t、“松阪”地区:牛肉18t、“北海道”地区牛乳22t…」

378: 創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 13:23:53 ID:5eawaRvc
>>375
最後までオチが読めなかった。
皮肉が利いて面白い。

376: 創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 09:58:26 ID:NBVr/wzb
乙!
日本ブランドの恐ろしさって奴ですねw

413: 創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 00:33:45 ID:MW0bmWc+

「黒か白」

エフ氏は宇宙開拓局というところに勤めている。
宇宙の様々な場所を調べるためにつくられた局だ。

エフ氏は今日も普段通りに宇宙開拓局へと来た。
「さて、今日はどの惑星の調査だろうか。新型ロケットが次々と開発されたため、
銀河系のどの惑星にも1日とかからずに着くからな。気楽な仕事だ。」

エフ氏の仕事は、惑星に行って、空気の測定や、生物の様子を調べて帰ってくるという仕事だった。
「まったく、最初のうちはドキドキしながら行ったものだが、最近は同じ行為の繰り返しばかりで
飽きてきたな。たまにはスリルのある仕事をやってみたいものだ。」

そうつぶやいているエフ氏のもとへ、局長がやってきた。
「エフ君。単調な仕事に飽き飽きしているようだね。たまには危険な仕事もやってみるかい?」
「えっ、やらせてもらえるんですか。もちろん、やります。どのような内容ですか?」
「うむ、ブラックホールの調査をしてもらいたい。」
エフ氏は驚いた。

「ブラックホールですって。大丈夫なんですか?」
「分からないが、学者の仮説では、ブラックホールは
ホワイトホールと呼ばれるところに通じていて、そこへワープするらしい。」
「なるほど・・・」
「もしその仮設が証明されれば、ワープが可能になり、
宇宙開拓もかなり進むだろう。もちろん君は昇進するし、かなりの額のボーナスも出る。」
「なるほど。やってみる価値はありそうですね。行かせて頂きます。」

そしてエフ氏の乗った超高速ロケットは、銀河系の中心にあるブラックホールへと向かった。
十数時間後、管制センターへ連絡が入った。
「こちらエフです。ブラックホールに到着しました。これより突入します。」
「幸運を祈る。」

その後数日間、連絡は途絶えていた。
皆があきらめかけた時、通信が入った。
「こちらエフです。ブラックホールはどこかの惑星へと通じていました!」
管制センターが歓声で包まれた。

「おお!素晴らしい。その惑星の様子を詳しく説明してくれ。」
「はい。空気はとても澄んでいます。また、清らかな小川、新緑の森、美しい花畑、
それに住民は皆私を歓迎してくれています。美食に美酒、美女までなんでも揃っています。
でもみんな足が無いような・・・まあそういう種族なのでしょう。あれ?僕の足も無くなっている。」
管制センターはため息で包まれた。

415: 創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 03:07:05 ID:zL7T6nB7
>>413
何気にホラーじゃねーかw

417: 創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 03:53:19 ID:EowO/oLs
コンタクト可能な彼岸の発見
ワープってレベルじゃない大変な功績だw

465: 創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 01:59:08 ID:pg0AU6qE

神様

「なぁ、神様は僕達が嫌いなんだろうか?」
仕事の疲れが愚痴を吐き出させる。
「なんだい急に?」
友は、穴を堀るのを辞めて僕を見た。逞しい黒々とした肉体から
労働によって滴り落ちる汗が絶え間なく地面に落ちる。

僕も同じように汗を垂らして続ける。
「この土地では僕等は穴を掘らないと生きていけない。
毎日きつい思いをして穴を掘らないと生きる事を許されない」
僕は天を仰いだ。頭上には空洞が広がっていた。

僕達の仕事は穴を堀り地下にシェルターを作る事。とても過酷な仕事だ。だけど怠ける事はできない。
なぜなら僕達の住む土地には、自然災害が頻繁に起こるからだ。
津波が毎日三度も襲い汚染された有害な波が僕達を苦しめ、暴風が突然吹き荒れる。
土地に食べる物なく、唯一の食料は暴風にのって外から流れてくるものだけだ。

必死になって貴重な食料を拾っていると津波にさらわれる。
だから生き残るためには地下にシェルターを作るしかない。
食料をたくさん貯められて、津波に流されないようできるだけ深く深くに。

地球上で一番過酷な土地なのではないだろうか。
「なんで神様なんだよ?」
穴の中で友の声が響く。
「だって自然災害は神様が起こすんだろ?神様は僕達を苦しめてばっかりだ」
僕は声を荒げた。友は目を細めて言った。
「仕方ないだろう。自然災害は防ぎようがない。
過酷な環境だけど必死に生きるしかないんだ。
津波は神の試練ってヤツさ」

僕は納得できない。
「津波だけじゃない。津波ならこうやって穴を掘ってシェルターを作れば防げる。
一度穴に避難すればあんなの怖くない。僕が許せないのは地震だ。
ようやく満足の行くシェルターができたと思ったら滅茶苦茶に壊してせっかく掘った穴を土砂で埋めてしまう
こんなに頑張ってる僕達を神様は傷つけてばかりだ。試練だってもんじゃないひどすぎるよ」

本当にこの土地は過酷だ。神様が僕達を虐めるために作った土地みたいだ。
せっかく穴を掘り終え安心なシェルターができたと思ったら地震が全てを壊していく。
また1からやり直しなのだ。

僕は怒り、激しく地面を踏みつける。頭に血が上っているせいか足元がグラグラと揺れた気がした。
友は、なだめるように柔らかい声で言う。
「そうはいうが神様も俺達を苦しめてばかりじゃない。自然災害が神様の仕業なら、
暴風に乗ってくる俺達の食べてるご飯も神様が与えてくれてるもんだ。

頑張って深い穴を掘れば安心して沢山飯が食える。
きちんと働きにご褒美をくれてるんだよ。後ろ向きな事ばかり考えずに前向きにいこう」

僕は納得できなかったが、友になだめられこれ以上は言わない事にした。
そろそろ津波が起こる時間帯だ、シェルターに避難しなくては。
それにしても本当に神様は俺達をどうして苦しめるのだろう?

男「痛たた。1日3度しっかり歯を磨いても虫歯はできるものだな
明日歯医者に行こう。しかし痛い。虫歯菌というの一体どうして、こんなに俺を苦しめるのだろう?
俺の身体に住ませてやってるのだから俺は神様のようなもんじゃないか」
評価お願いします。

466: 創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 04:00:17 ID:VdqhHuZx
>>465
最後までオチが読めなかった。
面白かったです。

467: 創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 22:44:59 ID:wKgnSUeW
なるほど虫歯菌かwこれは予想外で面白い

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479: 自殺:2009/03/30(月) 06:34:20 ID:Kn/5j1Ps

自殺

「今から死のうと思うんだ」
俺はポツリとつぶやいた。隣にいる友人が、心配そうに声をかけてくる。
「おいおい、馬鹿なことを言うなよ。一体、原因は何なんだい?」
「俺の体は病気に冒されてるんだ。他に例のない奇病らしい」
そうなのだ、俺の体は悪性のウイルスとでも呼ぶべき存在によって蝕まれている。

突然変異種であるそいつらは瞬く間に数を増やし、今や俺の体中が奴らのねぐらだ。
「うーん、確かにそりゃ聞いたことの無い例だな。体の具合は悪いのかい?」
「酷いもんだよ、体中が毒まみれなんだ。熱も少しあるみたいだ」
こいつらの恐ろしいところは、その繁殖力と進化のスピードにある。
あっと言う間に体中に広がり、様々な症状を引き起こす。

480: 自殺:2009/03/30(月) 06:36:08 ID:Kn/5j1Ps
おそらく俺の体も長くは持たないだろう、くたばるのは時間の問題。
ならせめて、最期は苦しまないように自分の手で幕を引きたい、尊厳死というやつだ。
そう告げると、友人は悲しそうにうなずいた。
「分かった、そういう事情なら止めはしない。しかし、君の症例はある意味貴重ともいえ
る。少しもったいない気もするな」

「おいおい、当事者じゃないんだからそんなことを言えるんだよ。なんなら分けてやろう
か? 実際、こいつらは君の体にも興味を持ってるみたいなんだぜ。ほっとくと移り住むかもしれんぞ」
そう言うと、さすがの友人も後込みしたようだ。
「すまん、そりゃ勘弁だ……それにしても寂しくなるな、君とは本当に永い付き合いだったもの」
「まあ仕方ないさ。ま、他の連中にもよろしく言っておいてくれよ。じゃあな……」

 ――その日、地球は自殺した。火星の見守る前で……

482: 創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 12:58:34 ID:ylLCoauF
久々におもろないのがキター

499: 創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 17:49:08 ID:xUUmL6wJ

『悪戯』

NとSという二人の青年が机を挟んで向かい合わせに座っていた。
Nは文庫本を読んでおり、Sは机にの上に置いたノートパソコンで大学のレポートを書いていた。

「実はさ」不意にNが言った。「君にちょっと悪戯をしたんだ」
「どういう悪戯?」Sがキーボードを打つ手をやめ聞き返す。
「まぁリラックスして聞けよ」
「いいけど……うわぁ!!」

Sが椅子の背もたれに体重をかけた瞬間、背もたれはSの体を支えることなく後ろへ倒れ、
Sもまた椅子から転げ落ちてしまった。

「君がさっきトイレに行ったとき、背もたれを壊しておいたんだ」Nが笑いながら言う。
「ひどいなぁ。しかし、僕は怒らないよ」
「どうして?」
「僕も悪戯をしたからさ」Sは椅子に座りなおすとニヤリと笑った。「君がトイレにいってる隙にね」

二人は互いに大の悪戯好きで、いつもどちらが凄い悪戯をするかを競っていた。
椅子の背もたれなど、まだかわいい方だ。Sの悪戯でNの家が警察に包囲されたこともあったし、
Nの悪戯が原因でSは恋人にフラれてしまったこともある。

「で、君はいったい何をしたんだい?」Nは尋ねる。
「そのうちわかるさ。先に言っちゃあ面白くない」
「まあ、そうかもね。しかしいったい何だろう?」

そう言ってNはペットボトルのお茶を飲んだ。飲んだ途端Nは顔をしかめる。

「やったな」NはSを睨み付けた。「何を入れた?」
「しょうゆ適量、塩こしょう少々」料理番組の解説みたいにスラスラとSが言う。
「道理でしょっぱいはずだ」Nは毒づく。「しかし、僕の悪戯は背もたれだけじゃないんだぜ」
「僕だってそうさ、他にもある」Sも負けじと言う。「例えば、君のその本」
「これかい?」
「有名な推理小説だよな。その本の謎解きのページを切り取っておいた」

「あ、本当だ」Nはページをめくり叫んだ。「ひどいことをするな、犯人がわからなくなてしまった」
「それなら大丈夫」Sがニヤリと笑う。
「どういうことだい?」
「登場人物紹介のページの、犯人の欄に赤ペンで丸をうっておいた」

「どれどれ……ああ、こいつが犯人だったのか。しかしこれじゃあ読んでいた甲斐がないというものだ」
「まあ、今日のところは悪戯勝負は僕の勝ちだな」Sが勝ち誇ったように言った。
「それはどうかな?」本を閉じるとNは言った。「僕にもまだとっておきの悪戯がある」

そう言うと、NはSのパソコンを指差した。

「これ?」
「そう、そのパソコンに悪戯をしたんだ」
「どこにだい?」パソコンを調べながらSが首をかしげる。
「実はね、爆弾を仕掛けたんだ。そのパソコンに」
「ええ!?」Sは驚く。

「ひどいことをするなあ、これは高かったんだぜ。それに何より、危ないじゃないか」
「大丈夫。この机の近くにいたら危ないだろうけどさ、すぐ逃げれば怪我はしないさ」
「でも、やっていいことと悪いことがあるぞ」
「まあね。しかしこれで僕の勝ちだ」Nは自慢げに言った。

「さて、あと一分ほどで爆発するからそそろ逃げようか」
「後悔するぞ」Sが悲しそうに言った。
「どうしたんだい? 確かに爆弾はやりすぎたかもしれないが……」
「実は僕ももう一個悪戯をしたんだ」

椅子から立ち上がるとSは言った。

「君の椅子とお尻の間にさ、接着剤を塗っておいたんだよね」

513: 創る名無しに見る名無し:2009/04/08(水) 00:38:18 ID:CX9eEJXH
>>499
世にも奇妙なとかストーリーランドでありそうだ

500: 創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 18:36:00 ID:c1mS2CUR
テロの域ww

701: 創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 00:41:41 ID:Qm3aIC+x

「濡れ衣」

N氏の、長い歳月をかけた研究がついに実を結んだ。
これまで人類の夢であり続けたタイムマシンの誕生の瞬間である。
「やった。やったぞ。僕はついにやった!」
N氏は一人歓喜し、己が努力の結晶であるタイムマシンを前に涙を流す。

「そうだ、こんなことをしている場合じゃないや」
科学省にこれを伝えようと、N氏は電話に手を伸ばし、興奮気味にコールをかける。
コール音を聞いていると、N氏の思考はだんだんと冷静になっていった。その時、
「待てよ」
N氏は電話を切った。

「まだ試用を行ってなかった。科学省への報告はその後だ」
N氏はタイムマシンを腕にはめ、スイッチを入れた。
周囲の景色が眩い光に溶け込み、光がおさまると、幾何学的な模様がN氏の周囲に展開される。
その背景に透けるようにして、何時とも知れぬ年代の
何処とも知れぬ風景が猛烈な速さで差し替わりながら映っている。

N氏は黙々と飛翔先の条件を加えていく。
条件に当てはまるように、少しずつ、目の前に映し出される風景の年代と場所が限定されていく。
やがて、N氏の望む景色がそこに現れた。
N氏は悪童のような笑みを浮かべて、ボタンを押す。
一瞬の闇が明けると、N氏はそこに立っていた。」
十年前の、いつも誰もいない小さな公園だった。

"タイムマシンの試用"というのは、
これから自らが行おうとしているイタズラに対して見てみぬフリをするための免罪符だ。
このタイムマシンが多くの人間に知られる前に、
ちょっとだけ悪さをしてみようというN氏のささやかな出来心だった。

N氏は公園の脇の方まで歩き、そこの土に一握り分のビー玉をを埋めて、時代を元に戻す。
再び土を掘ると、
「あれ?」
何もなかった。この十年の間に誰かが掘り起こしたのだろうか。

N氏はまた元の時代へ遡る。だがそこにもビー玉はなかった。
かれこれ、何日間も同じようなことを何度も行ったが、過去の改変は叶わなかった。
そんなことを続けているうち、N氏はある事実に気付いた。
それは、自分が開発したものがタイムマシンではないということだ。

時間を遡行できる装置をタイムマシンとするなら、
N氏が開発したものは平行世界へ飛翔できる装置である。
数億数兆もの「場合」によって枝分かれした世界を自由に行き来できるということだ。

あの時の自分は、無数の過去の内の一つと、無数の未来の内の一つを渡っていたため、
ビー玉のある過去、または未来へ飛ぶことができなかったのである。
それを実現するには一生をかけたとしても難しいことだろう。

自分がタイムマシンだと思っていたものは、実はそうではなかった。
だが、N氏はさほど落胆しなかった。
むしろ、その目はぎらついていたのだ。
それに比べれば、イタズラをする前の悪童の目などかわいいものだ。
「僕はとんでもないものを発明したぞ」
その事実が判明した日から、N氏は無差別に過去と未来へ飛んで銀行強盗を働き始めた。

その世界で犯人を捜しても、その犯人はすでに
別の世界へ飛んでしまっているのだから絶対に捕まりっこない。やりたい放題できる。
ほんの数週間で、N氏は街一番の大金持ちとなり、ついに高級住宅地で邸宅を建てるに至った。

しかし、そんな優雅な生活は突如として終わりを告げることとなる。
ある日、警察がやってきたのだ。
「銀行強盗を働いたNだな。逮捕する」
N氏は、警察の言った罪状に狼狽しながらも厳しく声を荒らげた。

「何を言っているんだ。僕は強盗なんてやっちゃいないぞ。証拠はあるのか」
「防犯カメラにお前の姿がはっきりと映っている。さあ来い」
手錠をかけられ、N氏は連行される。
なぜだ。自分が捕まるはずはない。ましてや防犯カメラに映っているなどありえない。

この世界では、自分は何の悪さもしていないはずではないか。
そう考えたとき、N氏は一つの可能性に思い至って、ついに観念した。
「なるほど、どこか遠くの世界にいる僕が、この世界にやって来たわけか」

702: 創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 07:10:10 ID:wYtWq+Yg
>>701
良いね

704: 創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 17:44:14 ID:9rURcx/k
>>701
これ良いね。星氏っぽい

705: 創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 18:05:15 ID:mzIEMYJ+
>>701
妙に納得してしまったw 並行世界がいくらあろうと悪者は悪者かw

730: 創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 01:34:31 ID:1Vkwqa31

「お寿司」

その日、エヌ氏とエフ氏はお寿司を食べていた。
お寿司といっても回っているものでも、職人が握った高級なものでもなく、
スーパーから買った、パック詰めのお寿司だった。

あと少しで完食だという時に、エヌ氏は迷った。
「イカとエビ、どっちを最後に食べようか…」
結局エヌ氏はエビを先に食べたのだが、後悔したようだ。

「やっぱり大好きなエビを最後に食べるべきだった。」
その言葉を聞いた瞬間エフ氏は
エヌ氏が最後までとっておいたイカを横からつまんで食べたのだった。

732: 創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 07:46:43 ID:nmcDdhH2
>>730
ワロタw
GJ

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