スマイルフォーカス
25 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2014/03/15(土) 18:30:33.54 ID:FN6cfjJH0
知り合いの話。
近場の山をハイキング中、デジカメで写真を撮りまくったという。
奇妙なことに、何もないのにスマイルフォーカスが反応する場所が幾つもあった。
試しに何枚か撮ってみたが、何もおかしい物は写っていない。
後で整理することにして、そのままハイキングを続けた。
家に帰ってから確認したところ、先に確認した際は何も写っていなかった画像に、おかしなモノが写り込んでいた。
藪の中に、人の顔が幾つも浮かび上がっている。こちらを興味深そうに見つめながら。
あることに気が付き、慌ててその手の画像を全部消去したそうだ。
「写ってた顔な、どれも鼻が異常に長かったんだよ」
信心深い彼は、畏れた様子でそんなことを言っていた。
シャボン玉
26 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2014/03/15(土) 18:31:18.37 ID:FN6cfjJH0
友人の話。
山奥の仕事で荷を背負っている時のこと。
何処からともなくシャボン玉が風に乗って流れてきた。
何でこんな辺鄙な所に?疑問に思っていると、急にその数が増えた。
後から後から途切れることなく、暗い森の中から透明な玉が川のように溢れ出てくる。
一体誰が吹いてるのか。
そう考えているうち、なぜかわからないが怖くなった。
泡の出てくる方から目を逸らし、道を外れないよう足早にそこを抜けたのだという。
「いや、落ちも何もない話だけどね。
人里離れた場所で場違いな物に出会すと、それだけで怖いものだってわかったよ」
そう彼は言っていた。
山小屋の音
27 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM :2014/03/15(土) 18:31:55.82 ID:FN6cfjJH0
私の体験した話。
学生時代に仲間と三人で、冬の山小屋に泊まった時のことだ。
日没前から雪が降り始め、晩飯を終える頃には小屋は雪に閉ざされていた。
雪明かりで外がぼんやりと見渡せる。静寂が耳に痛い。
コーヒーを湧かしながら明日のルートの話をしていると、突然音が響いた。
きぃぃぃぃ
立て付けの悪い戸が開く音だ。聞き慣れた音。
だからこそ戦慄した。
この小さな小屋に戸板と呼べる代物は二つだけ。
どちらも目の届く範囲にあって、しっかりと閉じているのが確認できる。
小屋中を探索してみたが、他に扉はどこにも見つけられない。
空耳かと考えていると、再び戸が開く音がした。
しかも、今回は続いて誰かの歩くような音までが聞こえてきた。
どうにも落ち着かず、交代で見張りを立てて眠りにつくことにした。
結局、その後も何度か何処かの扉が開き、誰かが歩く足音が聞こえていた。
どうにも落ち着かず、その夜は禄に寝られなかった。
風呂から悪臭がする
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part62∧∧
670 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/06/24(日) 18:27:32.56 ID:QXYOu7IS0
知り合いの話。
所用で家を数日ほど空けて、漸う帰宅した。
少し寛いでから、入浴しようかと風呂に向かうと、酷い悪臭がする。
驚いて浴室内を確認すると、浴槽が随分と汚れていた。
おかしい、家を出る前に掃除したのは彼自身だ。
それから今まで誰も使っていないし、こんなに汚れる筈はないのだが。
その夜、近所の親戚に土産を配りに行ったついでに、この話をしてみた。
するとそこの家のお婆さんに、こんなことを教えられたそうだ。
「昔はあんたン家の裏山に、山童(やまわろ)が住んでいるって言われててね。
山から下りて来ちゃぁ、里の者が留守なのを見計らって、そこの家の風呂を勝手に使っていくんだってさ。
一度もその現場を見つかったことはないそうだけど、風呂桶が、まぁその、大層汚れてしまうらしくて。
それで”山童が出たっ!”って初めてわかるっていう話でねぇ。
最近トンと聞かなくなっていたけれど、いや懐かしいわぁ」
「妖怪か何だか知らないけれど、本当に迷惑だよな。
勝手に使うのもアレだけど、せめて綺麗に掃除していけっていうんだよ」
彼はブスッとしながらそんな文句を言っていた。
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ドーン!
∧∧∧山にまつわる怖い話Part9∧∧∧
509 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/06 03:46 ID:RbBRa137
友人の話。
事故の多発する峠道を下っている時のこと。
片側は切り立った谷になっているのだが、いきなりそちらの窓が明るくなった。
続いて、ドーン!という音がする。
何事かと向けた目に、焔の花が広がった。
空一面に盛大な打ち上げ花火が炸裂していた。
見事な花火だったようで、友人はしばし目を奪われたらしい。
我に返ると、ガードレールに接触する寸前だったという。
慌ててハンドルを切り事なきを得たが、その途端、空に広がっていた花火が掻き消すように消えたのだそうだ。
「綺麗だったけど、傍迷惑だよな」友人はそう言っていた。
彼の話の花火が、その峠で事故の多い原因なのかどうかは不明である。
集落の明かり
510 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/06 03:48 ID:RbBRa137
友人の話。
ツーリング仲間と二人で、林道を走っていた時のこと。
夕暮れになり、そろそろ野営地を探そうかと考えていると、
なだらかな谷間に作られた、小さな集落に出たそうだ。
夕餉の支度をしているのか、各家から煙が上がっている。
窓に映る明かりが揺れているのは、今どき蝋燭でも使っているのだろうか。
広場でもあれば野営させてもらおうかと、彼らは集落に足を踏み入れた。
その途端、すべての家の明かりが同時にパッと消えた。
それがあまりに唐突だったので、二人はひどく動揺した。
急に薄闇が、その濃さを増したかのように思える。
即行で集落内を走り抜けた。
しばらく走ってから振り返って見ると、
まるで何事もなかったかのように、集落には再び明かりが灯されていたそうだ。
虎落笛
512 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/06 03:50 ID:RbBRa137
友人の話。
冬が深くなると、風が木立や電線を揺らすようになる。
時折、強い風が吹くと、ピュウゥという甲高く物悲しい音が響く。
この音のことを、虎落笛(もがりぶえ)と呼ぶらしい。
友人は、かつて冬山で遭難死しかけたことがある。
身動き取れないテントの中で、この虎落笛の音だけが延々と聞こえていた。
幸いにも無事に救助されたのだが、それ以来、どこにいてもこの虎落笛が聞こえるようになったのだという。
ピュウゥと音が聞こえると、決まって何か悪いことが起こるのだそうだ。
「悪いことが予想できるのだから便利じゃないか」と言うと、彼曰く、
「悪いことと言っても、一体何が起こるのか分からないから、手の打ちようがない」
精々、注意深くするくらいが関の山だと言うのだ。
今でも彼は、自分にしか聞こえない虎落笛を聞き「大したことじゃなければいいが」と顔をしかめているのだろうか。
入ったことがない部屋や蔵
401 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/06/01 03:44 ID:J8NuFp0d
友人の話。
彼の実家は山奥の旧家で、かつては辺り一円の領主だったという。
家屋も非常に広く、彼もまだ入ったことがない部屋や蔵などがあるのだそうだ。
社会人になったばかりの頃、季節は夏。
実家に帰っていた彼は、釣りをしようと思い立ち、釣竿を探していた。
聞いてみると、どこかの蔵に何本もあったという。
彼は探検も兼ねて、これまで入ったことのない蔵を片っ端から開けて行った。
ある蔵に踏み入った時、彼は何かにつまずいて倒れこんでしまう。
体勢を取り直した彼の目に、あり得ない物が映った。
床一面に、大きな氷の塊がいくつも転がっていた。
彼がつまずいたのも、畳ほどもある氷であったらしい。
気がつくと吐く息が白い。
驚いて見回していると、氷はすぅっと透き通り、あっという間に消えてしまった。
すべての氷が消え去ると、どっと外気の暑さが戻ってきたという。
家人によると、件の蔵には地下があり、かつては氷室として使われていたという。
これまでにも、度々そういうことがあったのだと。
「蔵が昔を懐かしんでいるのかもしれないねぇ」
そう言われたのだそうだ。
小さな人影
342 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/27 01:25 ID:aoZTYLR+
知り合いの話。
彼女は幼い娘さんを連れて、山菜採りによく出かけているのだという。
その日も彼女は、二人で近場の山に入っていた。
なかなかの収穫を上げて、下山している途中でのこと。
いきなり娘が足を止めた。前方、麓の方をじっと凝視している。
「どうしたの?」と聞くと、「あの小父ちゃん、変!」だと言う。
山道の前方を見やると、確かに小さな人影がこちらに向かって来ていた。
上下とも黒い服を着ていて、白い軍手がまるでそこだけ浮いて見える。
見るところ、蜂除け用の網がついた麦藁帽子を被っているらしい。
背中には大きな竹篭を背負っているようだ。
しばしば、そこいら辺りで見かける農夫の姿と大差がなかった。
「何が変なの。失礼なこと言っちゃダメ」
彼女がそう諭すと、娘は強情な顔をして首を横に振り、奇妙なことを言う。
「だってあの小父ちゃん、さっきまで頭が無かったんだよ。
私たちを見て、慌てて背中から頭を出して、身体に載せてたんだもん」
さては、篭から麦藁帽子を出した動作を、そのように見たのだな。
そう考えた彼女は、苦笑して娘の頭を撫でた。
「とにかく、失礼なこと言っちゃダメですよ」と釘を刺す。
343 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/27 01:26 ID:aoZTYLR+
しばらくして、その人影とすれ違った。
母子は快活に挨拶したが、相手は軽く会釈しただけだった。
目を合わせたくないかのように、俯いたまま無口で横を抜けていく。
えらく無愛想な人だなと思い、彼女は相手の顔をじろりと見た。
次の瞬間、ひどい違和感を感じる。何だ?
すぐにその理由に気がつき、全身が凍りついた。
網の奥、麦藁帽子の下の顔。
そこにあったのは、マネキンの頭部だった。
足を止めるのも恐ろしく、娘の手を引いたまま下り坂を歩き続ける。
背後の足音が小さくなっていくのが、無性にありがたかった。
麓についてやっと振り返ると、すでにさっきの男は影も形も見えない。
腰が抜けてへたり込むと、彼女に向かって娘が言う。
「ほらね。言ったとおりだったでしょ!」
娘は鼻を膨らませ、誇らしげに胸をそらしている。
どうだと言わんばかりのその姿に、彼女の恐怖心も霧散してしまい、思わず苦笑してしまったのだそうだ。
以来彼女は、娘と二人きりで山に入らないように注意しているという。
百獣の行列
321 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/26 00:06 ID:9OHyTcqR
私の体験した話。
山村のお客さんを訪問する途中でのこと。
田中の舗装もされていない道を走っていた私は、路上に動く物を認め車を停めた。
池と池とに挟まれた部分を、のそのそと石亀が歩いていたのだ。
どうやら、大きな池から小さな池へと移動しているらしい。
私は亀が渡り終えるのを待つことにし、一息つくことにした。
亀が池に消え、車を出そうとしたその時、新しい横断者が姿を現した。
太い青大将だった。
なぜか、まるで道を渡る順番を行儀良く待っていたかのような、そんな気がした。
見守っていると、青大将に続いて今度は大きなヒキガエルが現れた。
その後も沢蟹、水鳥、蝮、牛蛙、鼬などが一匹ずつ、しかし切れ目なく移動を続けた。
私は呆然として、百獣の行列に見入っていたようだ。
322 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/26 00:07 ID:9OHyTcqR
呆けていると、いきなり名前が呼ばれた。
振り向くと、訪問先のお爺さんがトラクターに乗って、車の後ろに付けている。
挨拶を交わし、私は目の前の行列を指差した。
「これは何事でしょうね?」と私が口にすると、お爺さんにこう返された。
「あぁ、今あっちの池には、大物が来ているからのぅ」
平然とした顔でお爺さんは言う。
大物とは何かと尋ねたが、「大物ってのは大物のことだ」とはぐらかされた。
それ以上のことを聞く雰囲気もなくなり、二人その場でじっと待つことにした。
しばらくして行列は終わり、お祖父さんと共に家に到着した。
商談打ち合わせは無事に終わったが、大物についての話題は出なかった。
それから何度も同じ場所を通ったが、あれ以降は行列を見ていない。
今では道路もきれいに舗装され、池の護岸工事も行われている。
大物とやらは、もう来なくなったのだろうか。
初老の小父さん
261 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/24 01:03 ID:Yu7Z+HJN
知り合いの話。
彼は幼い頃、家の事情で山奥の実家に越したのだそうだ。
実家の村には小さな分校があり、そこに通うことになったのだという。
一学年が十人程度の小さな学校で、彼はなかなかそこに馴染めなかった。
「倉庫の小父さんと知り合うまでは寂しかった」と彼は言う。
校舎の外れに小さな倉庫があり、体育用具などが納められていた。
そこに、初老の小父さんが居ついていたのだそうだ。
なぜか彼以外の人には、その小父さんの姿は見えなかったらしい。
ああ、こういうことも有るんだな。と、当時の彼は不思議には思わなかった。
彼は寂しくなると倉庫に行き、小父さんと他愛もないお喋りをした。
小父さんは彼の子供っぽい話を馬鹿にすることもなく、煙草を燻らせながら頷いて聞いてくれたのだという。
彼曰く、「ずいぶんと救われた」ということだ。
卒業間近、他の学校と合併することになり、分校は取り壊されることになった。
小父さんが別れの挨拶をしたのはその頃だった。
「俺はここから動けないから」
理由を聞くと、小父さんはそう言って薄く笑った。
ああ、そういうものなんだな。と、彼は受け入れて別れを告げた。
校舎が取り壊された翌日、彼は倉庫があった跡地に行ってみた。
いくら待ってみても、もうそこには小父さんは現れなかった。
帰り道、気がついてみると泣いていたそうだ。
「あの小父さんは一体何だったのかな」
彼は懐かしそうにこの話をしてくれた。
一ヶ所だけ木が枯れている場所
∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part63∧∧
579 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2012/07/27(金) 19:57:51.04 ID:alRUP7m90
アメリカで聞いた話。
彼はインディアン保留地で医師をしている。
暖炉用の薪を拾うため、よく山に入っているのだが、それを知った住民から一風変わった注意をされたのだという。
「常緑樹の森の中で、一ヶ所だけ木が枯れている場所があったら、そこは避けるように。
そこには『枯れ木の巨人』が居るのだから。
その枯れ木は巨人の住処だから、周りを彷徨いていると、木の幹で殴られてしまう。
近よらなければ、手は出してこないから」
そこで医師は神妙な顔になって、こう述べた。
「おとぎ話みたいなものだと思っていたんだけどね。
前に一度だけ、そんな枯れ木の側で、何かにぶつかったことがあるんだ。
怪我とかは大したことなかったけど、これが何にぶつかったのか、全然姿が見えなくて。
まさに見えない大木の幹にでも衝突したような、そんな感じだったんだ」
巨人を信じる訳ではないが、あれ以来、そのような枯れ木には近よらないのだという。
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にやりにやり
∧∧∧山にまつわる怖い話Part13∧∧∧
176 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/27 22:38:25 ID:yrDc/s+P
友人の話。
彼女の実家は、山深い田舎にある。
都市部では縁遠くなった祭りなどがまだおこなわれていて、
彼女曰く、帰郷するのをけっこう楽しみにしているらしい。
彼女がまだ小学生だった頃。
従姉妹たちに誘われて、近くの神社の夏祭りに出かけた。
出る前に祖父が声をかけた。
「にやりにやりに会わんようにな」
意味がわからなかった彼女はさして気にも留めず、従姉妹と一緒に家を走り出た。
境内は狭かったが、子供が満足するほどには夜店が出ていた。
人出も結構多く、祭りの雰囲気を満喫したという。
焼きトウモロコシを買ったのだが、後で食べようと思い、口を付けずにおいた。
そのまま人ごみに押されて、お堂の方へと流されて行く。
横手には沢山の絵馬が奉納されていた。
その時、絵に描かれた馬と目があった。
馬はいやらしく口元を歪めて、ニヤリ、と笑いかけてきた。
慌てて従姉妹に知らせたのだが、従姉妹には普通の絵馬に見えたと言う。
しかしそう言いながらも、従姉妹は彼女を背中にかばってくれた。
馬はその間も、ずっとニヤニヤと笑っている。
177 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/27 22:38:56 ID:yrDc/s+P
従姉妹はすっかり怯えてしまった彼女の手を引き、「帰ろう」と言ってくれた。
異論のある筈もない。
先に歩き出した従姉妹の背中、浴衣の帯びに団扇が指してあった。
その団扇の中ほどに、唐突に赤い線が、すぅっと引かれる。
線は下品に口を開いて、ニヤリ、と笑いかけた。
彼女の目と鼻の先で。
悲鳴を押し殺し、従姉妹の手を振り払って境内を駆け出した。
彼女が走り抜けるにしたがい、両脇の屋台に不気味な笑みが走る。
お面売り場のお面たちが皆、いやらしくニヤニヤと笑う。
たこ焼き屋の看板、絵の蛸が突き出した口を歪めて、ニヤリ。
幼子の持った風船に口が浮き出して、ニヤリ。
ばら売りブロマイドのアイドルたちが、こちらを見つめて、ニヤリ。
タライに浮かべられた西瓜が、ぱっくり口を開けて、ニヤリ。
駆け下りた石段脇の狛犬までが、ニヤリと笑いかけてきた。
彼女はついに泣き出して、家に向かい夜道を走り出した。
暗くてよく見えなかったが、通り道の塀には広告が何枚も貼られている。
広告の女性の口元が、ニヤリとしている気がして、顔を上げることが出来ない。
178 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/27 22:39:37 ID:yrDc/s+P
道半ばで息が切れ、足を止めた。
後ろの方から、彼女の名前を呼ぶ声が追ってくる。
従姉妹が心配して追ってきているのだ。
目を落とすと、トウモロコシを手に持ったままだった。
急に空腹を憶えて、口を近づける。
と、いきなりトウモロコシが黒くなった。
目を見張る彼女に向かい、一粒一粒の表面に浮き出した小さな口が嘲笑していた。
ニヤニヤニヤニヤ・・・
気がつくと、実家の布団の中だった。気を失っていたらしい。
祖父母と従兄弟が、心配そうに見下ろしていた。
そこで初めて、思い切り声を上げて泣いたのだそうだ。
179 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/27 22:40:17 ID:yrDc/s+P
祖父が次のように言う。
「あれは人を驚かせるだけで、祟るような悪さはせん。安心しぃ」
祟るという言葉に反応し、彼女は一層泣き出してしまった。
家族はなだめるのに一苦労したという。
後で従姉妹に聞いてみると、「時々出るよ」とあっさり答えられた。
登下校の時が一番よく出るのだと。
目の前の友達のランドセルが、ニヤァと笑いかけるらしい。
それでも、彼女が祭りで体験したほどのことは、まず無いという。
「からかい甲斐があったんだね」
そう言われて、思わず憮然としたそうだ。
地元では、にやりにやりは狐の仕業ではないかと言われていた。
「お狐だかお狸だか知らないけど、まったく大概にしてほしいわ!」
彼女はそう怒って見せたが、それからも祭りの時期には里帰りし続けたという。
今となっては、幼き日の恐怖も、懐かしい思い出なのかもしれない。
彼女はそれ以降、にやりにやりには出会っていないそうだ。
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ミツ
321 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/01 20:56
先輩の話。
彼のお父さんの実家は山奥の小村で、すでに廃村となっている。
そこの村人の多くは、狩猟で生計を立てていたそうだ。
狩人たちは獲物を正式な名前で呼ばず、村独自の呼び名を付けていた。
鹿や兎などはヨツ、猿はフタツ。猪だけは別格で、クジラと呼ばれていたらしい。
鳥には特別な呼び名はなかったそうだ。
ある早朝、お父さんの家に村中の狩人が集まったのだという。
何やら深刻そうな顔で打ち合わせをし、皆で山に入っていった。
お父さんはまだ幼かったが、唯一つ憶えていることがあるそうだ。
「ミツが出た」
この台詞がくり返し述べられていた。
夕方、山に入った狩人が帰ってきた。
猟は成功したらしいが、なぜか獲物を誰も下げていなかった。
皆返ってくるなり、塩をまいてお清めをした。
それから間もなく、村人は村を離れ始めたという。
村が廃れるまで長い時間はかからなかった。
あの日、狩人たちが何を狩ったのか。
お父さんはずっと気になっているのだそうだ。
329 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 22:37
>>321
名前の由来は
鹿・兎→四本足→ヨツ
猿→二本足→フタツ
猪→おかくじら→クジラ
鳥→足をつかず飛ぶ→名前なし
ですかね?
これにのっとれば、ミツは三本足の何かなんでしょうが、一体なにやら・・・。
三本足といえば、日本神話の八咫烏や、中国神話の三本足の亀なんかが思い浮かびますが、
ミツは何か獣系の感じがしますね。
山道の整備
322 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/01 20:57
友人の話。
地元で登山大会がおこなわれることになり、彼も山道の整備を手伝っていた。
道を塞いでいる倒木を片しているうちに、彼は誰かに背中を叩かれた。
次の瞬間、ひどく突き飛ばされて前のめりに倒れてしまう。
誰だ!と起き上がると、黒く大きな手が握りこぶしを作っているのが見えた。
手は背後の木の幹から生えていた。
慌てて逃げ出したが、他のメンバーにはそのことを話せなかったという。
大会直前、ルートが急に変更され、その木のあった道は使われないことが決まった。
「やっぱり何かあったんだ」そう思ったが、何があったのかは聞けなかったそうだ。