世にも奇妙な物語

【世にも奇妙な物語】妻の記憶

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仕事一筋であり接待や飲みに明け暮れていた夫は、若くして認知症を患い突然妻を亡くした。

原因は、妻が一人で部屋にいた時不注意で火事を起こし煙による窒息死。

仕事ばかりし、思い出を作ってあげられなかったと後悔していた。

葬儀の翌朝、夫が起きると台所に朝食の準備をしている妻の姿が見え驚く。

どうやら自分だけに見えるらしい。

こうして、妻の記憶の日々と一緒に過ごす、奇妙な夫婦生活が始まった。

最初は驚いたが、次第になれ妻の行動を追いかけるようになった。

妻の認知霊はどうやら認知症が発症した3年前の日々からスタートしている。

この日、妻が出かけた先は病院。

病院から出てきた妻は暗い表情をしており、認知症と診断され、誰もいない家で一人泣いていた。

夫は、会社を退職し、妻の認知霊を追いかけることで、夫は、妻の霊のを追い、少しずつ妻の日々の行動を知っていった。

やがて時は流れ、娘が結婚することになり妻の霊に報告した。

妻はぼーっとする時間が多くなっていた。

娘の結婚式の前日。

夫はシャツにアイロンをかけようと娘にアイロンの場所を聞く。

すると私がかけてあげると、娘がアイロンをかけようとする。

しかし、娘の手ががたがた震え始めた。

妻が起こした火災の原因はアイロンであり、娘が少し目を話した隙に起きてしまった事故だったのだ。

娘が抱えている罪悪感を感じ、すぐさまアイロンがけを代わった。

アイロンをかけ終わり、妻がいるはずの寝室に行ったが姿がなく、慌てて、外を探すがどこにもいない。

その時ふと、ある場所が思いついた。

3年前、妻の認知症を初めて知った日。

スーパーにでかけたところ、道に迷い自宅から遠い公園で保護され、夜中に警察まで送り届けられた日だった。

急いで公園に向かうと、妻がベンチに座りぼーっとしていた。

ベンチに座る妻に傘をかけ語りかける。

付き合う前、自分がしつこく追いかけてようやくOKをしてくれたこと。

すると、妻は誰かと話しているような素振りをした。

警察に見つかり、保護されたのだ。

そして妻は無事に家に戻ってきた。

それから2年が経った。

妻の認知症は進み家事もできなくなった。

ある日夜中にニュースを見ている妻。すると、2年間ほとんど無表情だった妻の顔が少し変わり笑っていた。

その様子を見た夫は、3年前のこの日何のニュースをやっていたのかとネットで調べたところ、春の訪れを知らせるレンギョウが咲き乱れているニュースだった。

実はこの時期レンギョウが咲き乱れる場所で妻にプロポーズをした。

妻はそのことを覚えていたのだ。

時は流れ、妻の認知霊の記憶は火事で妻が亡くなった日が訪れた。

火事が起きた時間…

妻がいる寝室の扉を開けようとするがなかなか怖くてあけられない。

あの日、実は娘がシャツにアイロンをかけようとしていた。

その姿を見て妻が手伝おうかと声をかけた。

しかし、娘は妻の介護に疲れておりつい冷たい言葉をかけて妻をあしらってしまう。

その時、娘が彼に呼び出され外に出ることになった。

少しの時間だけだからと棚にアイロンを入れて出かけた。

その姿を妻は見ていた。

妻は娘が出かけた後アイロンを取り出し、娘の代わりにシャツにアイロンをかけたのだった。

アイロンをかけ終わり、別室へと移動する妻。

しかし、アイロンの電源を切っていない。

するとアイロンから煙が発生しみるみるうちに部屋中煙だらけに。

夫は、妻の霊に向かって「逃げろ!!」と言うが、妻はドアの前にうずくまってしまう。

夫が鍵を開けてドアを開けるが、妻は外に出ようとせずドアの前に倒れてしまった。

妻の最後を見た夫は「辛かっただろう…悪かった」と必死に語りかける。

すると妻の手がふっと夫の方に差し伸べられ、夫は握ろうとするが妻の霊は消えてしまった。

妻の記憶はここまでであり、もう霊が現れることはなかった。

そして時は流れ12年後ー。

夫は亡くなった。

夫の葬儀にて、住職は頼まれていたレンギョウの花を添えた。

あの世の世界では、レンギョウの花を一輪持って二人は再会した。

(おわり)

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