後味の悪い話

【後味の悪い話】小説『駿河城御前試合』の双子の話

218: 本当にあった怖い名無し 2022/01/04(火) 03:37:35.06ID:10hxcg/l0
南條範夫による小説『駿河城御前試合』の双子の話
後に双子の父となる男は、腕は悪くないが不運であることから「月無し」と呼ばれていた
そんな父もついに子宝に恵まれる日が来る
だが、妻は御産で命を落とす
おまけに、産まれた息子は双子であった
この時代、双子は不吉とされて差別と迫害の対象であり、片割れをすぐに殺すのが風習となっていた
父は産まれた息子の片方の首に手を伸ばすが、号泣し、辛うじて思い止まる
「女房が命と引き換えに産んでくれた子を殺すことなんて出来ない。きっとこの子達は、人より幸福になるために二人で産まれて来たんだ」
父は、自分の息子達を日替りで表に出し、双子であることを世間に隠して育てた
自分にだけは見分けが付くようにと、父は兄弟の髪止めの色を二種類に別けていた
だが、弟は髪止めの色分けを「自分は跡取りである兄の予備でしかないのだ」と解釈し、密かに傷付いていた
兄は弟の悲しみを察し、父に無断で自分達兄弟の髪止めの色を同じ物に変えてしまう
そのことに父は困惑し、もう息子達の区別が付かなくなったが、それでも兄弟の絆を痛感して嬉しかった
二人の息子を養うため、父は功を焦って働こうとし、それによって不運にも命を落としてしまう
「やっぱり俺は最後まで月無しだったか。息子達よ、すまねえ・・・」
父亡き後、兄弟はますます結束を強めた
「自分達は二人で一人だ。一人では出来ない事も、二人でなら出来る」
互いに表と裏を代わる代わる生き、一人では倒せない敵も二人で協力して倒していった
だが、そんな兄弟の仲に亀裂が入る出来事が起こる

219: 本当にあった怖い名無し 2022/01/04(火) 03:39:03.67ID:10hxcg/l0
兄が女性と恋に落ち、そのことを弟に秘密にしたのだ
後日、弟は偶然にも兄の意中の女性と出会ってしまう
兄に隠し事をされたという事実に怒ると同時に、弟もまた彼女に恋をしてしまった
こうして兄弟は一人の女性をめぐっていがみ合う関係になってしまった
そんなある日、強盗が人質を取って小屋に立て籠るという事件が起きる
人質を救い出すため、兄弟は一時休戦することにし、表と裏から小屋に突入して強盗犯に挑んだ
そして強盗犯を斬ることには成功したが、なんと兄が腹部を斬られるという重症を負ってしまう
「手当てをすればまだ助かる可能性は有る」と兄は主張するが、弟は「残念だが、腹が裂ければ命は無い」と否定する
そして弟は「彼女は俺のものだ!」と宣言し、兄を小屋に閉じ込めて火を放った
それから数年後
弟は愛しの彼女との結婚のために身分を上げようとし、真剣御前試合に出場することにした
しかし、対戦相手として現れたのは、数年前に亡きものにした筈の双子の兄であった
兄は奇跡的に生き延びており、弟への復讐のために御前試合に出場したのだ
そして真剣勝負が始まり、兄弟は斬り合うが、実力が互角であり、最後には相討ちとなってしまう
「兄者、すまなかった・・・」
「いいんだ。元はと言えば、俺が彼女のことを隠したばかりに・・・」
抱き合うような形でこと切れた二人の姿は、まるで満月のようであったという

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