後味の悪い話

【後味の悪い話】吉田としの少女向け小説

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582: 1/3 投稿日:2011/06/26(日) 13:50:51.55 ID:ZIG9hnbY0
吉田としの少女向け小説、30年以上前のもの
その中の作中小説です

主人公は裕福なお嬢様、気立てもいい。恋人がいる。
家では住み込みのお手伝いさんがいた。古参のお手伝いの他にもう一人、
大抵は田舎の中学を卒業したばかりの子を雑用係に雇っていた。
(戦後しばらくくらいまでは普通にあった、奉公制度みたいなもの。
基本学校に進学できない田舎の女の子は、他所の家で家事や行儀作法を学んで
お給料を貯めて数年後実家に戻って嫁に行く)

新しく来たお手伝いA子は太っててちょっととろく頭も悪そう。しかし主人公は
そんな彼女にも優しく接し、A子も主人公を慕う。一所懸命で正直が取り柄、
給料から家族に仕送りし残りは一円も使わず貯金するA子を、主人公の母も主人公も
気に掛け、お下がりの服や小物などちょくちょくやったりしていた。主人公母の
計らいで、A子は夜間高校に通えるようにもなった。

583: 2/3 投稿日:2011/06/26(日) 13:52:28.10 ID:ZIG9hnbY0
ある日主人公は、A子の柳行李(時代!)の中にデパートの包み紙が入っているのを
見つける。開けてみるとそれは男物のネクタイだった。少し前に主人公が恋人に
プレゼントしたもの。A子をお供にデパートに行き、包んでもらったので間違いない。
出張中でめったに戻ってこられない彼氏に、直接プレゼントしたはずの物をなぜ
A子が持っているのか。最近夜間高校でBFができたと、A子はたまに休日に外出する。
まさか自分の恋人に会いに行っていたのか。彼氏が相手にするはずないが、彼も
優しい人だ。無碍に冷たくできないでいたとしたら。

主人公と主人公母はA子を激しく責める。A子は白状しない。自分のBFに買ったのだと主張する。素敵な柄だったからと。今まで自分の給料を使った事もないケチがこんな舶来物のネクタイを買うなんてありえない。A子はその日の内に追い出され主人公母は紹介者に激しく抗議する。A子は紹介者に伴われ田舎に送り返される。
親切が仇になった、A子に主人公の幸せを見せつけ、主人公の様になりたいなどと夢を見せてしまったと主人公は後悔するが同時に憤る。あんなに親切にしたのに、優しくしてあげたのに。

584: 3/3 投稿日:2011/06/26(日) 13:53:39.02 ID:ZIG9hnbY0
ネクタイは取り戻したが、A子の私物を送り返そうとしたらその中には主人公達があげたお下がりの服や小物がたくさんあった。いまいましい思いで主人公とその母はそれも全部取り返す。軽くなった柳行李を送り返し、人を見る目について二人は反省する。

後日、出張からやっと戻ってきた恋人の首にそのネクタイが締まっているのを見た主人公は目の前が真っ暗になる。「取り返した」ネクタイはまだ主人公の家にあった。A子は自分の恋人に会いに行ったりはしていなかった。ネクタイを盗んだりしていなかった。正直に本当の事しか話してなかった。泥棒扱いし、自分の様になろうなんて無理だ育ちが違うのだからと説教し、そもそも他人の柳行李を勝手に開け他人あてのプレゼントを開けた自分の所業に、主人公は震えだす。

その後A子からぶ厚い手紙が届く。主人公は誰にも言わず中身も読まずに焼き捨てる。何度も何度もA子は封筒が膨らむ程の手紙を寄越す。主人公はその度に燃やす。A子が忘れてくれるまで、諦めてくれるまで、主人公は手紙を燃やし続ける。

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