後味の悪い話

【後味の悪い話】ブルーハーツは悪くない

361:本当にあった怖い名無し:2006/11/06(月) 10:52:46 ID:PXesQaOHO
「ブルーハーツは悪くない」

ポケットベルすら普及してなかった頃の話。
東京に行けば、自分を受け入れてくれる人がいるかも知れない。
家出を決意した彼女は、ギターと農協の貯金通帳を持ち、故郷を後にした。引きこもりがとやかく言われる現代では、彼女は活動的な部類に入っていたかも知れない。
事実、街中でブルーハーツや長渕の曲を演奏していたら、酔っ払いがお金をくれたりするなど、彼女はたまに幸せだった。

その一方、男と知り合い、同棲して、逃げられて、風俗嬢になるほど器用では無い事を、自分の身を持って経験したりもした。
大人や教師に反発しさえすればよかった、ある種、簡単な時代も終ろうとしていた。
話の合う人達は、とっくに就職してしまい、気づくと、彼女はバイト先で一番年長になっていた。

あんなに好きだったバンドも解散してしまった。
時間には逆らえず、彼女が嘘つきで汚い大人になろうとしていた。
焦りから彼女は、段々と不器用になった。情報の少ない時代、男性不信から手相の列に並び、いつ業界の人と出会ってもいいように、自作のカセットテープをポケットに入れ、持ち歩いた。

部屋では、やりたい事が自分でもわからなくなった上に、妙な自尊心が膨れあがり、独り言も増えた。ある日彼女は、発作的に手書きのポストカードを作り始めた。
ハガキにクレヨンで青空の絵を描いている内に、彼女はだんだん楽しくなってきた。
そんな、彼女の祖父母だけが心から誉めてくれるような、安っぽくて、クズみたいに幼稚な絵ハガキを仕上げた冬の午後に、彼女は自殺した。

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