後味の悪い話

【後味の悪い話】家庭乗っ取りもの小説『銀の仮面』

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769:本当にあった怖い名無し2021/05/27(木) 20:04:57.88ID:MdB4nXmT0>>783
ヒュー・シーモア ウォルポール『銀の仮面』

ミス・ソニヤ・ヘリズ。
もう五十になる聡明な女。頑健で、心臓がすこし悪いことをのぞけば馬のように丈夫であり、非常識なことをしたりしない。
友人関係では、茶飲み友だち程度はいるが、特に親しい友人はいない。
お気に入りの所有物は、自宅の壁に飾られた美しい“銀の仮面”。

ヘンリー・アボット。
まるで小説の主人公のような美しい青年。
背が高く、ブリュネットで、青白くて、きゃしゃで、上品で、…しかも、着ているものといえば…青い、みすぼらしい服…。
画家を自称しているが、売れるとは思えない作品を描いている。
結婚しており、妻と乳児がいる。

ソニヤが晩餐会から帰る途中、ヘンリーから声をかけられる。
一旦は無視しようとしたソニヤは、ヘンリーを家に入れてしまう。
食事を与え、わずかな金を与え、帰す。
すると、家の中からシガレットケースがなくなっていた。

数日して、ヘンリーがシガレットケースと絵を持って、ソニヤの家を訪れる。

ヘンリーの訪問回数は増えていく。
そして、家族すら連れてくる。
ヘンリーの妻は病気だ。看病のため、部屋を借りる。
ヘンリーの親戚が来る。ソニヤのユトリロなどのコレクションが売られてしまう。
さらに、書類に署名させられます。
ソニヤの家、財産は、すっかりヘンリーのものになってしまった。

ソニヤに残されたのは、お気に入りの銀の仮面のみ。
だが、壁に飾られた銀の仮面はただ静かに全てを眺めているだけであり、ソニヤを助けてはくれない。
ソニヤは部屋に幽閉され、いつしか忘れられていった。

783:本当にあった怖い名無し2021/05/31(月) 19:28:22.49ID:k/LeoSCa0
>>769
「銀の仮面」は怖いよな
主人公は美術愛好家かつちょっとお人好しなところがあって
青年がシガレットケース(これも美術品)を盗んだのもその価値を理解しているから、
つまり芸術家の魂を持った人間なんだと思ってしまうんだよな
そこに付け込まれて絵を買わされたり、飯を奢らされたりして侵略されていく

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784:本当にあった怖い名無し2021/05/31(月) 19:36:01.09ID:k/LeoSCa0
同じような家庭乗っ取りものの小説から一つ
ディーノ・ブッツァーティ「家の中の蛆虫」

主人公はある日道端で知らない男に声を掛けられる
誰だか思い出せないが昔の同級生だと言う
男曰く二人はとても仲の良い親友だったはずらしい
とりあえず連絡先を交換して別れる二人

それからしばらく後、主人公は家の前の通りで例の男の姿を発見
自転車が故障したらしく雨の中で立ち往生している
放っておくのも気が咎めた主人公は彼を家の中に入れてやる
家に上がり込んだ男は主人公の蔵書に興味を示し、時々遊びに来て読ませてもらってもいいかと言い出す
内心うざいと思いつつ了解したところ早速翌日早朝から来訪
手土産として稀覯本を渡される(が、実際は大した価値のない古本)
主人公は礼儀として喜んだふりをし書斎を自由に使うよう伝える

以来毎日のように訪れてきては朝から晩まで書斎に入り浸る男
その間食事すら取っていないようで、心配した妻が彼を食事に誘う
男が大袈裟なまでに遠慮してみせたことで妻は逆に意地になってしまい、ほとんど強引に食卓に着かせる
最初はほんの僅かに摘まむ程度だったが次第に健啖に飲み食いし始める男
その日男はなんと夜中の二時まで主人公の家に滞在
しかも突然気分が悪くなったと言って主人公のベッドを使って寝てしまう

翌朝目を覚ました男はベッドを横取りしてごめんと平謝り
もう出て行く、二度と来ないからと例の大袈裟な身振りで告げる
しかし彼は去り際、家の小間使も僕のことを厄介者扱いしていたしねと突然のカミングアウト
客人に小間使が暴言を吐いたとなれば主人として捨ててはおけない
自らの体面を守るために主人公は重用していた小間使を解雇し、男を家に留まらせることになってしまう

785:本当にあった怖い名無し2021/05/31(月) 19:40:49.21ID:k/LeoSCa0
どうも妙なことになってきている
今や男は家に居着いて一家と同じテーブルで食事をする
最早家族の一員のようだ、最近は妻との関係も怪しい
そして男の行動は遂に家庭内の枠を飛び出す
主人公に恩返しがしたいからと主人公の会社で働くことを申し出たのだ
仕方なく雇ってはみたがこの男まったく仕事が出来ない
しかも給料は要らないと突っぱねるので正式な雇用関係も結べず将来的に何かと揉めそうな予感
色々と限界に達した主人公は男を殺そうと決意する

深夜、男が床に就いたのを見計らい寝室へ忍び込む主人公
この寝室も今でこそ男が占有しているが元は主人公のものだ
これですべて元通りになるはずだと信じ、眠る男に向けて銃を発砲
その瞬間、寝ていたはずの男が突如として銃を叩き落とした
銃弾は急所を逸れ男の左手に当たる
致命傷にはなり得ない、しかし紛れもない大怪我
血まみれの部屋、泣きじゃくる男、驚いて駆け付けてくる妻
男は涙ながらに言う、これは事故だ、君が僕を殺そうとしたなんて誰にも言わない、警察にも…

これですべてが終わった
殺害に失敗した挙げ句償いようのない負い目を拵えてしまった
その後主人公は警察に通報しない見返りとして、男を会社の共同経営者に迎えることになった
家も会社も最早実質的に支配しているのは男の方だ
男は奢り昂って威張ったりはしない、ただ穏やかに微笑むのだ
あの夜のことを許してやっただろうとでも言いたげに

786本当にあった怖い名無し2021/06/01(火) 01:38:55.31ID:Vk6H8zQw0
>>784
乗っ取りって「現実にも有り得そう」だから怖いし胸糞悪いんだよな
「背乗り」って言葉が有るくらいだし、表沙汰になってないだけで実際に人知れず行われてるんだろうなぁ・・・

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