後味の悪い話

【後味の悪い話】星新一「ノックの音が・現代の人生」

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872:現代の人生(1/2):2013/11/13(水) 10:29:03.66 ID:/84Bxkxh0
昨日に続いて星新一「ノックの音が」から「現代の人生」

夜10時ごろ、小さなアパートに住む27歳の男、
山下友彦はベッドに転がっていたがある悩みから眠れずにいた。
そこにノックの音が何度も鳴り響くが、知っている人なら名を告げるはずだし、
今は誰にも会いたくないので友彦は応答しなかった。

しばらくしてから、何者かが窓ガラスを破って入ってきた。
入ってきた男は友彦を見て困惑するが、すぐに落ち着いて金目のものを出すように告げた。
男の指示に従って友彦はカーテンを閉め、電気をつけると男の手にはナイフがあった。
友彦がうろたえて「そんなものは見たくない。早くしまってくれ」と言うと、
男は抵抗できないよう友彦を縛ることを条件にナイフをしまった。

男はどうやら慣れているらしく、手際よく部屋を探っていた。
友彦は男に黙っているよう言われたが、好奇心から男についていくつか質問した。

男の手口は、明かりのついていない部屋を狙って、
最初のノックで反応があれば適当にごまかし、無ければ窓から侵入するというもの。
万一失敗したらどうするのかと聞くと、「そんなこと考えたら何もできない」という。
自信に満ち溢れた男を友彦が羨むと、男は憐れむような口調になり、
「あんたはくよくよしすぎるようだが、それはよくない。
現代に必要なのは強い神経、そして自信と行動あるのみだ」と告げる。
そして男の方から何にそんな悩んでいるのか聞くと、友彦は女のことだという。
将来性も金もないからと振られた話を始め、興奮してきた友彦に苛立った男は話を戻した。

874:現代の人生(1.5/2):2013/11/13(水) 10:30:36.88 ID:/84Bxkxh0
男が探ったところ、友彦の部屋に金になりそうなものは全くない。
友彦が金の万年筆と質札ぐらいしかないというと、男は「最低だ」と吐き捨てる。
伏せている写真立てに目を向けると、「忘れてた、それは銀だ。持っていっていい。中の写真は捨ててくれ」と友彦は言う。

男はそれすらも値打ちはないといい、その写真を確認して、
写っている女を見て「確かに冷たい感じがする」と言った。
友彦がその女のことをまた話そうとすると、男は自分と同じぐらいの年齢なのに過去に囚われてばかりの友彦に歯がゆくなり、自分の生き方を教える。

過去は悔やんでもどうしようもない。また明日は明日だ。
考えることは今日という一日だけでいい。
そのかわり、全能力を注ぎ後悔しないように今日を楽しむのだ。
それが現代の生き方なのだと。
その話を聞いた友彦は少し明るくなり、希望が出てきたと語った。

そこにまたノックの音が響く。男の指示で友彦が返事をすると、警察だという。
男はなぜばれたのかとあわてるが、既に外にも警官が張っており、逃げ場はない。
友彦は自分がごまかすからタンスの中に隠れるよう提案するが、男はそのまま引き渡すつもりだろうと信用しない。
そこで逆に、友彦が隠れて男が友彦として応対するという提案をし、男もそれに賛成した。
友彦は拘束を解かれ、タンスの中に入った。男は玄関へと向かう。

ごめんなさい、二つに分けるつもりでしたが後半が長すぎたのでもう一つ続きます

876:現代の人生(2/2):2013/11/13(水) 10:31:11.44 ID:/84Bxkxh0
男は笑いながら、その信条通り自信にあふれた表情で自然に応対した。
だが、警官は顔をしかめ「とぼけても無駄だ」と言った。逮捕しに来たのは男ではなく、友彦の方だったのだ。
警官が言うには、海岸にナイフで殺された女の死体が流れ着き、その身元を調べると友彦がつきまとっていた相手だったという。

予想外の事態に慌て、男は「俺は友彦ではない」と言うが、
自分の正体を明かすわけにもいかず、そのまま取り押さえられてしまう。
その際、友彦を脅すのに使ったナイフが落ち、警官はそれを凶器と断定。
これなら家宅捜査の必要もないだろうとして帰っていった。

静けさを取り戻した部屋で、友彦はタンスの中から出てきた。
友彦の悩みは、つきまとっていた女に冷たくされ、衝動的に殺してしまい、
自首する決心がつかなかったことだったのだ。
だが、男に現代の生き方を教えられた友彦は、見違えるほど明るくなり、
逃げられるだけ逃げて人生を楽しむことにすると決意し、外へ飛び出していった。

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