後味の悪い話

【後味の悪い話】星新一「ノックの音が・夢の大金」

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851:夢の大金(1/2):2013/11/12(火) 22:58:35.08 ID:eV8w+GIq0
後味悪いと思うかどうかわからないけど、
星新一の「ノックの音が」ってショートショート集から「夢の大金」

町はずれの小さな家に住む山田庄造という老人(70近い)がいた。
庄造は身寄りがなく、子に恵まれず妻にも先立たれ、退職金は詐欺師にすべて奪われた。
もう金もなく大家から立ち退きを請求され、しかも最近は決まって大金に手を伸ばして、でも届かないという夢ばかり見る。
できることなら働きたいが年齢と持病から勤め先も見つからず、自殺を決意。
本当に最後の金で安いウイスキーと半紙を買ってきて、辞世の句を書こうとしたところにノックの音が響いた。

夜の10時、借金取りや立ち退きの催促にしては遅すぎる。不審に思いながらも庄造が向かうと、宅配だと名乗って二人の男が入ってきた。
聞くと、その男たちはかつて役所で働いていたが、それから刑務所に入り、最近刑期を終えてきたのだという。
庄造は強盗だと思い、ここには盗むものなどないと言って追い返そうとするが、男たちはそれを聞いて笑うばかりで話が通じない。
庄造は腹が立って殴りかかったが、返り討ちに遭い気絶したふりをして様子をうかがうことにした。

二人の男は床を開け、地面を掘り始めた。その会話から、庄造は少しずつ事情を知っていった。
この男たちはかつて勤めていた役所で受け取っていた賄賂や横領した公金を少しずつ貯め、大きな貯金箱に入れてここに隠したのだ。
逮捕されてからもそのありかは絶対に吐こうとせず、また男たちは実の兄弟のため仲間割れやチームワークの乱れも生じず、完璧な計画だった。
そして刑期を終えた今、その金を掘り出しに来たのだ。

男たちは安全装置(雑誌を詰めた石油缶で、誰かが掘ってもこれが目的物と勘違いしてあきらめるだろうというもの)を取り出し、
さらに深く掘ってついに大金のケースを取り出した。
刑務所で償ったのだから金は名実ともに俺たちのもの、気がかりは老人だが騒いだところで信用されまい、と喜ぶ男たち。
庄造も、夢に大金が出たのはあれのせいだったのかと思わず胸をときめかせた。

852:夢の大金(2/2):2013/11/12(火) 22:59:23.28 ID:eV8w+GIq0
目的を達し、感激した男たちは喉が渇いたと言って、庄造のウイスキーを手に取った。
それを見た庄造は痛みをこらえて立ち上がり、「それは私のだ」と二人を阻止した。
そのウイスキーには自殺用の毒を既にとかしていたのである。飲まれたら自分が死ねない。しかも二人の死体が転がるのも困る。
しかし、調子に乗っている男たちは取り合わず、またも強引に止めようとした庄造を突き飛ばした。
庄造が痛みをこらえやっと体を起こしたときには、二人は既に死んでいた。

ウイスキーのビンはすでに空で、自殺はもうできない。しかし警察に向かっても、男たちが言ったように信じてはもらえまい。
しばらく考えて、庄造はあることを思いつく。
男たちが掘った穴に二人の死体とビンを埋め、男たちの用意した安全装置も埋めて、元通りに床を戻した。
緊張のせいか神経痛も気にならず、作業はスムーズに進んだ。

全ては元通りになった。
ただ違うのは、夢に見たあの大金が実際に目の前にあり、手で触ることができる。
庄造はいずれ発覚し、逮捕されるだろうということを覚悟し、
この大金で高級老人ホームに入って二人の冥福を祈りながら待つことにした。
「しかし、死体が発見され、なぞのとけるのが、わたしの生きているうちに間にあうだろうか」

男たちは自業自得な部分もあるだろうけど、その死の寸前に
「俺たちは明日ヨーロッパに高飛びするんだ。わかるかい?はるか西にあるんだよ」って笑ってるセリフが入って 、
死の後地の文で「明日を待つことなくはるか西の浄土へ旅立っていた」
「罪は刑務所で償ったし、死ぬ寸前があんな楽しそうだったのだから極楽行きだろう」って茶化してるのがなんとも

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