後味の悪い話

【後味の悪い話】犬木加奈子「かなえられた願い」

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500:かなえられた願い1/2@\(^o^)/:2014/10/23(木) 01:06:50.08 ID:28gCFyUG0.net
犬木加奈子「かなえられた願い」から

信心深い老婆がいた。
広い家に住み暮らしに十分なお金はあったが、家族はなく孤独な生活をしていた。
隣家の親切な婦人はたまにお茶に誘ってくれるが、幸せそうな家族を見るのは辛かった。
老婆が真に望んだのは、貧しくとも親しい友人や家族に囲まれた生活だった。

「神さま、わたしゃもうあなたを信じません。あなたのなさった事すべてを恨んでいます」

若い頃の回想をする老婆。
夫は「大きな仕事がある」と出稼ぎに行き事故で死んだ。
夫の死を嘆き悲しむが、残された2人の子ども達を立派に育てる事が神の御心、
そして試練だと信じ乗り越えた。

親切な友人たちに恵まれてもいたが、その友人達も次々に病気や事故が襲い亡くなっていった。
それでも人に甘えてはいけないとがんばった。息子達は大きくなった。
上の息子は工場に働きに出たが、帰ってきたのは工場からの沢山の見舞金と息子の骸だった。
甘えん坊で優しい子だった下の息子は、ささいな風邪を引き医者の手違いで死んだ。
医者からは口止めの代わりに一生分の生活保障を約束された。

それ以来抜け殻のように生きてきたが、老婆はとうとう
悪魔に魂を売り家族を取り戻そうとする。
呼び出した悪魔は
「お前が今この状況にあるのは神を信仰してきたせいだ。
だからお前が神を信仰してなかったパラレルワールドへ送ってやろう」と言う。

501:かなえられた願い2/2@\(^o^)/:2014/10/23(木) 01:08:35.28 ID:28gCFyUG0.net
老婆が目を覚ますと夫の死の知らせを受けたあの日に戻っていた。
息子たちはまだ生きており、夫も死なずに戻ってきた。
「神を信じてなどいなければ、わたしはこれほど幸せだったのだ!」

と喜んだのも束の間、夫から「借金のかたに家を取られた」と告白される。仕事と言うのはギャンブルの事だった。
本当なら家を賭ける前に夫は死んでいたはずだった。
信じていた親切な友人たちには有り金を全て騙し取られた。

夫に似て酒好きでギャンブル好きだった上の息子は、働きに出た後暴力事件を起こし
賠償金や保釈金を請求された。事件を起こした日は本当なら息子の死んでた日であった。
下の息子が風邪を引くが、医者のかわりに下宿屋のあばずれ娘が看病に来て、
2人はそのまま家の金を持ち出し家出してしまった。
その後も何人もの女性とつきあってお金だけはねだりに来た。優しさはだらしなさの裏返しだった。
夫に足を引っ張られながら息子たちの不始末のしりぬぐいをして、女は年をとっていった。

「みんな勝手なことをして厄介な時ばかりやってくる。始めからいないほうがどんなにましだったか。
 悪魔なんかに願いをかけたばっかりに…。」

もう1つの世界で私が住んでた家は今は別の人が住んでいるのだろう。
親切だった隣家の婦人も年老いた物乞いのような私には見向きもしない。
人はいつも自分の人生にもしもを願う。思いどおりにならなかったことを人のせいにして。
老婆は思う。
これは、あの世界で私の人生が神の御心に守られていた事を信じなかった罰なのかもしれないと。

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