後味の悪い話

【後味の悪い話】児嶋都「蠱毒」

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43:1/3:2013/08/21(水) 02:51:27.01 ID:oDjQwJ3YO
児嶋都「蠱毒」

主人公はうだつの上がらぬ中年男。ぱっとしない妻と二人、安アパートに暮らす。
田舎出の若造同士がなんとなくデキあってしまい、若気のいたりでなんとなく結婚して今に至る。
(心の通いあわぬ相手と一緒に暮らすというのは、一人でいるよりよほど孤独なものです)

会社をさぼって古い神社で涼んでいると、和綴じの古い本が落ちているのを見つけた。
見てみると、古来からの呪術が載っている。
小動物を箱に閉じ込め、最後まで生き残ったのを生贄にする「蠱毒」が主人公の心を惹いた。
(食われたものの魂と生き残りの強い魂が融合して、呪いに最適の贄になる…)
(いったい誰がこんなに面白い本を捨てたのでしょう、この現代社会において非科学的な呪術を信じて実行する好事家が私の他にもいるのでしょうか)

主人公は本を持ち帰り、小さな箱に虫や小動物を入れて隠した。

44:2/3:2013/08/21(水) 02:52:38.98 ID:oDjQwJ3YO
数日後ワクワクしながら箱を開けると、全部死んでいたので主人公は一気に冷めた。

(私は最強の贄を手に入れてどうするつもりだったのか)
(女房(あれ)を殺すなどとんでもない、あれにはどんな種類の関心も持った事はないのですから)

主人公が本をなくした事に気づいた頃、妻が五つ子を妊娠した。
(…そう言えばいつだったか一度だけしたような…)

45:3/3:2013/08/21(水) 02:53:51.09 ID:oDjQwJ3YO
月が満ちて、男の子が一人だけ生まれた。他の四人は死産だった。
「…薄気味悪い顔…」
「…他の四人は体がバラバラになっていたんですって…」
看護師の内緒話は主人公には聞こえなかった。

(地獄はこれからも続くのです)
(女房はあの本を読んだのでしょうか)
(私はこれからも、心の通いあわぬ女房とこの…なんだか薄気味悪い息子と暮らすしかないのです)

最後は1P丸ごとの大ゴマで、安アパートに暮らす親子三人が描かれる。
無表情な主人公夫妻、小学生になっているらしい息子の目は黒目がなくて血走った白目だけ、耳まで裂けた口に尖った歯がならび、顔中シワだらけで破れたぬいぐるみをぶらさげている。

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