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977: 1 2012/05/01(火) 05:05:36.55 ID:SGrejIs80
どっちも短編漫画。内容はうろ覚えでタイトルは忘れてしまったけど。
・御茶漬海苔の短編
あるところに仲の良い兄妹がいた。
兄は小さい頃からとても優しくて、いつも妹を守ってくれた。妹もそんな兄を大好きだった。
ある日、兄は「人の役に立ちたいから」と自衛隊?のようなところに入隊する。
妹に「お前が危ないときは絶対におにいちゃんが助けにくるからな」と約束する。
さがそこはすごいスパルタだった。上司は厳しく兄はいつも傷だらけだった。
けれど兄はその厳しさも、人助けをしたいという思いの強さから耐えることができた。
妹とは離れ離れで会うことも全然できないけれど、それでも兄は頑張っていた。
ある日、兄は上司から「○時までに必ず届けるように」と品物を預かった。
車で目的地へ向かう途中、事故の現場を発見する兄。夜の道路には自分とそのケガ人だけ。
助けを待っていては間に合わないかもしれない。病院に連れて行かなくては。
けれど任務を果たさないと。このままでは約束の時間に間に合わない。でも大ケガした人を見捨てていくなんて…。
兄は結局、任務は果たせなかった。けれどケガ人を病院へ運んだことで、人の命を救うことができた。
そんな兄の行動に上司は怒り「上司の命令を聞かんとは何事だ。お前らは何があっても上司の命令通り動くのだ。任務が最優先だ」と、兄を激しく痛めつける。
978: 2 2012/05/01(火) 05:06:16.59 ID:SGrejIs80
この頃から兄は少しずつおかしくなっていく。
だんだんと表情が消えて、ロボットのように上司の命令に従って動くようになる。
一方で、兄がそんな状態になってることも知らず、妹は婚約者もできて幸せに暮らしていた。
その日、妹は婚約者と一緒に海に来ていた。妹は兄の自慢話を婚約者に聞かせている。
しかしある拍子に妹と婚約者は海に落ちてしまう。荒れた海でどうすることもできず2人は波にさらわれる。
そのとき兄は船の演習でか、ちょうど海に来ていた。上司を目の前にみんなで整列している。
船の上にいる兄を見つけて「お兄ちゃん助けて!」と妹が叫ぶ。兄は妹が溺れていることに気づく。けれど動くことができない。
妹は何度も助けを求める。兄はその姿を目にしながらけれど動けない。
次第に妹も婚約者も海に飲み込まれていくけれど、兄はどうしても動くことができなかった。
(教官、命令を)(教官、どうか任務を)
ただ心の中で必死で上司からの「溺れている者を助けろ」と命令してくれるのを待ち続けていた。
・あだち充の短編(原作小説があるらしい)
雪の夜、バーで2人の男が飲んでいる。
一人は顔は男前だけど、身なりは汚らしく少し酔っている。以下A。
もう一人は大柄でおっとりした顔立ちで、身なりがいい。以下B。
AがBに「いい服ですね」と声をかけ「何の仕事をしているんですか?」と尋ねる。
「小さな会社を経営してます」とBは答え「このへんに住んでいるんですか?」とAに聞く。
「すぐ近くの汚いアパートですよ」とAは答え、自分がいかに惨めな人生を送ったかを語る。
仕事はまったくうまくいかず、妻には逃げられ借金漬けで、今も借金取りに追われているという。
その内容に「どうしてそんな話を私に」というBに、Aは「他人だから話せるんです」と悲しげに言う。
そしてAは、眩しくて楽しかった自分の子ども時代をBに語って聞かせた。
979: 3 2012/05/01(火) 05:06:47.74 ID:SGrejIs80
Aは小さいころは田舎で暮らしていた。
勉強ができて強くて勇敢で、友人たちはAのことが大好きだったし、Aも友人たちのことが大好きだった。
けれどAは親の都合で、都会に引っ越さなくてはいけなくなった。
春、引っ越していくAに友人たちは「都会もんになんか負けるな」「がんばれ」とエールを送り、
Aはそれに「当たり前だ!」と答え、手紙を送るからと約束した。
けれど都会は田舎に比べてずっと勉強が進んでいた。
田舎では一番の成績だったのに、都会ではそれがまったく通用しなかった。
成績はひどいもので、「こんなことみんなに言えない」とAは手紙に「勉強なんて楽勝。都会もたいしたことない」と書いて送った。
最初は友人たちを心配させまいとしてついた嘘だった。
けれど手紙を書くたびに嘘を重ねてしまう。
学年で一番の成績、部活だって他のやつは相手にならない、有名な高校に入った、有名な大学に入った――
もう今さら「嘘だ」なんていえないところまできてしまった。
結局その後も、それらを「嘘だ」と言えないままに30年近く経ってしまった。
田舎にいる友人たちは、今でもずっと手紙の内容が真実だと思っている。
都会の暮らしに馴染めなかったAにとって、友人と呼べるような存在はその友人たちだけだった。
今度、その友人たちと数十年ぶりに会うのだとAは言う。
それを最後にして、ボロが出る前に彼らの前から行方をくらますつもりだと。
せめて友人たちの中でだけでもこの30年を立派に生きた人間でいたいんだとAは言う。
そしてAは最後に、友人たちの中でも一番チビだった少年のことを話す。
「同じ年なのにチビで泣き虫で、いつも俺を頼っていた。けど俺もあいつに頼られると何でもできるような気がしたんだ」
まるで弟のようだった。いつも自分のあとをついてきた。
「引っ越すとき、あいつと離れるのが一番辛かった」Aは懐かしげな、でもひどく寂しい目をして言った。
雪が積もってきたとバーのマスターが言い、Bは席を立つ。
「お先に」と言ってAの分の代金も一緒に払いバーを出た。
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980: 4 2012/05/01(火) 05:10:09.03 ID:SGrejIs80
そしてBは公衆電話から友人に「今度の同窓会、急用ができて行けそうにないんだ」と伝える。
「Aによろしく伝えておいて」とも。
Bはバーで偶然顔を合わせたときから、汚い身なりをしたその男が、あの30年前の春、都会に引っ越していったAだと気づいていた。
けれどAの変わりように驚き、名乗り出ることができなかった。
そしてA本人から現状を聞かされ、Aが自分たちに今の姿を見られたくないと感じていることを知り、
名乗らずに「他人」を貫き、そしてもう会わないことを決めたのだ。
電話を切ってBがボックスから出ると、雪の中にAがたたずんでいた。
Aの手にはナイフが握られていた。
「考えてみたらこんな汚い格好じゃ友人たちに会えないんだよ…。…服を交換してくれ。金も」
バツの悪そうな顔をしながら、Aはナイフをちらつかせる。
Bの目に涙が滲むのを見て、「殺したりしないから泣くなよ」と慌てるA。Bはおとなしく服を交換する。
「だから泣くなって。いい年してみっともない」と戸惑うAに、「泣き虫は子どものころからなんだ」とBは言う。
Bのスーツは少し大きかったが「まあ大丈夫だろう。バレやしない」とA。「裏に名前が入ってる」と教えるB。
「こんなところ誰も見ない」そう言いながら確かめようとしたAは、そこに書かれた名前が自分の友人のものだと気づく。
Aは顔をあげる。
自分がさっきまで着ていた汚いコートに身を包んだBが涙を流す姿と、小さかった頃のBの泣いている姿が重なる。
Aのナイフを持つ手は震えていた。
楽しかった子ども時代。Aのあとをついてくる小さなB。
『このまま春なんか来なきゃいいのにね』
『春が来なきゃAは都会になんか行かなくていいんだもんね』
『そうすればずっとここにいられるんだよね? ね、A』
雪の上に一人の男が倒れていた。男の体の下の雪は、血で赤く染まっていた。
994: 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 18:02:18.44 ID:EMXoQM1IO
>>977
なんで自衛隊に入ったら感情が無くなるんだ?
胸糞悪いわ。
981: 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 05:12:23.83 ID:SGrejIs80
>>977-980
長くなってすみません、以上です。
二つ目の方は、最後に倒れている男がAなのかBなのかはわからない感じで
けど倒れてるのがAでもBでも救いようなくて凹んだ
984: 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 08:16:49.66 ID:RANRHHGc0
>>981
どっちが死んだんだよう(つд`;)・゚・
朝っぱらから切ないよう…
985: 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 09:41:06.95 ID:+4GLH2OP0
>>981
上杉で再生したら後味悪さが倍増された
987: 本当にあった怖い名無し 2012/05/01(火) 13:39:09.97 ID:CyJvsAl70
>>981
おもしろかった
あなた文章うまいね