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892:1/2:2013/11/13(水) 20:27:03.14 ID:J9pLjqnr0
丸井諒子の短編集「竜の学校は山の上」内
『進学天使』(初出は同人誌らしい)
天使みたいに翼が生えた少女と、ふつうの少年の話。どちらも中学生。
少女は翼を使って空を飛ぶことができる。しかし、ふつうに
生きていれば加齢で筋肉が衰えていくとともに飛べなくなってしまう。
周囲はそれを惜しんでいて、母親は飛びつづけるための訓練を積める
アメリカへ留学するように少女にすすめている。
けれど、本人は「英語も喋れない、友達とはなれるのはさびしい、
飛ぶこともそんなに好きってわけじゃない」と乗り気ではない。
少年は少女から相談を受けて、「それならそう言うべき、
自分の人生なんだから好きにしないと後悔する」とアドバイスする。
それを聞いた少女は喜んで、母親ともう一度話し合い、渋る
母親に「自分の人生だから自分の好きにする」と言った。
少年は、少女が翼が生えているというだけでふつうに
生きられないなんておかしい、可哀相だ、と考えている。
そんなある日、クラスの女子が卒業文集につけるDVDを、少女に
空から撮ってもらおう! と言いだした。少年は制止するが、
少女は気楽に請け負う。「嫌なら俺から言っておく」と言う
少年に、少女は大丈夫だよ、と笑いながらも、
「でも、そんなふうに気にかけてくれることがすごく嬉しいな…」と
はにかむ。
893:2/2:2013/11/13(水) 20:28:07.12 ID:J9pLjqnr0
少女は自転車で助走をつけ、空へ飛び立つ。はじめて
空を飛ぶ少女を見た少年は圧倒され、飛行撮影が終わり
家路についたあとも、地上や地上から見る空の狭さ、日本の狭さを
噛みしめている。そこへ少女が追いつき、進学についての話をするが、
少年は気もそぞろ。しかし、少女が「一緒の高校にいきたいな…」
という段になって、少年は、前はあんなこと言ったけどやっぱり
おまえは留学するべきだ、飛べなくなるなんて勿体ないと言いだす。
少女は「なんでそんなこと言うの? わたし、別に飛べなくなったって、
君のことが好きで、一緒の高校にいきたいって…」と言うが、少年は
驚き、「そんな、つまんない理由で?」
教室で、クラスの女子が少年に「あの子がすごく落ち込んでたけど
あんたなんか言ったの?」と訊く。少年は「留学しろって言った」
「なんか、理解のつもりが足引っぱってただけだって気づいたから」
クラスの女子は怪訝そうな顔をする。
場面は戻り、少女視点で空へ飛び立つところ。自転車をこぐ足、飛びたって
見える校庭、校舎、屋上にクラスメイトたちがいる。そのなかにいる少年は
目を見開いて驚いている。街を見おろす絵に少女の笑い声が響いて終わり。