後味の悪い話

【後味の悪い話】グレアム・グリーン「森で見つけたもの」

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322:1/3@\(^o^)/:2015/02/14(土) 10:22:12.52 ID:aoRhE3FIO.net
グレアム・グリーン「森で見つけたもの」

ピートの村は海抜千フィートにあり、浜から5マイル離れている。村人は誰も山の稜線を越えた事はない。
20マイル先に岬があり、その先に小さな村があるらしいが誰も行った事はない。
数百フィート登ると茂みが終わって森が始まる。ここの黒イチゴは旨い。

ピートの母は背丈が5フィート足らず、やぶにらみでよちよち歩きで吃音症だが、ピートの目には誰より優雅に見える。
ピートは自分の年齢を知らない。母は七歳だと言い、父は九歳だと言う。
男の子は10歳になれば村の男衆と漁に出る。
母は一人息子のピートが危険な海に出るのを遅らせたいのだろう。
二人以上の子供がいる家は村に二軒だけだ。
村の人口はなかなか増えない。

村の男衆は晴れた日もどんより曇った日も新月の夜も漁に出るが、雲の形がはっきり見える天気には決して船を出さない。
漁の最中にもくもくと雲がわけば、慌てて浜に戻る。岬の向こうの村も同じだ。昔の大災厄の記憶と結びついているらしいが、物知りのピートの母もくわしい事は知らない。

「ピート団」はこの日、黒イチゴを求めて山の稜線を越える冒険に出た。
村近くの黒イチゴは食べ尽くしてしまったのだ。
ヤギのミルクをかけた黒イチゴはピートの母の好物だ。
ピート団はピートの他四人の子供たちで、一人はまだ七歳の女の子。

山の上には大きな黒イチゴがあった。
稜線を越えると、眼下に大きな四角い廃墟が見えた。
真っ二つに裂け、苔むし蔦が絡まり木々に囲まれている。

323:2/3@\(^o^)/:2015/02/14(土) 10:23:52.26 ID:aoRhE3FIO.net
廃墟は1つの大きな家ではなく、幾つもの家が何層にも積み重なった大きな建物だとわかった。
巨人伝説は本当だった、もしかしたらこれはノウじいさんの船かも、と喋りながら探検するうち、ピート団は彼らそっくりな子供たちに遭った。
顔の半分がえぐれた子、小さな目が落ち窪み髪の毛が一本もないので老人のように見える子、頭が二つに割れた子、顔中が緑色の吹き出物でおおわれたがに股の女の子、膝から下がない子。
彼らはつるつるした冷たい壁の向こう側から出てこようとしなかったし、声も立てなかった。

ノウじいさんという昔の人は、大きな船に獣を1つがいづつ乗せて大災厄から逃げたそうだ。
大災厄が具体的に何だったのか、物知りのピートの母でも知らない。
大きな雷が落ちたとか、大津波とか、色々言われている。

ピート団はある部屋で巨人の白骨を見つけた。
背丈はゆうに6フィート。
がに股の女の子が泣き出した。
「この人、とってもきれいね。足が長くてまっすぐで。歯もこんなに白くて、ちゃんと生え揃ってる」
「巨人ってきれいだったのね。どうしてみんないなくなっちゃったのかしら」
おまえだってきれいだよ、と言おうとしたピートは、なぜか喉がつまって何も言えなかった。

ピートはその部屋から、冒険の証拠である戦利品を持ち出さなかった。
その部屋にある物は、全部巨人のものだと思ったので。
泣いた女の子をなだめたピートは、団員たちに遅れて山肌を登った。
少し先を行く団員たちの不揃いな短い手足は、蟹のように見えた。

324:3/3@\(^o^)/:2015/02/14(土) 10:25:06.68 ID:aoRhE3FIO.net
ピートが「頑張れば」四年前の冬をぼんやり思い出せるとか、母との会話でやっぱりママは頭いい!って感心する所、
「樹木ってなあに?オーク?樺?オークと樺は全然違うよ、犬と猫ぐらい違う」
「オークも樺も樹木よ。犬も猫も動物でしょ?」

ピートたちが鏡を知らない事、だから自分の顔も知らない事、自分らと同じ姿で同じポーズの鏡像を見て、
「あの四人は団員とおんなじだな、じゃあ僕が残りの一人、僕ってあんな顔なんだ…」って思わない知能だと察せられる事、子供の遊びの名前で「あの雲に気をつけろ」ってのが出てくるからきっと大災厄は核戦争なんだな、と察せられる事、
黒イチゴを持って帰るのに女の子のスカートの後ろ半分をお尻の上で結んで前半分をカゴがわりにするシーンがあって、お尻もあそこも丸出しって表現が出てくるので、じゃあパンツのない世界なのか、って所、
巨人の身長が6フィートで足がまっすぐで歯が白く「ちゃんと」生え揃ってる、って表現で、じゃあ村人は誰も…って思えるのが、なんかウワアア!ってなった。

日常と思わせて実は、ってので筒井康隆「定年食」「家」を思い出した。

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