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553本当にあった怖い名無し2021/09/30(木) 00:07:28.13ID:EpITZx4l0>>554
高橋留美子『MAO』から、医者のエピソード。
明治時代、ある若き医者に美人の妻がいた。
しかし妻はその美貌ゆえに悪い男に襲われ、喉に致命傷を負わされてしまう。
医者が駆け付けた時には既に手遅れで、妻は絶命寸前だった。
するとそこへ謎の陰陽師が通りすがり、五行の「土の術」によって精製した「土薬」を喉の傷口に塗ることによって妻の命を救ってくれた。
さらに陰陽師は「定期的に塗りなさい」と言って土薬の入った壺を医者に渡すと、去って行った。
しかし、やがて土薬が尽きてしまう。
医者は試行錯誤を重ねながら土薬を自作し始めた。
ついでに周辺地域の怪我人たちにも無償で土薬を処方するという慈善活動を始め、貧しい人々から聖人扱いされて慕われるようになく。
しかし妻の容態は少しづつ悪化していき、さらに土薬を処方された患者たちが行方不明になり始める。
そしてある日、ついに公衆の面前で患者の全身が突如として「土くれ」と化して崩れ落ちる(死亡する)という事案が発生。
この話を耳にした正義の陰陽師である主人公は、事件の調査を開始する。
患者たちに処方されていた土薬は、本職の陰陽師である主人公からしてみれば劣悪な紛い物であり、それが原因で患者たちが土くれ化して命を落としていたのである。
続きます。
554本当にあった怖い名無し2021/09/30(木) 00:09:16.93ID:EpITZx4l0
>>553
続き。
主人公は医者の家を訪ね、事情を聞く。
するとそこへ件の謎の陰陽師当人まで訪ねて来たではないか。
謎の陰陽師の正体は、主人公の姉弟子であった。
医者は「もう一度あの時のように妻の命を救ってください」と姉弟子にすがり付いて懇願。
姉弟子は、妻の容態を一目見て「もう死んでるよ」と宣告。
医者「え?」
姉弟子「奥さん、旦那さんのために今までずっと頑張ってたんだね。いじらしい」
姉弟子がそっと触れると、妻の喉は「土くれ」と化して崩れる。
妻の頭部はポロッと外れ、安らかな表情を浮かべながら動かなくなった。
医者は妻の亡骸に突っ伏して泣き崩れる。
その場を後にし、主人公は姉弟子を非難する。
本来なら陰陽道の術(呪い)は門外不出の業であった。
それを姉弟子が破って医者に土薬を教えた結果、今回のように、医者が過ちを冒し、何人もの人が犠牲となってしまったのだ。
しかし姉弟子は悪びれた様子など微塵も無くて、全て割りきっている様子。
その場に居合わせたヒロインが、「あのお医者さんは、これからどうなるのかしら」と心配する。
すると姉弟子がこう答える。
「あの男は、土薬に長時間触れ続けていた。きっと今頃は……」
新たな患者が治療を求めて医者の家へ駆け込む。
しかし、そこに医者の姿は無く、ただ土くれが有るだけだった。