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103: 本当にあった怖い名無し:2008/01/19(土) 00:37:53 ID:9AYRFH+J0
星野之宣「セス・アイボリーの21日」
-私の名はセス・アイボリー、所属は遺伝子工学班。
惑星リンデンに接近中、積んできた実験用種子が突然、成長し始め、
原子炉の隣の加圧船倉を破裂させたのだ。生存者は私ひとり。救難信号が
最寄の中継地点に届くのに、地球時間で18日かかる。救援が来てくれるのは早くてもその三日後だろう。
何かの役に立つようすべてをディスクに記録しておくつもりだ。
これから21日間、私はこの星で生き延びていかねばならない!
-三日目、今日はずっと泣いていた……何てこと!たった二日で私は10年は
老化している!この世界では生物時計の進み方がひどく速いのかも知れない!
二つの太陽から未知の放射線でも出ているのだろうか、本船の事故も、その
影響で種子が異常発育を……ああ、そんなことどうでもいい!21日たつ前に
私は老衰で死んでしまう!
-八日目、私の分身が誕生した!私の遺伝子を受け継ぐ,私自身のクローン!
法律で禁止された行為だとは知っている。でも私にできることは、自殺以外にはこれしかなかったんだ。
ひさしぶりの話し相手に私は狂気して話しかけた。過去のこと、両親、故郷……。
私自身のあらゆることを伝えなければ……!言語、文字、宇宙、地球、それらは
眠っている間に、圧縮学習機にまかせよう。
本当にこれでいいのだろうか?最小限のこと以外、何も伝えない方がこの子の
苦しみを少なく済ませられるのではなかったろうか?でも通りかかった宇宙船が
救難信号を傍受すれば二週間ほどで来てくれるかもしれない……こうするしか、ないんだ。
-十二日目
「私を許しておくれ、哀れな子、本当に可哀相な子……!」
私はひとりぼっちでこの世界に残された。
104: 本当にあった怖い名無し:2008/01/19(土) 00:38:32 ID:9AYRFH+J0
-十六日目、……私はママの言いつけに従って自分の卵細胞のクローン培養を
始めた。十五日が過ぎても救援が来ないときはこうしなければならないのだ。
このことの意味は、私にだって理解できるようになった……。
-十七日目
「泣くんじゃない!圧縮学習でいろんなことを覚えるんだ!私だってそうされたんだ!
泣くんじゃないったら!」
「おまえは助かる!二十一日たてば救援隊が来てお前は生きられる!でも、私は!?」
「私がおまえだったら!ああ、私がお前だったらっ……!」
「ママ、何のために私は生まれてきたのっ!?この子を育てるためだけ!?私には
過去もない、未来もない!ただ何日間か生きるだけの一生なんて……ひどい!」
-二十一日目、 私は惑星リンデンを離れた…………。