後味の悪い話

【後味の悪い話】綺譚倶楽部「夜の口笛」

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712:本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 01:02:46 ID:M8LLaTTm0

「綺譚倶楽部」から「夜の口笛」。
大正時代を舞台に、新聞「綺譚倶楽部」の編集部を中心に
怪奇な事件が起きていくシリーズ。

ある出版社に、読者の投稿原稿が持ち込まれる。青年文士による怪奇小説で、
むかし聞いた言い伝えが現実となって、おびえる主人公を描いたもの。
それは、夜、風の吹き抜けるよう音を聞くたびに、全身に
ヘビが絡みついた様なアザが浮き上がり、苦しむ男の話だった。
昔「夜、口笛を吹くとヘビが来る」と聞かされた諺のとおりに、
そのアザは夜ごとに増えていく。しかも本人にしか見えないらしいという話。

小説は好評なのか、掲載された号の新聞は完売。出版社に挨拶に来た作者の青年は、
美濃部大海[みのべ・ひろみ]と言う育ちの良さそうなおぼっちゃんであった。
しかも、編集者が招かれて大海の家に行ってみると、凄い豪邸。
そこにはふくよかで礼儀正しいが、非常に過保護っぽい母親がいた。
幼少から病弱だった息子を心配しているらしい。大海をよろしくと
にこにこと丁寧に頼まれ、恐縮しまくりの編集者。
気弱げな大海は、困ったような顔で微笑むだけ。

その時、編集者は、部屋に飾ってある幼い少年の写真に気づく。
その左手の五指はただれて、全て癒着していた。何でも大海は赤ん坊の時に
事故に会い、英国まで医師を訪ねて治してもらったという。
去りぎわ編集者は、屋敷から口笛の音が聞こえたような気がして振り返る。
退去しつつ、彼はどうも大海が母親に縛られてる感をぬぐえないのであった。

713:712つづき:2006/04/22(土) 01:03:51 ID:M8LLaTTm0
案の定、そのころ大海は、母親にいろいろと世話を焼かれていた。
小説が載った号の売れ行きが良かったのは、母親が買い占めたせいだったし、
文士になりたいなら、知人の大きな出版社にお願いするという。
自分の実力でやっていきたい大海だったが、母親は、
早く肩書きをしっかりして、良縁をまとめたいとすがるように頼む。

その夜、大海はうなされる。屋敷に口笛の音が響き渡り、
蛇のようなアザが全身を覆っていく。
あの小説は、彼の目に見える真実だったのだ。束縛感に苦しむ大海。
だがその音は、彼の母親にも聞こえていた。「また泣いているわ……」
大海の小説第二作は、前作ほどの迫力はなかったが、編集者は
もっと磨けばモノになると見る。その為にも、母親からの自立を勧める編集者。
だが、彼は優しい母を愛していたし、老いていく姿を見捨てる事ができない。
苦悩し寝付かれない大海。

ふらふらと歩いていた深夜の廷内で、大海は屋根裏に上がっていく母親を見る。
あの、風が吹き抜けるような口笛の音のする屋根裏である。
大海は一度も上がった事がなかった。こっそり後をつけると、
母は暗闇で誰かに話しかけている様子。目をこらすと、それは
縄でがんじがらめに縛られ、天井から吊されたミイラ化した死体であった。
別人のように冷たい目で、母親は、これは夫だと告げる。
自分を捨て、家を出ようとした夫。しかも夫は赤ん坊の大海も
連れて行こうとした。自分の宝である大海を守るため、若い母は
夫を手にかけたのだという。

714:712つづき:2006/04/22(土) 01:04:39 ID:M8LLaTTm0
自分の為にされた事と聞かされ、また母の寂しさを知り、
許そうと思う大海。しかしその時、ミイラの左手の五指に気づく。
それは、焼けただれたように全て癒着していた。写真の少年のように。
「……これは…誰…?」呆然とする大海の首に、背後から縄が巻かれた。
「どうして子供ってこう愚かなのかしら。知らなくても良いことまで
知ろうとして…私の言いつけをちっとも守らない……
こんなに心配しているのに……」

数日後。
「綺譚倶楽部」の編集者は、町でその母親を見かける。
母親はタクシーに乗っていたが、降りて挨拶してきた。
あれから、大海は出版社に現れず、編集者は心配していたのだ。
母親は、根気がないので文士は諦めたらしいと告げる。
ちょっと残念に思いながらも、それも良いか、と思う編集者。
……タクシーに戻る母親。そこには、幼い少年が乗っていた。
身寄りのない子供を引き取ってきたのだ。また。
彼女にははじめから夫などいなかった。気に入った子供を引き取るが、
いくら愛情を注いでも、子供たちはいつか彼女から自立しようとする。
そんな事は許せなかった。でも、今度こそ大丈夫。
彼女は、少年に呼びかける。「良い子に育ってね……大海」

その頃。屋根裏では、相変わらず死体が揺れていた。
縄と死体の隙間を風が通り、口笛のような音を立てる。
今、揺れている身体はふたつ。
蛇が絡むように全身を縄で縛られたミイラと、
同じように吊された、青年文士の変わり果てた姿だった。

715:本当にあった怖い名無し:2006/04/22(土) 01:23:07 ID:yJApM0mj0
>>714
要約うめぇ。
作品として完結してる上手さだ。

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