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182: 本当にあった怖い名無し (スププ Sdfa-0TMp) 2018/05/20(日) 15:36:30.09 ID:sY6aIDA7d
山岸凉子「夜の馬」
主人公Aは病院で危篤状態の男性。
気が付くと、なぜか井戸のような暗く深い場所をゆっくりと降下していた。
不思議に思いながらも、先ほどまでの苦しさが無くなっているので、心地よいと感じるA。
やがて底に到着した。
なんだか薄暗く嫌な感じのする場所だ。
人影のようなものもちらほらと見える。
Aは軍服を着た見知らぬ男Bに声をかけられた。
「Aくん、君は気の毒だなぁ。医学の発展のためにやったことなのに。君やわたしのようなものがいなくて世の中どうやって進歩するというのかねえ。」
わけが分からず戸惑っていると、バイクに乗った若者Cにも声をかけられる。
「あんたの顔、テレビで見たぞ。人を何人も、いや何百人も殺した〇〇だ。」
失礼な!とAは激怒する。Cは笑いながらバイクで走っていった。
しばらくすると遠くから手押し車のようなものを押す人らしきものがやってきた。車に乗れ 乗れとAの心に語りかける。あまりの不気味さにAは強く拒む。
183: 本当にあった怖い名無し (スププ Sdfa-0TMp) 2018/05/20(日) 15:37:05.00 ID:sY6aIDA7d
―ハッと気付くとAは病院のベッドの上。危篤状態から回復したのだ。
あれは夢だったのだろうか。
数日後、病室で医師と雑談中、危篤中に不思議な体験をしなかったかをたずねられる。医師には臨死体験を収集している友人が居るらしく、医師自身もそれに興味がある様子。
「トンネルや井戸のような場所を上へ上へと昇っていくんでしょう。美しい花や蝶が見えるそうですね。」
「あまりの素晴らしさに帰りたくなくなるとみんな言うんですよ。」
自分の見たものと正反対のことを楽しそうに話す医師の言葉に不安を覚えたAは、疲れているからと医師を病室から追い出した。
そして暗闇で会ったBとCをはっと思い出す。
Bは南京大虐殺の責任を問われ処刑された将軍
Cはワイドショーで見た、女絡みの揉め事のすえ刺し殺された暴走族だったのだ。
…もしかするとあれは地獄だったのか
もしあの手押し車に乗っていたら自分は本当にあの世に行っていたかもしれない…
Bの言葉が思い出された。
「何百人も殺した〇〇だ」
違う!あれは私のせいではない!
実はAは薬害エイズを引き起こした関係者。
製薬会社から裏金をもらい、薬の危険性の発表をわざと遅らせていたのだ。
薬の制作自体に自分の責任はないからと、罪を断固として認めていない。
発作がぶり返した。とうとう本当に死ぬときがきたのだ。
ゼェゼェと苦しみながらAは再び井戸にいた。
ふちにつかまっているが、しがみ付いていられるのも時間の問題。
これは幻覚なんだ!覚めろ!叫びながら井戸の底へ落ちてゆく…