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89:チリンの鈴1/2:2007/03/01(木) 10:48:18 ID:5LGKEBSQ0
前前スレだかで、「やさしいライオン」の話題がが書き込まれていた
けど、やなせたかし作品では『チリンの鈴』も後味悪い。
チリンは春に生まれたばかりの子羊。母と幸せな日々を送っていた。
ある日、チリンの住む牧場がオオカミ(ウォー)に襲われ、チリンの母がチリンを庇って殺されてしまう。
なぜ羊ばかりが殺されなければならないのか、何も悪いことはしていないのに。
チリンは強くなりたいと切に願い、母の仇である当のウォーに"弟子入り"しようとする。
「ボクは何もしないで殺されていくなんでいやだ。」
最初は鼻であしらっていたウォーだが、
チリンが意外な根性を見せたことで、弟子入りを認める。
「ついて来るがいい。俺がオオカミの行き方を教えてやる。
わかっているなチリン、この世界はいつも死がつきまとう地獄だ。覚悟はできているな。」
「地獄へ落ちてもかまわない、命だって惜しくない。
ボクはオオカミ よりも強くなって、お前をやっつけてやる!」
チリンは厳しい特訓に耐え、やがて三年の月日がたった。
チリンは凄まじい獣に変貌していた。
牙をもたないチリンは相手を角で突き殺す術を体得し、二匹の獣ははその辺りでは
知らない者のいない凶暴な殺し屋として恐れられていた。
「見事だチリン。お前のその鋭い突きは俺にもかわせぬことがある。」
「これもみんなお前のおかげだ。死んだお母さんの仇をとることだけを考えて生きてきた。
今まで何度も隙をみてお前を殺そうとした。だが、出来なかった。
今ではお前を僕のお父さんとさえ思う。僕もあなたと一緒に地獄へ行こうと決めたのだ。」
90:チリンの鈴2/2:2007/03/01(木) 10:48:52 ID:5LGKEBSQ0
ある日、ウォーはチリンの生まれ育った牧場を襲うことを提案.
チリンも了承し、まずチリンが牧場へと向かう。
羊小屋の戸を蹴破って進入するチリン。およそ羊とは思えぬ悪相となっていたチリンに羊たちは怯える。
足がすくんで動けなくなった子羊をとびだしてきた母羊が身を呈して庇った。
恐ろしさに震えながらもひたすら子供を守ろうとする母羊の姿を目の当たりにして、
チリンの中で何かが動いた。踵をかえして小屋の外にでたチリンの前にウォーがいた。
「やはりお前には無理だったか。では、オレが羊の殺し方の手本を見せてやる。」
「やめろー!!」走り出すウォーを遮るチリン。
「血迷ったか、チリン。」
「僕は羊だー!!お母さんの仇だー!」
死闘の末、チリンの角がウォーの腹部に突き刺さる。
「…チリン、よくやった。こうなるのが一匹オオカミの運命…。いつかこんな風に野垂れ死にすると思っていた。俺をやったのがお前で…俺は喜んで…」
と言い残し、ウォーは絶命する。
羊小屋の羊たちは二匹の戦いを固唾を呑んで見守っていた。
だが、チリンが羊小屋の方をむくと怯えてさっと身を隠してしまう。
チリンの首には子供のころのまま鈴がついていたが、誰もチリンが昔の仲間だとはわからなかったのだ。
そこにいたのは、オオカミでも羊でもない、得体の知れないぞっとする生き物だった。
「もう羊にもオオカミにもなれない…。」
チリンは独り山へと戻っていった。
「ウォー、お前は身をもって教えてくれた。オオカミの生き方を。強いものの最後を。許してくれウォー。俺はオオカミにはなれなかった。それなのにお前がいなくなって、僕はいったいどこへ行けばいいのだ。」
その後、激しい吹雪の夜、かすかに鈴の音がどこからか聞こえてくるという。
だが、チリンの姿を見た者はいない。
93:本当にあった怖い名無し:2007/03/01(木) 11:23:01 ID:2tlT3m9f0
最初から「狼=悪者」みたいな図式が出来上がってる絵本に対するアンチテーゼってことやね。
狼だって食う為に殺してるんだし。セツナス。
130:本当にあった怖い名無し:2007/03/01(木) 19:57:17 ID:yJdySV4g0
>>93
アンパンマン自体、当初はヒーロー物へのアンチテーゼだったらしいね。
おなかを空かせた人に自分の顔を食べさせるしか能のないヒーロー、ってことで。
アニメ化でだいぶテイストが変わってしまったように思うのだが、
やなせ氏本人は後味悪く思ったりしなかったのだろうか。
133:本当にあった怖い名無し:2007/03/01(木) 20:21:24 ID:bIixJBrB0
>>130
子供の頃アンパンマンの絵本見たけど、アニメとは雰囲気が違ってたよ。
どことなく暗くてシュールな感じだったと思う。子供心にショック受けた。