後味の悪い話

【後味の悪い話】やなせたかしの絵本「キラキラ」

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920: 1/2 2020/06/06(土) 00:12:21.83ID:MthnjrUJ0
やなせたかしの絵本「キラキラ」

「オビエ村」では「近くにある高い山に近づいてはならない」という掟が守られていた。
その山には「キラキラ」と呼ばれる全身が毛深く、一つ目の不気味で巨大な怪物が潜んでいたからである。
その恐ろしさは、ひと目見た者が物も言えなくなるほどであるとされるため、山に近づこうとする者は一人もいなかった。

「キラキラがなんだ。いつか自分がこの棒で叩き殺してやる!」
そう張り切るのは、オビエに住む少年・キリ。彼は棒術に長けるが、暴れ者で無鉄砲な性格だった。そんなキリは、ある夜突然村から消息を絶ってしまう。
「おそらくキラキラの山へ向かったのだろう」
そう確信したキリの兄・キルは、帰らない弟を救うべく、得意の弓を片手に誰も近付くことのなかったあの山へ単身救出へ向かった。

何日か暗い森を歩き続け、目も眩むような高い断崖を制覇したキル。
ようやく山頂に到達した彼の目に飛び込んだのは、あの恐ろしい怪物・キラキラが、気を失って倒れているキリを今まさに襲いかかろうとしていた光景だった。
弟の危機を瞬時に察したキルは一時パニックになるが、やがて心を鎮め、弟に矢が当たらない事を神に祈りつつ、静かに弓を引いた。

キルの祈りを込めた一矢は見事にキラキラの胸部を射た。間もなく怪物の凄まじい悲鳴が山々に響き渡る。

921: 2/2 2020/06/06(土) 00:20:46.79ID:MthnjrUJ0
その時、倒れていたキリが突然起き出し、キルに殴りかかる。
「兄さんのばか!なぜキラキラを殺した!」
突然怒り狂うキリの姿とその言葉に戸惑うキル。

討伐の途中で毒ヘビに咬まれ死線を彷徨っていたキリを、キラキラが助けてくれていたのだ。キラキラは見た目こそ人間には恐ろしいが、生まれた星や姿形の異なる存在に対しても分け隔てなく慈しむことのできる心を持った宇宙人だったのである。

「許してください。ぼくにはあなたがおばけのように見えたから、そうとも知らずに…」
全てを知ったキルは、弓矢を捨て涙ながらにキラキラに謝ることしかできなかった。

胸を射抜かれたキラキラは、息も絶え絶えにこう返した。
「わたしの生まれた星では、みんなわたしと同じ形です」
「わたしには、あなたたちがおばけに見えます。わたしは恐ろしくて、ずっと山に隠れていました」
「もっと早く知り合えば、きっと仲良しになれたのに。友達になって遊べたのに―――」
そう言いかけ、二度と目を覚ますことはなかった。

キラキラを埋葬し墓を立てた兄弟は、そのまま山を後にした。
オビエまでの帰路の途中、2人はふと後ろを振り返る。キルとキリには、昨日まで恐ろしく見えていたはずの山が、やさしくどこかなつかしい山に見えるのだった。

児童向けにはよくある「悪そうなヤツが実はいいヤツだった」的なお話なのだが、
「お互いを怪物として見ていた」という皮肉な結末や、やなせ特有の寂しげな作風も相まって幼少期の頃に読んで以来印象に残っているお話

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