※ここからは2024/04/16に追加したものです。
ノツゴというのをご存知ですか?
263 :名無し百物語:2023/06/22(木) 21:17:01.34 ID:77hPniV3.net
石じじいの話です。
みなさんは、ノツゴというのをご存知ですか?
水木しげるの妖怪本にも出てきますね。
これは、じじいの故郷によく出る妖怪です。
同じ村の出身の私も、子供の頃、山を歩いている時にこれに憑かれたことがあります。
憑かれると手足がしびれて動けなくなります。脚がもつれたりします。
それに強い空腹感をおぼえます。
漁村にも出ることがあり、そのときは、船のろがこげなくなるそうです。
じじいも、「山でノツゴに憑かれて往生したわい」と話してくれたことがあります。
ノツゴは、ボウコの一種で、堕胎の子供の霊だとか;栄養失調で死んだ子供
の霊だとか;死んだ牛馬の霊が祟るのだとか、いろいろな解釈があります。
264 :名無し百物語:2023/06/22(木) 21:18:07.03 ID:77hPniV3.net
土佐では、それは水に関連した神であり、また農業(田畑)を支配する神だとも言われています。
田の神であり、そこで働く人や牛馬の守護神であるとも。
牛馬は田畑での主要な労働力ですからね。
この神は、神社では祀られず、屋敷神のような小さな祠で土居屋敷の敷地内で祀られました。
土居中という地名も、その地方にはあります。御土居の中という意味ですね。
ノツゴに憑かれて動けなくなったときは、青草を手折って供えるとか、草履の乳をつかうとか。
葬儀の時に、棺桶のなかに草履も一緒に入れて埋葬するという風習もありました。
それと関係するのかもしれません。
また、道路の端にある石地蔵や小祠、道祖神に通行人が芝を折ってそなえて通行の安全を祈願するという風習もありますが、それと関係するのかもしれません。
また、田の神は、春の亥の子に降りてきて、十月の亥の日に、仕事を終えて帰っていくという信仰であるイノコ信仰と関連しているのかもしれません。
十月の亥の日のイノコは、私達の田舎でも行われていました。
このようなことをじじいに教わりました。
じじいの地元の犬神憑き
265 :名無し百物語:2023/06/25(日) 15:19:14.27 ID:9wMkLVGJ.net
石じじいの話です。
以前、犬神憑きの家族の話をしました。
じじいの地元でも、犬神憑きはありました。
犬神憑きは昔からあったようで、じじいの故郷に近い、長宗我部氏の土佐でも弾圧が行われたそうです。
犬神を使うと思われる人々を探しだして処刑したのだとか。
犬神憑きなど、その実態も明確ではなく実際には害はなかったにもかかわらず、です。
河原や、時には田んぼでも首切りが行われたそうです。
今でも、「くびきり田」、「きりはら」という地名があります。
なぜ、犬神憑きは忌み嫌われたのでしょうか?
支配者たちが、大陸からの蠱毒の話に影響を受けて犬神憑き筋(ときめつけられている人々)を外法使いであると考えたのかもしれません。
人蠱を使うとか。
支配者である武士たちも、反逆行為(につながる行動)には神経質で弾圧に余念がなかったのでしょう。
それにしても、各部落にみられる犬神憑き筋の数は多すぎますね。
大昔には、半数近くがその筋であるという集落があったそうです。
現在では、そのような風俗(?)はまったく存在しません。
農薬自殺
271 :名無し百物語:2023/07/15(土) 14:04:14.63 ID:sYiQW7xH.net
石じじいの話です。
以前、農村での農薬自殺についての話を書きました。
似たような話です。
ある地域で自殺が連鎖したことがあったそうです。
この連鎖は長引きました。
ある農家の男性が自殺しました。縊死でした。
すると、しばらくたって近くの家の人が自殺した。これも縊死でした。
さらに、しばらくたって近くの家の人が自殺した。これも縊死でした。
さらに、しばらくたって近くの家の人が自殺した。これも縊死でした。
四人目です。
一つの部落から四人とは、これは異常な事態であると人々は感じたのか、このような噂が立ちました。
「ぶら下がっている人の顔が向いている方向の家から、次の自殺者が出る。」
これは、偶然ではないか?
そのような噂(解釈?)を信じる人はほとんどいませんでした。
信じない人の意見:
顔の向いている方向を真っ直ぐに伸ばしていくと、どうしてもどこかの家に行き当たるだろう。
そもそも、その死体が向いていた「本当の」方向をどうやって知るのか?
発見者が、その方向をおぼえているかどうかもわからない。
発見して騒いでいるときに、死体が回転するのではないか?
発見者が、その方向について隠したり、嘘を言ったりするのではないか?
道理です。
272 :名無し百物語:2023/07/15(土) 14:05:22.82 ID:sYiQW7xH.net
しかし、四番目が向いていた方向の家から次の自殺者が出ました。縊死です。
この五番目の自殺者は、その部落に隣接した別の部落からでたのです。
この五人の自殺の原因は親族間の不和や借金など、さまざまでした。
共通性はない。
まあ、本当の原因はわからないのですが。
縊首する場所もさまざまでした。
自宅の座敷内
納屋の梁
庭の樹木
山の樹木
脱穀機、どういうことだろう?
六人目が五番目と同じ部落から。縊死。
地元の有力者;むかし、庄屋だったという、が近くのお寺に「お祓い」を依頼したのですが、住職は断りました。
「それは偶然じゃろう。そがいないらんこと気にやんじょると、お前も死ぬぞ。」と住職。
その有力者は、納得せず、やや遠くの町の神主に依頼しました。
神主は、お望み通りのお祓いをしました。稼ぐチャンスです。
しばらくして、その有力者が自宅の鴨居(欄間)からぶら下がりました。
投機、株に失敗したから、ということでした。
彼の死体は、その神主の家の方向を向いていたそうです。
ここで、この自殺連鎖の話は途切れています。
私が、中学生になって、じじいから聞いた話です。
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野犬との会話
274 :名無し百物語:2023/07/28(金) 19:38:23.11 ID:lktc+JGj.net
石じじいの話です。
じじいが朝鮮にいたときの話です。
山を歩いていると、一匹の犬がどこからともなくあらわれて距離をあけてついてきたそうです。
野犬の群れか?と思い緊張して身構えましたが他に犬はいませんでした。
こちらが立ち止まると、犬も止まる。
あまり気にしてもしかたがないので、歩きつづけましたが犬はついてきます。
いっしょに歩いていたらだんだん恐怖心は失せていったそうです。
腹が空いたので、ひとやすみして昼食にすることにしました。
朝、宿屋で弁当をたのでおいたのですが、宿の飯炊きが間違って二人分どころか三人分ほどの量を作っていました。
必要な分だけ持って、あとはおいておこうとしたのですが、「なにかあるかもしれないし、邪魔にはならないから」と彼女が言うので、それもそうかと思い携行していたのです。
しかし、やはり重い。
この犬にも、少し分けてやろうと思いました。
飯を少し投げてやると、犬は少し逃げる。
見ていると警戒して食べないので、じじいは無視して自分の弁当を食べ始めました。
すると、犬は、おそるおそる近づいてきて、それを食べ始めたそうです。
じじいは、また少し投げてやりました。さっきより近いところに。
犬は、おそるおそるよってきて食べました。
それを繰り返していると、犬も警戒心をといたのか、かなり近くまでよってきたそうです。
そして、そこへちょこんと座りました。
そこへ飯を投げてやっても、もう逃げない。美味しそうにそれを食べました。
犬は腹が空いていたのか、たくさん食べたそうです。
じじいは、なにげなく犬に話しかけたそうです。
「犬よ、おまえは一人か?」朝鮮語で。
「アア」犬がこたえました。朝鮮語で。
275 :名無し百物語:2023/07/28(金) 19:39:12.02 ID:lktc+JGj.net
>>274
[つづき]
じじいは驚きましたが、ここでとり乱すと襲われるかもしれない、
犬のなき声がたまたま人の声のように聞こえたのかもしれない、と考え、続けました。
「腹がすいとったんか?」
「アア」
「人の言葉がわかるんか?」
「ワカル」
これは、明らかに人の言葉です
「どこでなろうた?」
犬答えず
「人にかわれとるんか?」
「イヤ」
「何歳ぞ?」
「ゴ」
「なかまはおらんのか?」
「オル」
「どこに?」
犬答えず
「こどもはおるんか?」
「オラン」
「もっと食うか?」
「イヤ」
「この山にすんどるんやな?」
犬答えず
「さびしゅうないか?」
「イヤ」
「そうか、親はおるんか?」
犬答えず
犬は、うずくまって眠そうにしはじめました。
じじいは、もっと会話をしてみたい気もしましたが、今日中に山を越えなければならないので先を急ぐことにしました。
「もうすぐ、冬になるけん、からだだいじにせいや。これで行くけんのう。」
犬はゆっくりと身を起こし言いました。
「あなたもお体をおだいじに。ここからの道は、峠を越えたところに岩場があってあぶないから気をつけなさい。
たべものをくださり、ありがとうございます。またここを通ることがあったら、この場所で『ハヤン』とお呼びください。きっとまいります。」
じじいはあっけにとられました。
それは、流暢で丁寧な朝鮮語だったのです。
じじいは、非常に興味を持ちましたが、このまま立ち去ることにしました。
深い関係を持たないほうが良いだろうと思ったからです。
少し歩いて、うしろを振り向くと、犬は山の斜面をのぼっていきます。
犬は、一度こちらを振り向きましたが、すぐに林の中に消えていきました。
朝鮮の秋の空は真っ青で、山は紅葉で黄金色に輝いていたそうです。
276 :名無し百物語:2023/07/29(土) 09:22:31.85 ID:2NgBAySP.net
石じじいの話面白い
変なリアリティがある
ざっと読んだけど縊死の話がお気に入り
山の中で金星人にあった
277 :名無し百物語:2023/07/30(日) 21:25:38.74 ID:8tblPtEt.net
石じじいの話です。
山の中で金星人にあったそうです。
ソ連のベネラ1号が金星に行く前の時代たったとか。
石探しの山中で、道端の石の上に座り休んでいると、山の上から、白いワイシャツで白いズボン白い長くつを履いた男性がおりてきました。
彼は、じじいを見つけると、いきなり「私は金星人だ。」と言ったそうです。
じじいは、理解できなかったので、聞き返しました。
彼は、今度はゆっくりと言いました。「私は金星から来た金星人だ。」
じじいは、アダムスキーを知らなかったので当惑しました。
まあ、知っていても当惑したでしょうけど。
その人物は、肌の色の白い黒髪の普通の日本人の男性だったそうです。
大きな荷物は持っていませんでしたが、腰にサーベルのようなものを下げていたそうです。
また、ピカピカ光る、反射する?縦横30cmほどの板をもっていたとも。
今の知識だと、タブレットPCみたいです。
じじいは、その「サーベル」で斬りかかられたらどうがいしょ!と心配したそうです。
その人物は、じじいの横に腰をおろして、勝手にしゃべりはじめました。
「我々金星人は、地球への侵攻計画をたてている。」と彼。
{おいおい!とじじいの心の中}
278 :名無し百物語:2023/07/30(日) 21:27:07.67 ID:8tblPtEt.net
「我々は、百年以上にわたって、その準備をしてきた。強力な兵器も十分にある。広島の何万倍も威力があるのだ。」
{ほうほう。}
「我々の侵攻はもうすぐ始まるのだ。覚悟しろよ。」
{そりゃえらいこっちゃ!}
『それはがいなことやが、あんたはなにしに来とるん?』とじじい。
ちょっと話に慣れてきた。
「私は地球の偵察に来ているのだ」
『どのくらいおるん?』
「もう、50年にもなるかな。」
『地球のことはようわかったかな?』
「わかった!」
『たとえば?』
「地球の大部分は、デュナイトという物質でできているのだ。知っていたか?」
{ほうほう。たしかにそういう石は地下にある。}
じじいは、彼といろいろと話しをしました。
さまざまなことを詳しく知っており、特に、自然科学についての知識が豊富で、じじいには理解できない話も多かったそうです。
『いつまで地球におりなさるんか?』
「来週には金星に帰る。車が迎えに来るのだ。」
{車?くるま?}
「おまえも一緒に来るか?」
『いや、わし、まだ結婚しとらんけん・・・』
理由になっていない。
「そうか。だが金星人のおなごはいいぞ!お前もすぐに金星人だ!」
じじいは、相手を刺激しないようにやんわりと話をきりあげました。
「いやいや、なかなか有意義な会話だったな。また会おう。」
そういうと、その金星人は、悠然と山道を下っていったそうです。
「世の中にはいろんなもんがおるわいね。あのひとは金星に無事に帰れたんかのう。奥さんも子供もおるゆうとったが。」
じじいは、空を見上げて言いました。
279 :名無し百物語:2023/07/31(月) 21:51:11.76 ID:4MP3YG1l.net
>>248
急にSFになったぞどうした
280 :名無し百物語:2023/08/01(火) 22:11:05.50 ID:9rNIxFaX.net
>>278
金星人の話、笑った
これはSFじゃないだろう
金星人が「おなご」ってw
北海道の石拾いで強い光
281 :名無し百物語:2023/08/02(水) 20:03:58.35 ID:ye9TgW2T.net
石じじいの話です。
北海道へ石探しに行ったときの話だそうです。
じじいは、北海道の友人と道北の方へ足をのばしました。
そこは、山奥で、アイヌ語起源の名前の山の頂の近くに「氷の洞窟」があったそうです。
それは、夏でも山頂付近に雪;もう氷になっている;が残っていて、それを貫いて小沢が流れていて、
それが「氷の洞窟」と呼ばれていた、と。
そこに向かって沢をのぼり、滝をまくために谷の斜面をのぼっていると向かいの斜面にヒグマがいたそうです。
さいわい、クマとは距離があり、こちらに気づいているらしく、時々立ち止まっては振り向きながら遠ざかっていました。
じじいたちが緊張してクマを見張っていると、突然、強い光で視界が真っ白になって、爆音がしたそうです。
そして爆風が襲ってきて、じじいたちは吹き倒されました。
それでじじいは気を失っていたのですが、友人に助け起こされました。
まわりの樹木の枝のほとんどが折れて地面に積み上がるように落ちていました。
対岸をみると、広い範囲で森の樹木が倒れていて、オレンジ色の霧?がたちこめていたそうです。
まわりの空気は熱く、金属の臭いがしていました。
もうヒグマの姿はありませんでした。
このあと、30分ほどして霧は消えたそうですが、しばらくは「ズシン、ズシン」という大きな音が地下から?響いていたそうです。
雷が落ちたのだろうとじじいたちは考えたそうですが、それが起きる前も後も、雷鳴もなく雷雲も見えなかったのは不思議でした。
また「あの雷」が落ちるかもしれないということで、しばらく動かずにいて、その後谷をくだりました。
あれは本当に雷だったのか?と友人と話し合ったそうです。
しかし、雷以外に、あの現象を説明できない。
山麓の村の人々もその音を聞いていて、雷だろうと思っていたそうです。
じじいたちは、後日、同じ山にのぼって化石を採集しました。
いま考えると微小隕石の落下かもしれません。
呪われた土地
283 :名無し百物語:2023/08/15(火) 20:51:41.76 ID:1wlFBSvp.net
石じじいの話です。
「呪われた土地」があったそうです。
そこは、田畑ではなく、草地でした。
子供がそこで遊んでいて怪我をすると、傷口が膿んで重症化したそうです。
破傷風菌が根付いていたのかもしれません。
そこは、川の近くで、田んぼにすると水を引くにも便利でしたが、空き地のままでした。
そのような事実が昔から知られていたからかもしれません。
その土地のまわりは田んぼでしたが、その田んぼの収穫量は、他よりも多かったそうです。
その地域では、農地の改良をするために、その「呪われた土地」を含めて、まわりの土地と一緒に田んぼとして再編成することになりました。
その噂を知っている人たちからは、不安視されましたが反対はできません。
まあ、呪いなど本気で信じている者はいなかったのでしょう。
改良作業のため、その土地が掘り返されたとき、その地下からは変わったものは何も出ませんでした。
ただ、その土地に隣接する場所から昔の水路のような石組みが出土したそうです。
その流路と思われる部分には、周辺の田んぼの粘土とは異なる粗い砂礫が堆積していたので、その構造物は水路だろうと考えられたのです。
その水路は、その「呪われた土地」から伸びていたと考えられました。
あたりの傾斜や砂礫の分布から、その土地から水は流れ出て、水路を通っていた、と推定されたのです。
いちおう教育委員会が調査したそうですが、それは古いものではあるが用途や構築年代は不明だ、ということでした。
その「呪われた土地」は、非常に収穫量が多い田んぼになったそうです。
その田んぼは今でもあります。
漁船に上がってきた男
285 :名無し百物語:2023/08/26(土) 21:10:17.33 ID:NN1naumk.net
石じじいの話です。
聞き書きを始めた初期の話なので内容に不明な点が多いのですが、おそらく、このような話だったのでしょう。
漁村の話です。
漁師が船のろを漕いでいたら、いきなり男が水中から船のへりにかきついてきたそうです。
人が泳いで近づいてくる気配もなかったで漁師は驚きましたが、気を取りなおしてその男を助けあげようとしました。
すると、その男は、「オレに触ると、お前は海に引き込まれるぞ。」と言い、さらに「このまま少しやすませてくれ」と。
漁師は、こんな陸から遠くにどこから泳いできたのか?と尋ねました。
「下から来た」と男性は答えました。
男の言うことがよくわからない。
これからどこに行くのか?とたずねると、
「西へ」と、男。
西は豊後水道だ、陸地はない。
もっとも、ここからは、もっとも近い陸地にも泳ぎ着けないだろう。
漁師は、「水を飲むか?」とたずねました。
「おお、少しくれ」と男は言って少しだけ飲んだそうです。
「海の上では水はだいじだ、ありがとう。」と男。
漁師は、こわごわと「どこにすんでおられる?」たずねました。
「海の底だ。」と男。
漁師は当惑しました。
男は、上半身は、はだかで、肩から背中にかけて「入れ墨」のようなものがあったそうです。
しばらくすると、「それではもういくぞ。水がうまかった。海の下は地獄だ、お前も気をつけろよ。」
と男は言い、両手を船べりからはなして、そのまま水面下に沈みました。
漁師は、慌てて覗き込みましたが、男は両腕を広げて海の闇に向かって沈んでいったそうです。
漁師は、港に帰りながら考えました。あれは何だったのだろう?人魚か?なぜ、彼に触ったら海に引き込まれるのだろう?
それを、なぜ自分に注意したのだろう?
港で、この話をしましたが誰もそのようなことを経験したことも、話を聞いたこともなかったそうです。
しかし、別の機会に、対岸の県の漁師から、背中に入れ墨をした男の死体が、たまに浜に打ち上がることがある、という話を聞いたそうです。
その死体が具体的にどのような特徴を持っていたかについては、聞き取りノートには書かれていませんでした。
今なら、ヤクザが殺されて海に流されたのか?とも思われますが。
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地獄を撮影した写真
324 :名無し百物語:2023/09/10(日) 20:07:09.69 ID:BMqTB8ZK.net
石じじいの話です。
地獄を撮影した写真があったそうです。
それは、キャビネ判で白黒でした。
その所有者は、年配の独身女性でした。
その由来について、「代々伝わってきたものだ」とか「ある人から譲り受けた」とか、彼女の証言は一貫しませんでした。
その由来を隠しているようでした。
お願いすると、それを見せてくれました。
このての話のお決まりのパターンとして、「その写真を見ると不幸になる」というのがありますが、「必ずしも」そうではない。
しかし、写真を見て発狂してしまう人がいたそうです。
逆に、長年患っていた病気が快癒した人もいたと。
なにも起きない人もいた。
どのようなことをすれば、どのような結果をもたらすのかという因果関係が全く不明で、それを見ることはリスクの高い行為でした。
じじいは、それを見せてもらうことにしました。
「わしは、家族もないし、生きとってもろくな死に方はできんけん、見ても後悔せんで。」
じじい、刹那的です。
その写真は古いもので、かなり黄ばんでいたそうです。
しかも、複数枚ありました。
それは:ベタ曇りの空がひろがる草原の写真;石積みの城壁のような高さの低い構築物とその手前にはえた一本の大樹;砂利道に横たわる犬の姿;たくさんの黒い人影が歩く雪原の遠景;などだったそうです。
他にも数枚あったそうです。
じじいはそれを見た夜、死んだ母親が食事を食べさせてくれる夢をみました。
それ以外には、なにも起きなかったそうです。
「よう言われとるような地獄の光景の写真は一枚もなかったわい。」と、じじい
「みんな、死んだら地獄に行くんやから、今から地獄の写真みんでもええやろう」と、私
「はは(笑)、うまいことゆうのう、ぼく。まあ、見てから行くか、行ってから見るか、ちゅうことやね。」
この会話はよく覚えています。
念写ができる人がいた
325 :名無し百物語:2023/09/10(日) 20:15:52.43 ID:BMqTB8ZK.net
石じじいの話です。
みなさんは、念写というものをご存知ですね。
念写は、光をあてることなく思念?でフィルムを感光させる行為で、サイコキネシス(PK)の一種だそうです。
念写ができる人がいたそうです。
その人の性別や年齢は不明です。聞き取りメモにありませんでした。
その人は、フィルムに「幾何学模様」や「文字」を念写できたそうです。
念写される文字は、すべてキリル文字だったそうです。じじいはロシア語がほんの少しできたので、それがキリル文字だとわかったのです。
Д、Ж、Щ、Юなどの文字だったとか。
他人から言われたものや文字を念写するということはできなかったようです。あるいは、できたのかもしれませんが、メモにはありません。
その念写の方法は:
その人は正座して、フィルムを両手に包み込むようにして持ち、額に近づけて「念を込める」のだそうです。呪文のようなものを唱えることなく終始無言でした。
両手に包み込まないといけないので、フィルムの大きさは限られていたそうです。
念写する場所はどこでもよく、時刻もいつでも良い。
人が同席してもかまわない。
同席している人のなかに、「その人の念写に疑念を持つ人」がいてもかまわない:と言っていたそうです。
よく、「わたしの能力に疑問を持つ人が近くにいると、『超能力行為』が成功しない」という言い訳がよくありますね。
念写に要した時間はメモにはありません。
小さいフィルムには、モノの全体が小さく念写されました。つまり、そのフィルム、イコール念写先のサイズにおさまるようにモノの全体像が念写されたのです。
じじいが同席して、ある実験を行ったそうです。
それは、パトローネ式の35mmフィルムを金属缶に入れたまま、そのフィルムに念写するというものでした。
その人は、その念写を成功させたそうです。
キリル文字のいくつかが、フィルムの10コマ目に念写されていました。
これはすごい!ということでした。
フィルムは光を当てると、あたった部分が全部感光してしまうので、何重にも巻いてあるフィルムの一コマのみを感光させるのは困難だからです。
光やX線を利用したトリックではないということでしょう。
その人は、フィルムだけではなく紙にも念写できたそうです。像を結ぶ「キャンバス」として感光剤を必要としない。
さまざまな種類の紙を、巻いたり折りたたんだりして、フィルムの場合と同じようにして念じると、その紙の一部に、焦げたような色の文字や模様が浮き出たのです。
その後、その人がどうなったかは、ノートに書かれていません。
別の聞き取りノートに、「念力能力を持つ人が行方不明になった」というメモがありますから、それがこの人だったのかもしれません。
山奥で大声がひびいた
376 :名無し百物語:2023/09/21(木) 19:43:01.30 ID:J32VV0q3.net
石じじいの話です。
山奥で大声がひびいたそうです。
それは耳をつんざくような大音量でした。
声は甲高く、子供のもののようでもあり女性のもののようでもありました。
それは、人の心情の吐露だったそうです。
「私は、祖父を裏切ったのであります。もう、十分に懺悔をしましたが、まだ許されません。ここから何年、続くのでしょうか?明日の光は今日の闇から生まれるのでしょうか?首までつかった黒い池から、夜のまわりで歌う・・・。」
という意味不明な話がえんえんと続きました。
もっと長く独白はつづいたそうですが、私の聞き書きには記録されていません。
その大音量の独白をずっと聞かされるじじいは気分が悪くなりました。耳をふさいでも頭のなかに響くほどの音量だったのです。
走って逃げようとしましたが、気がつくと脚がもつれてうまく歩けない。
「XX(差別語)でも、決心すれば、あしたの苦しみに耐えるという・・・。」
聞き取りノートの別ページに内容が書き残されていました。
大音量で話された内容はもっとあるのですが、不適切ものも多いので、ここでは書きません。
じじいが苦しんでいると、急にその独白はやみ強烈な静寂がやってきました。
その静寂によって、じじいは激しいめまいに襲われたそうです。
どこかに、地域の有線放送(役場からの通達用)のためのスピーカーがあったのかとも思ったそうですが、こんな山奥で鳴らしても麓には聞こえない。
下山したところにある村でたずねても、そのような施設はない:とのことでした。
霊界レンズ
377 :名無し百物語:2023/09/21(木) 19:57:37.83 ID:J32VV0q3.net
石じじいの話です。
話の聞き取り末期のメモです。詳しく書き残していました。
「霊界レンズ」があったそうです。
それは、霊界の様子を見せるものでした。
そのレンズは、もともとドイツのUボートの潜望鏡のレンズの一部だったとか。
戦争中の技術移転のために輸入されたが敗戦のために廃棄されたということでした。
そのときにレンズの一部のみが、たまたま残ったのだと。
カールツァイス製で二枚のレンズが組み合わされていて、レンズの表面は青緑色だったそうです。
このレンズを使って点光源の像を白い紙の上に結ばせると、その結像部の周辺にぼんやりと霊界が写ったのです。
結像した光源の周辺に、ぼんやりと山の風景や人々が動く様子が映し出されたのです。動画ですね。
太陽を光源として使う場合には、結像部で紙が燃えてしまいます。
そのため、ガラス板にろうそくでススをつけて、それを減光フィルターがわりにして光を弱めて使ったそうです。
光源は、満月の光でもよかったとか。
白い紙に結像した太陽や月のまわりに、ぼんやりと写る人々が動き回る様子は、たしかに霊界のような映像だったそうです
このレンズを使って写真を撮影したら霊界が写るのでは?と人々は考えました。
焦点距離が長かったので、これでは不便だということで他のレンズを組み合わせて暗箱のようなカメラを自作しました。
それで月や太陽などを撮影してみると・・・。
写った点光源のまわりに、なにかぼんやりしたものが写っているようないないような。
印画紙に焼き付けると画像がつぶれて、よくわからなくなるので、直接虫眼鏡でフィルムを見て確認しました。
そこには、人の顔に見えるようなものもたくさん写っていたそうです。
普通の風景を撮影しても、ぼやけた風景が写るだけで霊界は写らなかったということです。
ロシア人と知り合った
385 :名無し百物語:2023/09/28(木) 20:58:46.91 ID:x+eccCFp.net
石じじいの話です。
石じじいは朝鮮に住んでいた時にロシア人と知り合いました。以前のお話でも、その人物のことが出てきたと思います。
当時、そのロシア人は朝鮮と満州で広く商売をしていました。
彼は、ロシア帝政時代のオデッサで生まれて、コーカサス、中央アジア、シベリアと流れ歩き、モンゴル・満州をへて朝鮮に流れ着いたと話していたそうです。
商売に成功していて富裕であり非常に理知的でした。
大学で教育を受けたわけではなかったようですが、軍隊にいたことがあったということでした。
彼は、朝鮮語をよく話したので、いろいろな話を聞けました。また、何人かのロシア人を丁稚として使っていたので、彼らからも興味深い話が聞けたそうです。
彼は、フランス語に堪能で英語もできたようです。
これは、じじいにはわからなかったのですが、知り合いの日本人の医科学生がそう教えてくれたそうです。その医科学生は、そのロシア人からドイツ語やフランス語を学んでいたということです。
そのロシア人は、ゆくゆくは米国へ移住するつもりだ、と話していたそうです。
彼や他のロシア人から聞いた話を、じじいは私に話してくれました。
それらのうち、いくつかを紹介しましょう。
ロシア人から聞いた話
386 :名無し百物語:2023/09/28(木) 20:59:20.21 ID:x+eccCFp.net
石じじいの話です。
朝鮮にいた時に知り合ったロシア人から聞いた話だそうです。
1. 叫び声をあげるトンネルがあったそうです。場所は不明です。
石灰岩の山をくり抜いたトンネルがありました。鉄道も通っている大きなものでした。
そこを通ると、女性の叫び声が聞こえたそうです。
大きな叫び声がトンネル内に響き渡るのです。
列車にのって通過しても歩いて通っても聞こえるのです。
歩いて通る現地の人たちは非常に恐れていました。
そのトンネルは近くの町への近道だったので、利用する人は多かったのです。
現地の人が言うには:
トンネルの近くの家で火事になり、火だるまになった少女がここまで逃げてきてトンネル内で絶命した。
その時から、叫び声が聞こえるようになったのだそうです。
少女の家族は火事で全員死んで、村の墓地に埋葬されていました。
2. コーカサス地方のカルスト地域にできた洞窟の内部に死体が詰まっていたことがあったそうです。
数キロにもわたる深く長い洞窟でしたが、その中に死体がぎっしりとつまっていました。
その洞窟の入り口から数十メートルのところに死体がたくさん積み上がっていたのを現地の人たちが見つけて、この現象が知られるようになりました。
死体は、老若男女のものであり、さまざまな時代の服を着ていました。その衣装や顔貌から民族も多様だと考えられました。
地元の人々と軍隊が死体を運び出したのですが、どんどん出てくる。
洞窟の深い部分になるほど古い状態の死体があったそうです。
洞窟内は冷たく、暗く、アルカリ性の状態だったので死体の保存状態も悪くはありませんでした。白骨化しているものもありましたが、脂漏化しているものも多かった。
現地や周辺の地域では、それほど多くの行方不明事件もなく、その死体の人々を知っている人もいませんでした。
所持品は、あるにはありましたが、銀の十字架や拳銃などで、身元を明らかにするものではありませんでした。
あまり捜査もされないで死体は近くの森に埋葬され、洞窟の入り口はベトンで埋められたそうです。
注:以前、朝鮮の海岸の干潟で人の骨がたくさん散らばっていた、という話がありました。似た現象です。
387 :名無し百物語:2023/09/28(木) 21:00:12.59 ID:x+eccCFp.net
ロジア人から聞いた話のつづき。
起こった場所は不明です。
3.死後、死体が急速に変化することがあったそうです。
見ている間に死体が変化するのです。
死後硬直のような現象ではなく、かなり目立つ変化でした。
まず、皮膚が変色する。灰色がかってくる。
芳香を発し始める。心地よい香りであり腐敗臭ではない。
身長が伸びることがある。
男女の性別がわからないような顔つき、体つきになる。
筋肉が発達しはじめる。
痩せるということはない。
このままでは死体が動き出すのではないかと不安になって埋葬を急ぎ、変化の最後まで見届ける人はいなかったそうです。
火葬する場合もありました。
死後、半日〜一日たっても死後硬直が起きませんでした。
その村のある地域でのみ発生する現象だったそうです。
4. アラル海に幽霊船が出没したそうです。
ロシア革命以前は、アラル海にも海水は豊富にあり漁業が行われていました。
漁船が、大きな木造帆船に出会うことがあったそうです。
古い船でしたが作りはしっかりしていて、帆もボロボロというわけではありませんでした。
漁民が乗りうつってみても乗員はいない。
航海日誌はありませんでしたが、食器や各種道具、器具などは残されていました。
まるでメアリー・セレスト号のようです。
頻繁に目撃されるわけではありませんでしたが、遭遇したときには、漁民たちは船にのりうつって食器などを持ち帰っていたようです。
近くの町や漁村には、そのような船が造船された記録も進水した記録もありませんでした。
漁船は動力船ではなかったので、その船を自分たちの漁村に曳航することはできませんでした。
まあ、漁村の港の水深は非常に浅いので入港させることはできなかったのですが。
ある時、いつものように船に乗り移って、自分たちの小舟で持ち帰ることのできるような金めの品物を物色していると、船体がブルブルと震えだしたそうです。
漁民たちはびっくりして甲板に飛び出ましたが、船は沈みはじめていたそうです。
船から逃げ出して遠くから見ていると、その船は静かに水面下に没しました。
その帆船は、マストの先まで沈んでしまったのですが、その海域は水深が浅く、そのようなことは起こり得ない場所だったそうです。
亥の子の風習
391 :名無し百物語:2023/10/01(日) 21:15:44.34 ID:mdyzerVp.net
石じじいの話です。
以前、亥の子の風習について話したことがります。
それは、ハロウィンが一般化する前の、子どもたちの楽しい夜のお祭りでした。
私が子供のときにも、この風習は残っていました。
田の神が山の神になるために帰っていく時に感謝を捧げる祭りであったとも言われます。
また、この日に、その年に農作業を手伝ってくれた他の家に餅を配る風習もあったそうです。お世話になった人へのおかえしです。
そのため、ある地方では亥の子には必ず餅をつかなければならなかったということです。
十月の亥の日の夜には、子どもたち、男の子のみなのですが、が家いえの前を藁鉄砲や石で打ちながら一軒いっけんまわりました。
私の集落では石で地面をついてましたが、近くの町では藁鉄砲のところもあったようです。
コンクリートの地面を石でつくことはできませんからね。
それに石はあぶない。
ある地方では、その時に唱える歌は「亥の子の餅つかん者は、鬼を生め、蛇生め、角のはえた子生め」だったそうです。
「それはうちらの村の亥の子のやりかたとはちがうね。うちらでは、そがいなこと言わんと、亥の子唄うたわいね」と私がコメントを加えると。
じじいが言うには:
「ある年にな、その『蛇』を生んだ家があったんで。」
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北海道北部の漁村で聞いた話
392 :名無し百物語:2023/10/01(日) 21:16:35.11 ID:mdyzerVp.net
石じじいの話です。
じじいが石探しのために北海道を旅したときの話です。
北海道北部の日本海側の漁村で聞いた話だとか。
北海道の漁村では、冬になる前に海からの寒風を防ぐために垣をたてます。
丸太ん棒を縦横に組んだものにアシ、わらなどを屏のようにくくりつけて作るのだそうです。
雪囲いの意味もあり、雪が来る前にたてます。
ある漁村では、その風よけに鋭く尖らせた木の棒(ヤリ)を海に向かってたくさんとりつけるこのもあったそうです。
これは、海からやってくる魔物を防ぐためだということでした。
その魔物は、観念的、宗教的なものではなく実在するものであり、吹雪の夜に雨戸や窓を破って家に侵入し人をさらうのだということでした。
さらわれた人は喰れたのです。
食い荒らされた死体が海岸に放置されていたり波間に漂っていたりしたそうです。
日頃、海で漁をすることに対して、怒った海の生物、神ではないとか、が仕返しにくるのだ、ということらしいのです。
この魔物に対抗するために、座敷に短いやりや短刀を立てかけておく家も多かったそうです。
実際に、やりの練習をする人もいたらしいのです。
393 :名無し百物語:2023/10/01(日) 21:17:51.45 ID:mdyzerVp.net
>>392
この話に関連する話として:
ある吹雪の夜、トイレに行こうとして土間を通った時、土間の目張りをし忘れた窓を開いて入り込もうとしている「魔物」がいたことがあったそうです。
見つけた人は、大声で家人に知らせました。
主人が、やりでその魔物を突くと、ソレは、低い唸り声をあげて窓から外へ落ちていなくなったそうです。
その声は、女性のもののようにも聞こえたと。
と、別の聞き書きメモにありました。
魔物の姿についての話は、聞き書き帳にみつけられませんでした。
「猿酒」を里に持ってきた
410 :名無し百物語:2023/10/13(金) 21:40:05.40 ID:XzFIuy8H.net
石じじいの話です。
まずは能書。
サルは、秋になると山ブドウ・アケビなどの実をとって岩のくぼみにたくわえておく。そこに雨水などがたまって果実と水がとけあい発酵して味のよい酒ができるといいます。猿酒ですね。
猟師や木樵などが山中を歩いているとこの猿酒に出会うことがあるそうで風味ゆたかな美酒だということです。
彼らが言うには、山を歩いていると岩のくぼみなどに酒がたまっていることがある。芳香をもち非常に美味だと。
しかし、これは作り話だそうです。
清の時代の中国の書物に、サルが多い場所には猿酒を見つけることができるという記述があるので、そこから日本に由来したものかもしれないとのこと。
ある時、山からおりてきた猟師が、「猿酒」を里に持ってきたそうです。
上記のように、山で見つけたので水筒につめて持って帰ったといいます。
その猟師と一緒に皆で飲んだが、非常に美味で香りもすこぶる良い。
これはいいもんだ、どこで見つけた?と尋ねても、その猟師は教えてくれませんでした。
そりゃそうでしょう。
彼は、別の日に、また猿酒を持ってきました。
よろこんで皆で飲んだら、全員が死んだそうです。その猟師も。
その猟師はどこで見つけたのか?
ほんとうに、山で見つけたのか?
それは本当に猿酒だったのか?
里の人々の毒殺が目的の芝居だったのではないか?
しかし、なぜ自分も死んだ?
「よう考えてみんさいや、サルがそがいなことできんやろ。実際に山でサル見とったらわかるやないかな。
注意せないけないな。そがいなありもせんこと信じとると、魔物につけこまれるんで。その猟師が魔物やったんかもしれないねえ。」
山から聞こえてくる声
411 :名無し百物語:2023/10/13(金) 21:48:46.93 ID:XzFIuy8H.net
石じじいの話です。
あるところでは、山から声が聞こえてくることがあったそうです。
よくある話です。
その声は男性のこともあり女性のこともあったのです。
その声がしゃべる内容は、その山の近くの村落の人々の行為を非難するものや、県や国の役場の政策や行為を批判するものでした。
誰か不逞の輩が、山の中に潜んで叫んでいるのではないかという声も上がったそうですが、ひとりの人間がそんな大きな声でえんえんと叫ぶことはできないし、拡声器も当時はない。あっても山奥まで運べませんでした。
「声」によって非難される行為が、一般の人々に隠されている場合も多く、その山からの声で、不正があらわれるということもあったそうです。
そのため、その近くに住む人々は恐れました。
その山に登る人も恐れました。
ある人は、その声が聞こえ始めたら、耳をふさいでうずくまりました。内容を聞かないようにするためだったとか。
こんなことをして何か意味があるのでしょうか?
また、ある人は聞かないように大声で歌ったそうです。
これはこれで愚かなふるまいです。
殺生人
412 :名無し百物語:2023/10/13(金) 22:00:01.67 ID:XzFIuy8H.net
石じじいの話です。
これは、ちょっと残酷な話なので、石じじいが話してくれたものではないかもしれません。
聞き取りノートの巻の順番からすると、私が小学生低学年のときに聞いた話と思われます。
私がちいさいときには、じじいは残酷な話やエロい話はしなかったように記憶しています。
昔の猟師は、狩りだけで生活をたてることが難しかったので農業をしながら猟をしていたそうです。
彼らは、殺生人と言われていたようです。
夏になると川魚をとって歩いたり、鵜飼いもしていた猟師もいたとか。
また、丸木舟を作るのものもいたそうです。
猟師は、イノシシやクマだけでなく、鳥も狩りますが、海にでかけて海鳥をとることはなかったそうです。
彼らが言うには、海の神様が怒るのだと。
猟師ではなく遊猟のために海鳥を撃ちに海へ行った人がいましたが、案の定、死にました。
海岸で倒れていた男の頭は銃で撃ち抜かれていたそうです。
弾丸は頭骨を貫通していたので見つかりませんでした。
かなり大きな弾丸だったらしく、頭の一部が欠損していました。
結局、使用された銃はわかりませんでした。
一緒に遊猟をしていた人たちが疑われたそうですが、使用していたのは散弾銃だったので、疑いは一応はれました。
しかし、別の銃で撃ち殺して、それをどこかに隠したのではないかとも考えて、警察は現場を詳しく調査しましたが、銃は見つからなかったそうです。
家宅捜査もしたのですが見つからなかったと。
そのニワカ猟師を殺したのは、ほんとうに弾丸だったのでしょうか?
サケ漁業
414 :名無し百物語:2023/10/18(水) 20:20:40.46 ID:yTB8Butt.net
石じじいの話です。
じじいが石探しのために、東北地方を旅した時の話だそうです。
昔は、東北地方の日本海側には、川をサケがたくさん遡上してきました。
これを地元の人々がさかんにとったのです。
その漁のやりかたは、川の急な湾曲部の川床に木の杭をたくさん打ちこんで障害物をつくります。
サケは障害物があると水面から飛び跳ねる習性があるので、それを利用します。
サケは、そこで水面から跳ねて河原に飛び出してしまいます。
それを棒で打って弱らせてとるのだとか。
サケは大きく、激しく暴れるので手づかみではおさえられないのです。
しかし、ここで困ったことがありました。
たまに、棒で打つと「悲鳴」を上げるサケがいたのです。
そのような悲鳴があがると、それまでとっていたサケが皆腐ってしまったそうです。
一気に、すぐに。
このような悲鳴を上げるサケは非常にまれだったので、そこでの漁をあきらめるほどの障害にはなりませんでしたが、迷惑な現象でした。
悲鳴をあげるサケは腹の部分が青色がかっているものが多かったので、見分けることができることもあったそうです。
普通は、赤いのですが。
風の話
415 :名無し百物語:2023/10/23(月) 14:55:31.77 ID:5AJl3gIW.net
石じじいの話です。
風の話を二題:
(1)梅雨時に「毒の雨」が降ることがあったそうです。
これは、南風 ハエ が吹く時に起きました。
毒雨の前兆となる風は、クロバエともマジ、マゼとも呼ばれていました。
この毒の雨が入った水を飲むと体を壊したそうです。
目に入ると目を病む。
口に入ると嘔吐する、咳が止まらない、胃痙攣が起きる、下痢が止まらない。
死ぬことはないが、病人が飲むと命の危険もあったとか。
川や池の魚が弱ったり、死んで浮くこともあり、また、作物が弱ったり枯れたりすることもあったそうです。
それで、毒雨が降ったなとわかるのだと。
(2)同じような話です。
東風(こち)という言葉をしっていますか?東から吹く風です。
東側に海が開けた漁村では、東風によって「より物」が多いので、その風は喜ばれたそうです。
東風が海岸に直角に吹きよせて、海に漂っているものが流れ着くのです。
晩春から初夏にかけて、ときどき湿気を含んだ冷たい東風が吹くことがありました。
その風にあたると頭が痛くなる人が多かったそうです。
闘鶏
416 :名無し百物語:2023/10/23(月) 15:28:33.79 ID:5AJl3gIW.net
石じじいの話です。
皆さんは、闘鶏を見たことがありますか?「とりあわせ」とも言います。
鶏どうしの蹴合いです。
日本書紀にも記事があります。
『三代実録』に、雄略天皇が弘徽殿で闘鶏を見たという記述があります。
和歌山県田辺には、闘鶏神社があるとか。
闘鶏は、明治時代の中頃までは各地で広く行われていましたが、当局の取締が厳しくなって消滅しました。
これは、「かけ」で、これで財産をなくす人も多かったのです。
河内の闘鶏は、今東光の小説「闘鶏」や「悪名」で知られていますね?
闘鶏に入れ込んで、鶏を育てている鶏主がいました。
ある日、闘鶏に使われる鶏が飼い主に向かって言ったそうです。人語で。
「お前は、遊びで、われらどうしを闘わせて平気で殺している。いまに地獄に落ちるぞ。」と。
飼い主は豪胆な者だったので、平気で、
「畜生が、笑わせるな!お前も勝たんとしめて食ってしまうぞ。それがいやならしっかり闘え!」と。
そうゆうてやったわ、と飼い主はまわりの人に言っていたそうです。
それを聞いた人の中には、「このおっさんはちょっと頭がおかしいんちゃうか?」と思った人もいたようです。
それからも、その鶏は闘鶏で闘わされましたが、非常に強かったのです。
ある日、その鶏が飼い主に襲いかかり、足の爪で彼の喉笛を掻っ切って殺してしまいました。
近くにいた人が、その鶏を取り押さえたのですが、飼い主を斬り殺したあとは、鶏は暴れずおとなしく取りおさえられました。
そのとき、足には鋭い闘鶏用小型ナイフがとり付けられていたそうです。
鶏どうしの闘いをより残酷にして楽しむために、そのような細工をすることがあったのです。
人々は「バチがあたったのう」と話しあったそうです
水垢離
417 :名無し百物語:2023/10/24(火) 21:45:19.09 ID:Jeu4R8US.net
石じじいの話です。
短い話です。
現在では海水浴は一般的なレクリエーションになっていますが、昔は水垢離という意味もありました。水行場と呼ばれる場所が海岸にあったこともあるようです。
水垢離は夏にも行いました。
漁村の人々は修行者ではないので、これは常識的です
海で水垢離をとると皮膚が丈夫になりました。
また、海水を浴びていると皮膚に透明なウロコのようなものができることがあったそうです。
そうすると体が健康になる。
楳図かずおの「半魚人」のようです。
その透明なウロコは、いっときすると、ぷちぷちと音を立てて皮膚から剥げ落ちました。
海で水垢離をとっていると、うなぎのような体の長い大きな黒い魚が泳いできて、その人のまわりを1-2周まわって沖に泳ぎ去るということがありました。
それを人々は、めでたいと言って大変喜んだそうです。
呪いの話 その1
419 :名無し百物語:2023/10/26(木) 20:41:56.38 ID:voIh6rUO.net
石じじいの話です。
じじいから聞いた呪いについて書いてみます。
1. 食欲のない病人に呑ませる符
病気で食欲のない人に服用させる符があるそうです。
これを呑ませると必ず食欲が出る、と。
これが符の文面です。
●試してみてください、とは言えませんね。
2. 火災の被害を事前に知る呪い:
火事が起きて火が身近に迫った時に、自分の家に類焼するかどうかを知る方法があるそうです。
家族の者たちの眉毛を見て、全員の眉毛が立っている時は類焼する:と。
そうではないからといって油断してはならないそうです。
●どっちやねん!という感じです。
3. ネズミに噛まれたのを治す方法:
ネズミに噛まれると毒が体に入る:という言い伝えがあるそうです。
これへの対策法は:
完全に乾燥させた猫のフンを粉にして、これを姫糊と混ぜ噛まれた傷口に貼り付ける。
または、梅仁を酢につけたものを貼る。
鮒の肉を擦り付ける。
朱蘭の根をすりおろして、それを塗りつける。
朱蘭とは紫蘭の別名だそうです。薬用植物です。
●これは、おすすめできませんね。かえって化膿しそうです。
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呪いの話 その2
420 :名無し百物語:2023/10/26(木) 21:02:01.00 ID:voIh6rUO.net
石じじいの話です。
じじいから聞いた呪いについて書いてみます。
1. 眠気を防ぐ呪い:
これは役に立ちそうです。
ひとつまみのネズミのフンを紙に包んで、それをヘソにあててそのままおいておく。
すると、眠気がさすことはない、と。
●ここでもネズミです。役に立ちます。
2. 人の吉凶を知る方法:
寝ている人の顔をみて、その人の将来の吉凶をしる方法です。
笑っているような寝顔の人:心に毒がなく、幸福になる。なぜなら、どんな人にも好かれるからからである。
泣き顔のような寝顔の人:天を恨む心がある。そのため、生涯、辛労が絶えない。
寂しそうな寝顔の人:運気が薄くて短命だ。
陽気そうな寝顔の人:運勢が強くて長命だ。
口を開いて眠っている人:苦労の絶えない人だそうです。
●なんだかな~、単純ですね。まあ、方法というのは単純な方が良いのですが・・・。
3. 駆け落ちする可能性の高い人を知る方法:
「駆け落ち」とは、逃げて行方をくらますことです。
一度、逃げられると、占いの名人でもその逃げた方向や距離を知ることは不可能だが、その駆け落ちを防ぐために、駆け落ちの可能性をあらかじめ知る方法があるそうです。
歩いている時に、たびたび後ろを振り向いて歩く人は、必ず近いうちに駆け落ちすると。
これは、間違いないそうです。
●これも「語呂合わせ」的です。
4. ハエを追い払う方法:
古いお茶の葉を、少しづつ火鉢の中に入れて燻せばハエは逃げる、と。
「かすべ」のようなもんですかね。
「かすべ」って、みなさん知ってますか?
※「かすべ」とは北海道の方言で魚のエイのこと。また「カスベの煮付け」は北海道の冬の郷土料理だそうです。文脈の意味ではなさそうなので別の意味を知っている方は教えてください。