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【洒落怖】バニラ

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セレクトショップ勤務の俺は時々海外買い付けに走らされる。

有名どころのブランドでなく、誰も知らない良いものを世界から買い付けて日本に紹介するのが俺の仕事だ。

出張は主に欧州が中心だが、ある時オーナーの思いつきでアジア圏を旅しながら面白いアイテム探しをする事になった。

海外慣れしているとはいえアジア圏は欧州と違い、独特な街が多く、また風変わりなものを扱った店も数多くあった。

タイからベトナムへ渡る道中、某地方都市の散策中に日本語の看板が目に止まった。

日本語併記の看板自体はそう珍しくなく、目をこらせば結構見つける事が出来る。

しかしそれでも思い切り目を引いたのはその字面だ。

見世物あります

見世物なんて言葉、現代日本でもなかなか見やしない。

そういう店が日本にあったとしても倫理的な問題でソッコー潰されるだろう。

大いなる好奇心と一握りの怖さを胸に店内に入ると、そこは至ってフツーのシーシャ屋だった。

シーシャってのは水タバコね。

ぼんやりした髭面の店主はこちらを見つけると、何やら現地の言葉で嬉しそうに話ながら奥へ来るよう俺らの手を引いた。

奥からは濃いバニラの香りが漂ってくる。

天井から下がった、かつては美しかったであろう薄汚れた布をめくるとそこには五人ほどの痩せた人間が身を寄せ合い、体育座りをしていた。

全員腰布だけを身につけており上半身は裸。何より異様だったのはその頭部だ。

普通の人間の頭のサイズの3〜4倍はある。

汚い包帯でぐるぐるに巻かれているため顔の確認は出来ない。

黒く乾いた血のようなものがこびり付いた包帯は、もうずっと取り替えられていなさそうだ。

「うっ・・」

思わず声をあげると、そいつらは一斉にこちらを見た。

見た?と言っても顔が分からないんだが、とにかくこちらの気配に気づいたようだ。

立ち上がろうとするそいつらを尻目に、俺らはさっさと店を出て走って逃げた。

残念そうな声で何か喋ってる店主の声なんか気にしてる余裕も無かった。

オチも何もないけどこの話はこれで終わり。

店に残っていたら何を見る事が出来たんだろうか。

あの奥の部屋に充満していたバニラの香りを嗅ぐと、今でも脂汗が出てくる。

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