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起
とある夏の午後、人気のない公園でキャッチボールをしている陽介(堂本光一)と隆男。
隆男の何気ない一言に、陽介は、思わずボールを取り損ねた。
「来週の典ちゃんの誕生日、思い切って告白しようと思って」
部屋に戻った陽介は、ぼんやりと壁を見つめていた。
視線の先には、陽介と隆男、そして典子の写真。
昼間の隆男の言葉がよみがえる。
と、テーブルの上の 携帯が鳴った。
電話に出た陽介の耳に届いたのは
「隆男君が…今日の夕方、亡くなったって」
涙まじりの典子の言葉だった。
陽介と別れた帰り道、石段から足を踏み外し頭を打って亡くなったのだった。
承
通夜の帰り、典子とわかれてひとり公園を通りかかった陽介。
人気のない公園。
入り口でぼんやりとたたずんでいると、足元にボールが転がってきた。
何気なく拾い上げると、「陽介、何やってんだよ、こっち」と呼ぶ声。
声の主はなんと死んだはずの隆男だった。
陽介に向かって両手をあげて、ボールを投げてよこせと合図している。
昨日と同じ会話、昨日と同じ風景…一体なぜ?
訳のわからぬまま隆男と別れようとした陽介だったが、はたと思いついて隆男を家まで送ってゆく。
これはおそらく、友人が死ぬことになる日の夕方に時間が戻っているのだ。
石段から足を踏み外すこともなく、無事に隆男を送り届けホッとする陽介。
陽介が自宅に戻ると彼の携帯が鳴った。
電話の向こうから典子が「隆男君が今日の夕方、亡くなったって」と告げる。
陽介と別れた後、工事現場で上から落ちてきた鉄骨の下敷きになって亡くなったのだという。
次の日、その工事現場にやってきた陽介と典子。
花束を供える典子に、陽介は「確かめたいことがある」と言って走り出した。
陽介の向かった先は、あの公園。
前回と同じように時間が戻るのであれば――――。
ベンチに座った陽介の足元にボールが転がってくる。
陽介がボールを拾うと、後ろから隆男の声が響いた。「陽介、何やってんだよ、こっち」
やはり時間が巻き戻った。
隆男を家(隆男の家は酒屋)まで送り届けた陽介。
隆男はさらに別の場所へ配達に行くため家を出ようとする。
必死で引き止める陽介だが、隆男は自転車で家を出てしまう。
陽介は先回りしようと駆け出した。
隆男が工事現場に通りかかると息を切らして立ちふさがった。
いぶかしむ隆男だが、その瞬間向こう側に鉄骨が落ちてきて隆男は唖然とする。
夜中「人に迷惑かけやがって…」と一人愚痴る陽介のもとに、
またしても典子から電話がかかる。
典子に言われてテレビをつけると、隆男の家に強盗が入り、隆男は刺し殺され、
なんと隆男の妹・聡子までが重傷を負ったとのニュースが流れる。
「なんであいつの妹まで…」と唖然とする陽介。
次の日、陽介はまたあの公園に足を運んだ。時間を巻き戻すために。
転がってくるボールを拾い上げる陽介。
「隆男、お前は俺が守ってやる…」
また昨日に戻った陽介は、隆男を送り届けた後、
夜中に隆男の家を見張る。
怪しい人影が塀を乗り越えていくのを見た陽介は「泥棒!」と叫んで追い払う。
さらに近くのバス停のベンチに腰をおろし、朝まで見張ろうと決める。
いつの間にか眠っていた陽介。
あたりが騒がしくなって目を覚ますと、やじ馬が集まっていた。
やじ馬が進むのと同じ方向に歩いていくと隆男の家が黒煙をあげながら燃えていた。
翌朝、陽介の手元の新聞には「火災により一家四人焼死」と書かれていた。
転
もう一度公園へ向かう陽介。
公園で少しためらいながらもボールを拾い、時間を巻き戻す。
昨日に戻って隆男と再会した陽介。ベンチに座って隆男と話し始める。
「顔色悪いぞ、今にも死にそうって感じ」
と心配する隆男に陽介は尋ねた。
「もし俺が死んだらどうする?」
「助けに行く」
当然だろ、と答える隆男。
「でも無理なんだ」と言い返す陽介に、
「それでも助けに行く」と隆男は言う。
「助けられないんだ!助けようとすればするほど、どんどん悪くなっていくんだ!」と叫ぶ陽介。
「何の話だ?」と聞く隆男に、「わかんねえ…」とうめくように陽介は言った。
隆男は立ち上って明るく言った。
「お前は死なねえだろ。まだ典ちゃんに気持ち伝えてないしな」
突然の言葉に困惑している陽介に、隆男は続けた。
「好きなんだろ、典ちゃんのこと。典ちゃんもお前にそう言ってほしいんだと思う」
「でも、お前、告白したって…」
そう聞き返す陽介を振り返って隆男は言った。
「ああ、あれは『お前のことよろしく』って言ったんだよ」
笑顔で隆男は続ける。
「典ちゃん、いい子だよ。大切にしてやれよ。」
そう言って帰ろうとする隆男を、陽介が呼び止めた。
「なあ、お前の一番大切なものって何だ?」
「決まってんだろ、家族だよ。お袋と妹と弟」
そう答え、自転車に乗って帰っていく。それを無言で見送る陽介。
自宅で典子からの電話を受け取る陽介。
隆男が石段で足を踏み外して亡くなった。
典子がそう告げるが、陽介は何も答えない。
翌日、陽介は公園のベンチに座っていた。
足元に転がってきたボールを拾おうとして、陽介の手が止まる。
そのまま手を伸ばすことができず、地面にくずおれ嗚咽する陽介。
その目の前でボールがゆっくりと消えていった。
結
7年後。
同じ公園のベンチに座り、
キャッチボールをしている二人の少年を眺める陽介。
そこへ典子がやってきて、
「どうしたの?」と尋ねる。
「いろいろ思い出してたら懐かしくなって」と陽介は答える。
「もうすぐ七回忌だね…」と典子がつぶやく。
典子がミネラルウォーターを陽介に手渡しながら
「遅くなっちゃってごめん」と言う。
陽介が軽く笑って「何言ってんだよ、まだ5分も経ってないだろ」と言うと、
「そっか、そうだよね…」と典子はうつむき加減に言った。
「顔色悪いぞ、疲れてないか?」と陽介に聞かれると、
典子は「大丈夫」と答えた。(←このあたりのセリフの順番がうろ覚えです、すみません)
「そろそろ帰るか」と立ち上がって歩き始める陽介。
その腕に自分の腕を絡ませて、典子が思いつめたような調子で尋ねる。
「もし私が今日死ぬってわかったら、あなたどうする?」
思わず立ち止まった陽介。
典子は慌てて言った。
「ごめん。ちょっと聞いてみただけ」
陽介は「おかしなやつだな」と一言言った後、何かに気づいて表情を変える。
「世にも奇妙な物語」のロゴが出て終了。
参照元:http://yonikimo.com/db/public/405.html