後味の悪い話

【後味の悪い話】江戸川乱歩の短編「夢遊病者の死」

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280: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/10/10(土) 20:04:31.40 ID:mt5jrJd50.net
江戸川乱歩の短編「夢遊病者の死」

主人公、彦太郎は酷い夢遊病を持っていた。小学校の頃止まったのにまた再発してきてしまい、夜中に町を徘徊するなんてのは序の口、住み込みで問屋に勤めていた頃夢遊病で歩き回っている内に他人の物を盗ってきてしまうという事態が起こった。
それが数回繰り返されたので、いくら夢遊病でも泥棒を置いておけないと、仕事に関しては懸命な働き者だったのに彼は解雇されてしまったのである。

法で罰せられることは無かったが、彼は自分の病気が恐ろしくて仕方なかった。
ある爺さんに夢遊病の女性が寝ぼけて亭主を鎌で殺してしまった事件があったことを聞いて、更に自分の病気に恐怖を覚えた。

ある日彦太郎は勤め口を一つ見つけるも、住み込みだからという理由で断ってしまう。住み込みでは、また店に迷惑が掛かってしまうからだった。
彦太郎の父親は彼の病気が再発したことも、何故問屋を辞めさせられたかも知らなかった。故にどうして折角の勤め口を断ってしまうのだと憤慨していた。
そして暇さえあれば彦太郎を自分の前に座らせ説教を垂れていた。
解雇されてすぐの頃夢遊病のことを言いそびれた彦太郎は、偏屈な性格と気恥ずかしさのせいで、もう打ち明ける気がしないでいた。
母親のない彦太郎にとって、父親は唯一の家族であるのに、近頃ではどちらかが口を開けばすぐに喧嘩腰という有様だった。

猛暑の季節に雨が続く日のこと、夕食の場で父親のお決まりの説教が始まり、それをきっかけに親子の取っ組み合いが始まる。その内やり切れない気持ちになった彦太郎は泣き出してしまった。

その後彦太郎はふてくされ、泣き出した時のままの姿勢で床にうつ伏せになっていた。頭の中では父親への恨み言が渦巻いていた。
「空が晴れて綺麗な月が出てるぞ。一緒に見ないか」
庭の椅子にかけた父親が呼びかけたが、彦太郎は耳を貸さなかった。そして横になっている内に彼は寝入ってしまった。

281: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2015/10/10(土) 20:06:53.56 ID:mt5jrJd50.net
翌朝目を覚ました彦太郎が下駄を引っ掛けて庭に出ると、昨日のまま父親が椅子にかけていた。
驚いたことに椅子にかけた父親は死んでいたのである。頭部に致命傷らしき傷があった。

間も無く警察が駆けつけ、彦太郎及び近所の住民達は取調べを受ける。
無論他殺を前提に捜査が行われたが、加害者の遺留品らしきものは一つも見つからなかった。
唯一の手掛かりは足跡だった。続いた雨のお陰で、地面に足跡がはっきり残っているのだ。
そしてどの足跡が誰のものか、と順に当てはめていくと、一つだけ主が分からない足跡が発見された。
庭をやたらと歩き回ったような足跡だった。そしてその足跡はこの家の縁側から始まり、また縁側に戻っていたのだ。
彦太郎は気付いてしまった。その足跡が自身の下駄のものに間違いないということに。
彦太郎の中に恐怖と共にかつて問屋で爺さんに聞いた話が蘇った。亭主を殺してしまった夢遊病の女性の話が…。

彦太郎は何気なさを装って現場を抜け出し、家の前にとめてあった警官の自転車に跨り逃げ出した。
酷く乗り回したせいで自転車はパンクし、自転車を乗り捨て無我夢中で走り続けた。
しかしその日は酷い猛暑日で、日に当てられた彦太郎は力尽きて倒れてしまう。
暫くして警官が知らせを受けて駆け付け、彼を抱き起こそうとした。
彦太郎は一瞬警官からのけぞって逃げるような素振りをしたかと思うと、そのまま息を引き取った。

一方現場では私が犯人だと、ある男が名乗り出ていた。
男は彦太郎の家の近くにある高級な建物で、パーティの片付けをしていた。その時に飾られていた氷細工を窓から誤って落としたのだという。
それが運悪く、下の庭に居た彦太郎の父親に直撃してしまったのだ。
氷は溶けるから、遺留品が残らなかったのである。
男は恐ろしくて初めは黙っていたが良心の呵責に耐え兼ね、自首したのだった。
警官達は余りに意外な事実に呆然としていた。

後日、親子の二つの棺が出棺され、事件は幕を閉じた。
しかし何故あの時被害者の息子は逃げ出したのか。その謎だけは永遠の闇の中だった。

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