スポンサーリンク
27: 本当にあった怖い名無し2021/12/02(木) 09:54:36.44ID:vZRAOIyh0>>28>>30
別役実の童話「砂漠の町のX探偵」
砂漠と海にはさまれた、小さなさびしい町。
X探偵が事務所に戻ると、公園のオリにいるはずの人気者のゾウがいた。
というかゾウの前半分がいた。
おとといシッポが消えて昨日おしりが消えました、今日はこれです
もうごまかせません何とかしてください、とゾウは泣く。
そこにゾウの飼育員が、公園のゾウさんがいなくなったんです!と飛び込んできて、
前半分だけのゾウと抱き合って泣く。
X探偵、ゾウに留守番を頼み、飼育員を連れて調査と称して町に出る。
ゾウさんには聞かせたくないんです、と前置きして、X探偵は飼育員に色々訊ねる。
昔、先代のゾウがいた。長生きして町のみんなに愛されていた。
先代のゾウが死んだあと、空っぽのオリを見てため息をつく人が多く出た。
そんなある日、誰かが叫んだ。
「やあ、ゾウがいるよ」
オリを見ると、今のゾウがいた。オリの鍵は確かにかけてあったのに。
そういえばさきおととい(ゾウさんのシッポが消える前の日ですね)、
病院の院長先生がずっとオリの前にいた。
院長先生が何かご存知かもしれませんね、とX探偵は飼育員を連れて病院へ。
そうですか、ゾウさんが…。ならば治療は成功です。と院長は言った。
この町はさびしすぎる。先代のゾウが死んで、もっとさびしくなった。
だからみんな、空想に慰めを求めるんです。
夢は寝てから見るものです。
起きてからも夢を見続けて、しかもみんなで同じ夢を見るようではいけません。
物語はいつか終わり、切なさや優しさをおみやげに現実に戻るんです。
だから私は言いました。
『ワタシにはキミが見えないんだよ…』
ゾウはもう、鼻しか残っていなかった。飼育員はゾウの鼻を抱きしめて泣いた。
X探偵が真相を言って聞かせると、ゾウは目があるはずの場所から大粒の涙を流して消えた。
28本当にあった怖い名無し2021/12/02(木) 10:22:19.79ID:QptnUDYA0
>>27
いかにも別役実らしい余韻のある話で、後味は悪くないような
30本当にあった怖い名無し2021/12/02(木) 20:47:20.27ID:C0c0hLMi0
>>27
攻殻機動隊を思い出す