後味の悪い話

【後味の悪い話】ダスクストーリー

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188: 本当にあった怖い名無し 2010/11/16(火) 18:58:25 ID:LDsOVOCz0
昔読んだ本でタイトルは忘れた

主人公は、とある家を訪ねた。
道に迷ってしまったという主人公を、その家の住人は親切に迎え入れてくれた。
住人は三名。若い夫妻と、とても美しい金髪の女児だった。
傍目にも家族愛が深い事がうかがえる、なごやかな三人だった。

主人公は、実は道に迷ったというのは嘘で、ある人物を訪ねるために家に来たのだと一家の夫に打ち明けた。
だが、その人物はもう暮らしていないようだった。
「その人の事なら知っている ここに住んでいた娼婦の女のことだろう」
と夫は言う。その通りに、かつてここには一人の娼婦が住んでいた。
娼婦は自宅で男を客にとって生計を立てていた。
それだけでなく、男たちの個人情報を掴み、手紙を送る事でも生計を立てていた。
「あなたの子供が産まれました 養育費をいただけませんか」
といったもの。強要したわけではなかったが、何名かの男はその手紙を信じて、
誰の子供なのかもわからないその子供のためにお金を振り込んだ。
娼婦は脅迫にならぬようやんわりとしたニュアンスでその手紙を様々な男に送り、お金を得続けていた。

主人公は家族を亡くして身寄りがないが、父の遺物の中から娼婦からの手紙を見つけた。
「金色の髪の女の子が生まれました あなたの子供です」
真実を知るために主人公は家を訪ねたのだった。
しかし、もうこの家には違う住人が住みついていた。
金髪の女児はいたが、手紙が送られてきた時期を考えると幼すぎるので別人だった。

「そもそも本当は金髪の女の子なんていなかったんですよ」
夫は主人公に言う。娼婦は方々に手紙を送り続けていたが、
手紙の中に記されている子供は存在せず、詐欺のための架空の存在だった。
そんな事も知らず、客だった男の中には、何年間もずっと大金を送り続けていた者がいたという。
男は若く、けして金持ちではなかった。だが、まだ顔も知らない自分の子供を愛しく思う気持ちが強かった。
孤児として育った男にとって子供の存在は大きなもので、子供の事を生活の支えにしていた。
子供のために働き続けた結果、お金にゆとりのできた男は、子供と娼婦を迎えに家を訪ねた。
しかしそこに子供の姿はなく、真相を知った男は衝動的に娼婦を殺害してしまった。

189: 本当にあった怖い名無し 2010/11/16(火) 19:00:21 ID:LDsOVOCz0
娼婦にまつわるその一連の事件は新聞にも載っているだろうから調べるといいですよと夫は言う。
「一連の事件」、つまり娼婦の死だけでは終わらなかった。
娼婦を殺した後に、男は後を追うように自殺してしまったのだという。
「死んだ娼婦の傍らには金髪の女児の人形がありました
 男にあてられた手紙の中には、女児がどう育ちどう振る舞うのかも細かに書かれていました
 大事に置かれている人形を見て、男はやっと、娼婦もまたさみしい人間で、
 彼女も架空の子供の存在を信じ、信じる事で救われていたのだと知ったんです」
男と娼婦はすれ違い続けたが、同じ悲しみと、架空の子供に対する同じ愛を持っていたのだと夫は言う。
そこへ、離れた場所にいた妻が夫に対して呼びかけてきた。
夫は、話の中に出てきた娼婦の名前で妻のことを呼び返した。
どういう事なのか主人公は不思議に思ったが触れられず、やがてその家を発った。

後日に主人公が当時の新聞を見ると、事件の事が報じられていた。
被害者として載っている写真はあの一家の妻のもので、加害者は夫だった。
そしてまた調べてみたところ、ひどい事件のあったあの家は、
事件の後からずっと買い手がつかず無人である事がわかった。

主人公が接した一家は、幽霊二人と、その幽霊が共同で抱く幻想の子供によってつくられたものだった。
二人が死ぬその日までに、架空の子供は二人の間ですくすく成長した事になっていたが、
二人が死んだ時に同じように成長を止めてしまったのだった。

主人公が家を訪ねたのは、腹違いの妹に会いにいこうとしたのは、家族のいないさびしさからだった。
死して尚も幻想を抱き続ける娼婦と男の気持ちが、主人公は身にしみてわかったのだった。

うろ覚えで細部は捏造だけど大筋は間違ってないと思う
一家の描写がすごい幸せそうだったから真相とのギャップがすごかった

190: 本当にあった怖い名無し 2010/11/16(火) 20:16:31 ID:9nHvPPNaP
もしかしてダスクストーリー?
切なかったり怖かったりほんわかしてたり
面白い連作読切りだった

191: 本当にあった怖い名無し 2010/11/16(火) 23:33:03 ID:4B50Jdnj0
うん、なんか切なくて良い話だね。 全然後味悪くないけど。

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