話題・雑談

【ジブリ】『ハウルの動く城』の知れば100倍楽しくなる裏設定&裏話まとめ

2021年、金曜ロードショーで「ハウルの動く城」が放送されました。その際、番組放送中にジブリプロデューサーである鈴木敏夫さんが、ユーザーからの質問に答えるという「金曜ロードショー✕ジブリ」が開催されました。ここでは鈴木敏夫さんの質疑応答と、知ればさらに面白い「ハウルの動く城」の裏設定をお伝えします

僕も「ハウルの動く城」はジブリのなかで一番好きな作品です!

目次


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「ハウルの動く城」Q&A

タジオジブリ✕金曜ロードショーコラボ企画

金曜ロードショーとジブリのコラボ企画で、「ハウルの動く城」への質問がTwitterで受付されました。なんと届いた質問にはジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんが答えてくれます。

鈴木敏夫さんへの質疑応答

Q:ハウルの声に木村拓哉さんを起用した理由は?
鈴木:ハウルの声は木村さん以外にありえませんでした。娘がいいと言いました。
Q:サリマン先生の従者はハウルそっくりですが、何故ですか?
鈴木:ジブリ美術館の短編作品「星をかった日」にその答えが隠されています。
Q:宮崎監督がハウルやソフィーのモデルにした人はいますか?
鈴木:ソフィーの自分のお母さん。ハウルは自分の理想の姿です(笑)
Q:ソフィーの声に倍賞千恵子さんを起用した理由を教えてください。
鈴木:宮さんが大ファンだったからです。隠してるけど(笑)
Q:木村拓哉さんのアフレコ時に印象的だったエピソードは?
鈴木:台本を持たずにアフレコの現場にきて、最後まで演じきったことです。
Q:ヒンのモデルになったのは押井守監督と聞きましたが、本当ですか?
鈴木:本当です。顔がソックリでしょ(笑)
Q: 宮崎駿さんがハウルの動く城をやろうと思った理由はなんですか?
鈴木:本来動くはずのない城が動くのにチャレンジしたかったからです。
Q:ジブリ作品に登場するご飯はいつも美味しそうですが、なぜですか?
鈴木:すべて宮さんが実際に自分で作ったことのある料理ばかりだからです。
Q: 私は『ふたりが暮らした』というこの映画のキャッチフレーズが大好きなのですが、このフレーズに決まった理由やエピソードなどがあるのでしょうか?
鈴木:男女の愛というのは「ふたりが暮らす」ということでしょう!
Q:TEAM NACS全員の役はどうやって決めましたか?
鈴木:ジブリの社内に大ファンのスタッフがいたからです。
Q:鈴木さんが一番好きなハウルはどのハウルですか?
鈴木:僕の描いたハウルです(笑)
Q:木村拓哉さんとのアフレコエピソードはありますか?
鈴木:収録の間中、ずっとアニメについて話していました。彼が好きなアニメは「サジタリウス」と「ニルスの不思議な旅」でした!かなりのドマニアでした(笑)
Q: ハウルを制作する上で1番印象的だったのはどのシーンでしょうか?
鈴木:ソフィーと荒地の魔女が階段を登るシーンです。宮さんはあのシーンが大好きです。
Q: 鈴木さんは闇の精霊を呼び出したことはありますか?
鈴木:宮崎駿のせいでいつも呼び出しています。精霊の顔は宮崎駿に似ています(笑)
Q: 宮崎駿監督の作品に出てくる女性はいつも前向きに生きているなと自分の中で感じているのですが、監督自身も前向きな女性がタイプなんでしょうか?
鈴木:宮さんはマザコンです。彼の作品に出てくる女性はみんな若き日の宮さんのお母さんです。
Q: 鈴木さん一番のお気に入りジブリキャラは誰ですか?
鈴木:現在制作中の新作に出てきます。まだ秘密です(笑)
Q: 今現在、ハウルは何してると思いますか?
鈴木:また新しい女性を見つけている……のかなぁ(笑)
Q: この作品のテーマを一言でお願いします…!!
鈴木:「人生」
Q:原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんとのエピソードは?
鈴木:旦那さんを尻に敷いていたこと。ダイアナさんのとなりでご主人は一言も発さずニコニコとしていました。「アーヤと魔女」のアーヤは子どもの頃のダイアナさんだと思います。

(Q&A終わり)

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その他の鈴木さんからのメッセージ

鈴木さんの語る見どころ。「ハウルの心臓を手放さなかった荒地の魔女が、なぜ心臓を手渡したのか、わかりますか? 答えは、最後まで観ればわかります。台詞が一切ないところに注目です」

鈴木さん一番の名シーン。
荒地の魔女「恋だね。あんたさっきからため息ばかりついてるよ。図星だね」
ソフィー「おばあちゃん、恋をしたことあるの?」
荒地の魔女「そりゃあ、したね。今もしてるよ」

鈴木:シータは歳をとるとドーラになる。

カブが乗ってきたこの城の残骸。鈴木さんの部屋にあったオモチャを宮崎さんが持っていって参考にしたのですが、まだ返してもらっていないそうです……。

「ハウルの動く城」の裏設定

ここからは、「ハウルの動く城がよく分からなかった」という人も必見!知れば100倍「ハウルの動く城」が面白くなる裏設定をご紹介します。

ソフィ―は18歳。実の父母は既に死去しています。「ハッター帽子店」は元々父親の店でした。
しかし、父親が死んでしまい、母親のハニーが経営を継ぐことになります。ところが、ハニーは若い男と付き合い、店に出ないことが多いため、ソフィーは長女として店を支えようとしています。

ハニー(原作の日本語訳ではファニー表記)はソフィーの父親の再婚相手であり、ソフィーの実母ではありません。夫(ソフィーの実父)の死後ハッター帽子店を経営していますが、店にあまりいることなく、外で若い男とよく遊んでいます。

ハウルとの出会い

ハウルが「探したよ」と言ってソフィーの肩に手を乗せるシーン。このときハウルの指輪にある宝石が光ります。これは、後のシーンの大いなる伏線です

ちなみに、宮崎駿監督は、本作の制作中にメインスタッフに「出会ったときに、お互いのことを好きになっている」と話していたそうです。宮崎作品では、男女が出会った瞬間に運命の人と感じて、惹かれ合うのは珍しくありません。

ハウルが「上手だ」と言って、ソフィーを見つめるシーン。絵コンテには、「これが誤解を生むのだ」と書かれています。

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ハウルのモデルとなった街

ハウルの舞台モデルとなった街は、フランスのアルザス地方にあるコルマール。実際にスタッフが現地でロケハンを行なっています。

荒地の魔女のモデルは美輪明宏さん

荒地の魔女の声を担当したのは美輪明宏さん。宮崎駿監督は、作画の段階で美輪さんに演じてもらうことを考えていたため、風貌から雰囲気まで美輪さんに寄せられています

原作小説の荒地の魔女は、原作者ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの叔母がモデルです。偶然ですが、映画の荒地の魔女も、ダイアナさんの叔母にそっくりだったそうです。実際の叔母さんも、ミンクの帽子をかぶっていて、同じような服装だったのだとか。

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マルクル

マルクルは原作ではマイケルという名の15歳の少年です。少年マルクルは、ハウルから魔法を学んでいる弟子。マントを羽織ると、ヒゲ面の魔法使いに早変わりします。

マルクルの声優は、声変わり前の神木隆之介さん。宮崎駿監督が神木隆之介さんをイメージして描いたキャラなので、荒地の魔女の美輪明宏さん同様、神木さんのハマり役となりました。

動く城のドアノブ

動く城はドアノブを回すと円盤も回り、ドアの出口が変わります。緑は城が位置している場所(荒地)、赤はキングズベリー、青は港町、黒は戦地と、色からイメージできる場所に通じています

扉の4色円盤について、押井守監督は「男は4つくらい自分の世界を持っている。そのうち1つは家族に見せられないダークサイドがある」とし、男の内面を描いた作品であると考察しています。

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カルシファー

カルシファーは火の悪魔。体内にハウルの心臓を持ち、魔力で城を動かしています。声を担当したのは、我修院達也さん。ジブリ作品では、『千と千尋の神隠し』で青蛙の声も担当しています。

アニメーションで火を表現するのは大変難しく、本作が公開延期になった際、それでスケジュールに余裕が出来たので、宮崎駿監督自らカルシファーの原画を手直しをしました。

「おいらが死んだらハウルだって死ぬんだぞ」というように、カルシファーは体内にハウルの心臓を持っています。元は、空から堕ちて消える運命にあった星の子でしたが、少年時代のハウルに助けられ、心臓が与えられました。そして、火の悪魔カルシファーとなり、城での共同生活が始まっています。

突然、老婆になる設定は原作者の体験から

ソフィーが突然老婆になるという話を思いついたのは、原作者のダイアナ・ウィン・ジョーンズさんが牛乳アレルギーのせいで、歩けなくなってしまった経験からきています。ダイアナさんはまだ若いころに、突然 年寄りのように歩けなくなってしまったそうです。

「うまし糧を」って?

「うまし糧を」はデイヴィッド・アーモンドが1998年に発表した「肩甲骨は翼のなごり」(日本語訳は2000年に出版)に登場する怪人の口癖が元ネタです。本書は、宮崎駿監督のオススメ本として紹介されています。

宮崎駿監督は『肩甲骨は翼のなごり』の帯にこう載せています。

「心ふるえる、初々しい思春期をふしぎな男との出会いを通して描いている。妙にねじれず素直な描写、心あらわれる結末。ぼくは大スキです。おすすめ。」

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魔王の素質を持つハウル

「汝、流れ星を捕えし者 心なき男 お前の心臓は私のものだ……」
テーブルに焦げ付いた荒地の魔女の魔法の焼印を消すハウルの横顔のカット。この絵コンテから、ハウルが激痛に耐えつつ笑みを浮かべていることが分かります。同時に魔王になる素質があることも書いてあります。

ハウルの魔法で元気が出たソフィー

ソフィーは『腹を立てたら元気が出たみたいね』と言っていますが、実はハウルの魔法の力で元気になっていますこの頃からハウルはソフィーに気を使っているのが分かります。ハウルはソフィーが子供の頃に見た「未来で待ってて」の人だと気づいているので(※後述します)何かと優しくしているのだと思われます。

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ハウルについて

ハウルは、サリマン先生の最後の弟子で、天才的な魔法の才能を持っています。社会とかかわり合うことを拒絶し、荒地を放浪する城で暮らしています。しかし、完全に世捨て人にはなりきれず、ペンドラゴンやジェンキスといった仮名を使って社会と繋がっています。声を担当しているのは木村拓哉さん。

宮崎駿監督はハウルのキャラクターについてこう説明しています。「バーチャルリアリティ(つまり魔法)の中にいて、おしゃれと恋のゲームしかできないハウルは、目的とか、動機が持てない若者の典型ともいえるでしょう

ハウルの寝室

ハウルの寝室はガラクタに埋め尽くされています。宮崎駿監督は、「今の若者たちがフィギュアを集めて飾るのと同じ感覚」とスタッフに説明しています。

またハウルの寝室の担当した吉田昇さんは、宮崎監督の「ハウルはあまり暗い場所では眠らないだろう」という説明を受けて、暗い中に黄緑色の光が当たっている部屋を描いたといいます。黄色と黄緑で光の表現を工夫し、不思議な雰囲気が出ています。

この部屋の背景は、作画、ハーモニー、美術、CGの全ての部署が関わって表現された、ゴージャスな背景美術です。

ハウルと荒れ地の魔女の関係

かつて荒地の魔女と生活していたハウル

「面白そうな人だなと思って僕から近づいたんだ」とハウルは言いますが、実はハウルは過去に荒れ地の魔女と生活していました。 「星をかった日」というアナザーストーリーで二人の在りし日の関係が描かれています。 また、これは鈴木プロデューサーの感想かもしれませんが「ハウルの童貞を奪ったのは荒地の魔女」という説もあります。※年齢的にアウトだと思うのですが…。

「星をかった日」は荒れ地の魔女とハウルのサイドストーリー

これは2012年のニコ生での押井守監督との対談で鈴木敏夫さんが明らかにしたものです。「星をかった日」の「ニーニャ」と「ノナ」は、若き日の荒地の魔女と少年の頃のハウル。。ということは、ノナが育てた星がカルシファーになったという解釈もできます。

井上さんの話では、その際にハウルと荒地の魔女の成れの果てについても触れられていたので、宮崎駿監督の中でこの二人はいろいろ発展していることは間違いないようです。

※『星をかった日』は、2006年1月3日から三鷹の森ジブリ美術館にて公開されている短編アニメーション映画。上映時間は約16分。原作は井上直久の「イバラード」「星をかった日」から。何年も前に井上先生が、新作絵本の構想を宮崎監督に語ったところ、先に短編アニメとして映像化されました。その後、井上先生が「星をかった日」として絵本を出しています。

ニーニャが荒れ地の魔女になってしまった件について

ニーニャの未来が荒れ地の魔女だという件について。これについて原作者の井上先生は、「あの魔女とはあんまりだ。せめてサリマン先生にしてくれ」と言ったのですが却下されたのだとか(笑) 証拠はこちらのツイート↓

参照元ツイート:https://twitter.com/iblard_INOUE/status/388507256452435968

ユーザーからも「『すてきね』と微笑む美しいニーニャがあの魔女に…と驚きでした」や、「荒れ地の魔女に何があったのよ…。老後はマダム・ジーナみたいになるでしょうよ。そのままなら」と嘆く声も聞こえてきます。

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荒れ地の魔女の恋

鈴木さんが選ぶ一番の名シーン。
荒地の魔女「恋だね。あんたさっきからため息ばかりついてるよ。図星だね」
ソフィー「おばあちゃん、恋をしたことあるの?」
荒地の魔女「そりゃあ、したね。今もしてるよ」

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「美しくなければいけない」というサリマンの呪縛

髪色が変わってしまったハウルは「美しくなかったら生きていたって仕方がない」と嘆きますこれはサリマンの呪縛です。金髪=サリマンの希望であり、それは付き人の少年(小姓)を見ればわかります。ハウルもかつてはサリマンの小姓でした。そしてそこから自立するという意味で本来の黒髪に戻り、師匠と決別します。

つまり、サリマンは昔から金髪の少年を美しいと思っており。サリマンから教えを受けていたハウルもそう思い込んでいました。しかしソフィーと出会った事でありのままの自分を受け入れて黒髪に戻り、金髪に戻すことはなかったのです。

闇の精霊を喚び出すハウル

絶望して闇の精霊を喚び出すハウル。
ハウルが体中から出している緑のネバネバは、絵コンテには「セロリのソース」と書かれています。

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ハウルの髪へのこだわり

金髪にしろ黒髪にしろ、ハウルは綺麗なサラサラヘアーが印象的です。絵コンテには『シャンプーのコマーシャルのよう』という記述が複数回見られます。宮崎駿監督がどのCMを意識していたかは不明ですが、とにかくハウルの髪を綺麗に描こうという意志が伝わってきます

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ヒンのモデルは押井守監督

この犬はヒン。どこからともなく現れ、ついてくるので、ソフィーはハウルの変身した姿と思っていますが、サリマンの使い犬です。ハウルやソフィーの様子をサリマン先生に伝えるという役目を与えられています。モデルは押井守さん。声は原田大二郎さんが担当しています。

ヒンについての押井守監督の感想

▼ヒンについての押井守監督の感想:「イヌが僕ならハウルは宮さん」

押井:あれはさー(笑)公開当時、スタッフにもさんざん言われたけど、明らかに僕に対する悪意を感じるよね。だってヒンってダメイヌでしょ。性格も悪そうだし。

――だから押井さんなんですよ。「押井さん出たぁ!」って思っちゃいましたから。

押井:僕も自分の作品のなかでさんざんからかって来たからさ。『パト』に登場する上海亭のオヤジの名前を「崎宮駿」にしたりしてるし。高畑さんは「高畑警部」として登場させて、まあ、こっちは悪役だけど(笑)。言うまでもなく、鈴木敏夫は何度も出しているから。
でも、そのイヌが僕だというなら、ハウルは宮さんだよね。主人公に自分を投影したのって『豚』以来じゃない?

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サリマン先生

マダム・サリマンは、王室付き魔法使い。総理大臣や参謀長を呼び出すことができるほど高い地位にいます。魔法学校でハウルを教え、当時のハウルを自分の後継者として、高く評価していました。それだけに、のらりくらりと暮らす現在のハウルを面白く思っていません。

サリマン先生の小姓

サリマンに仕える金髪のおかっぱ頭の少年達は小姓(こしょう)といいます。絵コンテに「かつてのハウル」という記述があり、少年時代のハウルもこの小姓達のようにサリマンに仕えていました。この小姓達はサリマンの魔法でこの見た目に変えられています。

サリマン先生の声優

サリマンの声を担当したのは加藤治子さん。「魔女の宅急便」でニシンケーキを焼いた老婦人を演じて以来の宮崎駿監督作品への参加となりました。ちなみに、サリマンは原作ではハウルと同期の男性の魔法使いで、映画のサリマンの人物像は原作のペンステモン婦人に近いです。

ソフィーが老婆になったり若返ったりする理由

ソフィーは荒地の魔女に呪いをかけられて老婆になります。ですがソフィーの呪いは早い段階で解けています。しかし、若い姿と老婆の姿を行ったり来たりするのはソフィーの心の現れ(※後述します) また原作によると、ソフィーには小さな魔力があり、彼女の言葉がそのまま実現してしまう微かな魔法を持っています

少なくとも、ハウルと花畑に行った段階でソフィーの呪いは解けていました。しかし、自己否定の強い彼女が自信をなくすと、また老婆の姿に戻ってしまいます。年老いたり若返ったりするのは、彼女の心の内を表しています。そのため、眠ったときや、強い気持ちで行動しているときは、自己暗示が解かれて元の年齢に戻っています。

宮崎監督「自分の感じている年齢を絵にするとこうなるんだ」

このことについて、映画制作当時、63歳だった宮崎駿監督はこのように話しています。

「63歳になった自分にもそういう経験があるけども、人と話していて、自分が20代の若者になっている時もあるし、少年になっている時もある。そうかと思えば、自分がまだ達していない80のおじいちゃんになっている時もあって、それを絵にするとこうなるんだ」

ソフィーの声

ソフィーの声は、少女(18歳)から老婆(90歳)まで倍賞千恵子さん1人で担当しました。倍賞さんは様々な声を作ってアフレコに臨んだようですが、宮崎駿監督は素の声のままでいいとしたので、姿が変わっても声色はあまり変わっていません。

言葉の力について

また、宮崎監督は『千と千尋の神隠し』制作時に、言葉の力についてこう語っています。

言葉は力である。千尋の迷い込んだ世界では、言葉を発することは取り返しのつかない重さを持っている。湯婆婆が支配する湯屋では、「いやだ」「かえりたい」と一言でも口にしたら、魔女はたちまち千尋を放り出し、彼女は何処に行くあてのないままさまよい消滅するか、ニワトリにされて食われるまで玉子を産み続けるかの道しかなくなる。逆に「ここで働く」と千尋が言葉を発すれば、魔女といえども無視することができない。今日、言葉は限りなく軽く、どうとでも言えるアブクのようなものと受け取られているが、それは現実がうつろになっている反映にすぎない。言葉は力であることは、今も真実である。力のない空虚な言葉が、無意味にあふれているだけなのだ。

(略)

世の中の本質は、今も少しも変わっていない。言葉は意志であり、自分であり、力なのだということを、この映画は説得力を持って訴えるつもりである。

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サリマン先生の攻撃

「かごめかごめ」をするこの星の子は、宮崎駿監督が描いたイメージボードでは「ほっといて ほっといて ぼくにさわらないで 死にたいのに 死にたいのに」と言っています。

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ハウルの引っ越し

ハウルは、魔法を使って引っ越しをしました。これまでとは、ドアの4色円盤の色も変わっています。黄色で元ハッター帽子店に、ピンクでお花畑に繋がるようになりました。ハウルは廃屋にドアを繋げるので、この時点でハッター帽子店は無くなっていたことになります。

「星の湖」(ほしのうみ)

動く城が引っ越してきた湖は「星の湖」(ほしのうみ)です。実はかつてハウルとカルシファーが契約をした場所。この湖の環境音はスイスのレマン湖で収録されました。

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家族となった3人

ハウル「君もややこしい呪いがかかってるね。わが家族はややこしい者ばかりだな」

マルクル「ぼくら、家族?」ソフィー「そう、家族よ」 マルクル「よかった!」

ハウルがソフィーに見せた「花畑」

ハウル「ソフィーへのプレゼント。どうぞ」

ハウルがソフィーに見せた花畑を描いたのは男鹿和雄さん。
この花畑は男鹿さんの出身地である秋田県と岩手県の県境付近にある千沼ヶ原がモデルになっています。

ソフィーの呪いは解けている

この場所は、ハウルが少年時代を過ごした花畑です。小屋は、魔法使いだったハウルの叔父が残してくれたもの。自分の思い出の花畑と水車小屋を見せるということは、ハウルはソフィーに告白しているようなものです。しかし、自信のないソフィーは老婆に戻ってしまいます。

ソフィーの見た目がコロコロ変わるのは自己暗示によるもので、このシーンの絵コンテにも呪いはとけていると書かれています。ハウルも老婆に戻ったソフィーをみて「なんてガンコな呪いなんだ」と思っていることが、この絵コンテからわかります。

街を焼きに行く飛行機を攻撃するシーン

このときのハウルの表情は、絵コンテのほうが鬼気迫るものがあります。

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ソフィーが行方不明になった後の「ハッター帽子店」

ハニーはソフィーが行方不明になった後、ハッター帽子店を畳み(店が引っ越し後の動く城の一部になったのはこのためだと考えられる)、若い男と再婚します。絵コンテを見ると、ハニーはまだ30代であることが分かります。ちなみに、宮崎監督はハニーのことを「あの人、可愛いね」と言っていたのだとか。常識に捕らわれず、自分を出せる人が好きなようです。

サリマン先生からの罠

のぞき虫

ハニーは、サリマン先生からの指令で、巾着を置いてきました。室内の様子を覗くために、中には「のぞき虫」がいます。荒地の魔女がすぐに見つけて、カルシファーに食べさせますが、虫を食べたことでカルシファーの魔力が弱まります。

荒地の魔女が吸っているタバコ

荒地の魔女が吸っているのは、義母のハニーが置いていった巾着にあった葉巻です。 煙には、これまたカルシファーの魔力を弱める効果があります。これにより、これまでカルシファーの魔力で守られていたハウルの城ですが、魔力が弱まっているため、初めてサリマンに突破されました。

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ハウルに登場する戦争シーン

戦闘で大破した軍艦が入港してくるなど。度々登場する戦争のシーンは、原作には無い映画オリジナルのものです。宮崎駿監督は「戦火の恋」を描きたかったそうですが、物語の軸をハウルとソフィーの恋にした結果、戦争にどんな背景があるのかはほとんど描かれていません。

ハウルの心象風景

この洞窟は、ハウルの心象風景です。現実のものではなく、ハウルの少年時代の記憶が見えています。ぬいぐるみなどのオモチャは、ハウルの記憶の表れです。

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ハウルの決意

ハウル「僕はもう充分逃げた。ようやく守らなけらばならないものができたんだ、君だ」

ソフィーがヒロインとして目覚めたタイミング

ソフィー「あなたたちにできないなら、私がやってあげる!」

ソフィーはここに自分がいてはハウルが逃げ出せないと城から出ようとします。ソフィーはカルシファーに自分のおさげを差し出します。 ショートヘアーになるシーンの絵コンテには『ヒロインようやく登場!!』と書かれています。ヒロインが終盤に髪が短くなるのはこれが初めてではありませんが、宮崎駿監督の中ではこの時にようやくソフィーが本作のヒロインになったのでしょう。

ショートヘア―になったと同時に、ソフィーは体型も気づかれない程度にスマートになっています。

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倒壊するハウルの城

このときソフィーが城を壊すのは、演出上はハッター帽子店との繋がりを解消し、ハウルが戦わないで済むようにするためです。ハウルは、ソフィーが「逃げましょう。戦ってはダメ!」と言った時、「なぜ?僕はもう十分逃げた。ようやく守らなければならないものができたんだ。君だ」と言って出ていきます。ソフィーが帽子屋にいる限り、ハウルはソフィーを守るために戦う必要があるのだと思います

※しかし後述の通り、作画上、描きやすくするために壊したという証言もあります(笑)

骨組みになったハウルの城

骨組みになったハウルの城は、鈴木敏夫プロデューサーが持っていたネジ巻おもちゃがモデル。宮崎監督が、鈴木さんのデスクに置いてあったものを見つけて参考にしたそうです。ただ、おもちゃはまだ返してもらっていないのだとか(笑)ちなみに、宮崎監督は作画の手間をはぶくために、ハウルの城を半壊させることにしたそうです(笑)

ハウルの城が戦火の中を走りまわるシーンについて

▼鈴木敏夫×押井守×川上量生の三者対談

鈴木:ボッシュの絵を見に行ったじゃない。覚えてる? 一枚の絵が気に入ったって言って。それで、お城の後ろの方で、燃えてる火があるじゃない。オレなんか『ハウルの動く城』は、あそこを切り取って、これを映画の中で描いたらどうかと。その戦火の中を、ハウルの動く城が走りまわる。「宮さん、そういうのが観たいですよね」って言うと、「そうだね」って言うんだよね。良いシーンなんですよ、頭の中で浮かぶでしょう? ハウルの動く城が、戦争のさなか、その中を走りまわるっていう。「そろそろ、そのシーンですね」って宮さんに言ったら、「いや、やりたいけどさ、鈴木さん。時間がないんだよ」って。

押井:余計なこといっぱいやってんじゃない(笑)。

鈴木:それで、会社のぼくの部屋に、ネジ回しで動くオモチャが置いてあったんですよ。そしたら「鈴木さん、これ貰っていいかな?」って言うんですよ。「貸して」って持っていっちゃったんだよね。「どうするんですか?」って言ったら、「ちょっと使いたいことがある」って。そしたら、絵コンテに登場するんですよ。 なにかっていったら、ハウルの動く城の、いろんなお城の部分が吹っ飛んじゃって、躯体しか残らない。それが、その戦火の中を動きまわるっていう設定に変わるんですよ。「こうすれば描けるから」って。

川上:吹っ飛ぶのは、描くのが楽だからっていうだけのために、ああなったんですね?

鈴木:そうそう(笑)。

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大粒の涙を流すソフィー。

大粒の涙を流すソフィー。作画監督を務めた山下明彦さんは、最初は涙が大きすぎて戸惑ったそうですが、感情表現としてリアリティを求めているゆえのデフォルメと解釈して、描いたそうです。

少女の泣き顔

宮崎駿監督は美少女の崩れた泣き顔を描くのが苦手です。顔を手で覆ったり、何かに顔を伏せたりして肩を震わせて泣くことが多いです。ソフィーの場合は、お婆ちゃんの時は泣き顔が丸見えでしたが、少女の場合は顔が崩れるのは一瞬で、すぐに顔が見えなくなってしまいます。

こんなときにどんな顔をしたらいいのかわからないヒン

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ハウルはソフィーを覚えていた

ソフィー「あたしはソフィー!待ってて!あたしきっと行くから!未来で待ってて!!」

子供時代のハウルは未来から来たソフィーの姿を見ており、街で「探したよ」と声をかけたのはこの時のことを覚えたいたからと解釈できます。ハウルの指輪は探し求めている人物に反応するようなので、この時に光ったと思われます。

子供の頃のハウルにソフィーが言った「未来でまってて!」が、冒頭のハウルの登場シーン「探したよ」に繋がるという壮大な伏線回収です。

星の子の死

流れ星が水面に落ちると消えますが、これは星の子の死を意味しています。
カルシファーもかつては星の子で、少年時代のハウルと契約して彼の心臓を貰うことで、他の星の子と違って死を免れました。

ハウルがプレイボーイになった理由

一方のハウルは、カルシファーと契約することで魔力を増大することができました。しかし、大切な心臓を預けてしまったために心に喪失感ができてしまい、それを女性のハートで埋めようとしたがために稀代のプレイボーイになりました。

冒頭でウワサされていた「ハウルが女性の心臓を奪う」というのは、心を奪うという意味があり、英語では心臓と心はどちらも“Heart”であり、言葉を掛けた表現になっています。

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ハウルがずっと待っていたことに気づくソフィー

ソフィー「ごめんね、あたしグズだから…。ハウルはずっと待っててくれたのに」

荒地の魔女の執着

荒地の魔女「あたいんだよぉ!」
炎炎に包まれてもなお『ハウルの心臓』を欲する荒地の魔女。全ての魔力を失い年老いた彼女も、『ハウルの心臓』への妄執だけは捨てられなかったようです。

鈴木さんの語る見どころ。「ハウルの心臓を手放さなかった荒地の魔女が、なぜ心臓を手渡したのか、わかりますか? 答えは、最後まで観ればわかります。台詞が一切ないところに注目です」

カルシファーが死ななかった理由

ソフィーは願いを口にしてカルシファーの中にある心臓をハウルに戻します。本来ならこれでカルシファーは死ぬはずでしたが、彼は自由の身となりました。原作ではソフィーは口にしたことが現実になる魔力を有しており、映画でもその設定が踏襲されています。

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心を取り戻したハウル

ハウル「こりゃひどい、体が石みたいだ」
ソフィー「そうなの、心って重いの!」

ソフィーの髪の色

映画では、ハウルは「ソフィーの髪の毛、星の光に染まっているね」と言っていますが、絵コンテの段階では「ソフィーのカミって赤かったんだね。きれいだよ」とあります。当初は、髪の色を元に戻すことを考えていました。

カブは隣国の王子

ソフィーが荒地でひっぱり出したカカシのカブ。カブが隣国の王子様に戻るシーンは本作で動画チェックを担当した舘野仁美さんの提案です。一度は却下されましたが結局採用されました。声優はチームナックスの大泉洋さんです。本作では、冒頭に登場したソフィーをナンパした兵士と、二役を演じています。

※映画では愛嬌のある愛されキャラですが、原作では設定がかなり異なっていて、怖いイメージのキャラクター。原作のカブはサリマン(ハウルと同期の男性の魔法使い)です。ソフィーはカカシの来訪を嫌がっていました。

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戦争はすぐに終わったわけではない

鈴木敏夫さんは「サイゾー」2005年2月号でこう発言しています。『あなたは最後のカットをどう見ましたか? 飛行機が飛んでいるでしょ。宮崎駿としては、また新たな戦争が始まっているんですよ。あの飛行機は帰ってきたんじゃなくて、また戦場に、向かっているんです。』

サリマンは『このバカげた戦争を終わらせましょう』と言いますが、ラストシーンには雲の下を爆撃船が飛ぶカットがあり、絵コンテには『戦はすぐにはおわらない』と書かれたあります。制作中にイラク戦争が起きており、それが本作の戦争の描写に影響を与えました。

自由になった二人

誓いと契約に縛られた魔法使いと、長女という立場に自分を縛りつけていた少女。不自由から解放された2人は地面を離れ、宙を飛んでいきます。心を取り戻したハウルと、自分を取り戻したソフィーの冒険はこれからも続いていきます。

主題歌「世界の約束」

「ハウルの動く城」のラストで流れる作品の主題歌鍵盤「世界の約束」。詩人の谷川俊太郎さんが作詞を担当、作曲は「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を作曲し歌った木村弓さん。ソフィー役の倍賞千恵子さんが歌っています

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その他の裏話

当初は細田守さんが監督する予定だった

これは今となっては有名な話ですが、「ハウルの動く城」は当初細田守さんが監督を務める予定でした。絵コンテも描いていましたが、諸事情があって企画が頓挫し、結局宮崎駿さんが監督を務めることになります。

「ジブリパーク」にハウルの城が再現される

2022年にオープンする「ジブリパーク」には、星の湖に辿り着いたときのハウルの城が再現されます。ちなみに映画でのハウルの城は、CGで動かしています。無造作に積み上げられた小屋や煙突などは、それぞれ個別に描かれていて、パーツを組み合わせて動きが作られました。CGを担当した片塰満則さんによると、動きをつける上でバックパッカーの積み上がったリュックが参考になったそうです。

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原作のハウル

原作のハウルの設定はちょっと違うそうです。それをまとめた解説図が話題です。

▼原作本

まとめ

いかがでしたでしょうか。「ハウルの動く城」は知れば知るほど魅力的な話だと思います。また鈴木プロデューサーのQ&Aにはなかなか驚きの回答がありました。この裏設定をみてまた映画をみれば、さらに映画が楽しめるのではないでしょうか。

ハウルにはフランス哲学が色濃く反映されています。国家の戦争の道具にならないためには、動き回って定住しない方法しかないのですよね。国家という制御不能のリヴァイアサン。そしてそれを超える二人の愛。ハウルはすごく素敵な話です。ぜひ、皆さんももう一度見てみてください。

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参照元:https://twitter.com/JP_GHIBLI

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