158 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:12:35.66 ID:rW/sMJ5uo
―――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
ガチャガチャ……
少年「はあ……はあ……。くっ」
××「おいっ!お前!それはこっちに運ぶんだろうがっ!なにしてんだ!!」
少年「えっ……? でもあっちに運べって言われました……けど」
××「どうせお前が聞き間違えたんだろうが!口答えをするんじゃねえクソガキ!」
少年「……すいません」
××「まったく、お前みたいなガキを雇うのは本当は法律で禁止されてるんだぞ」
××「だがお前がどうしても働きたいっていうからこうしてこっそり雇ってやってるんだ」
××「その恩を忘れるんじゃねえ!!いつでもお前なんてクビにできるんだからな、ええ!?」
少年「……すいません」
ジリリリリリリ……
××「……フン。時間だな」
××「全員休憩に入れ!!1時間後に持ち場に戻らなかった奴はクビだからな、クビ!!」
○○「よう。まーたあのジジイにこっぴどくやられてたな。気にすんなよ」
○○「で、今日はここで食べてくだろ?なににする?」
少年「……あー……えっと……朝食べすぎちゃったんだ……だから今日もいらない」
○○「またかよ?それうそじゃねえだろうな?……ほんとは金がないんじゃねーの?」
○○「なあ水臭いぜ。言ってくれりゃちょっとしたもんくらい出せる」
少年「たまにパンをくれるだけで十分だよ。それ以上なにかして、あいつにばれたら○○がクビにされちゃうって」
少年「○○は一家の大黒柱なんだからそれは不味いだろ」
○○「しっかしなあ」
少年「僕は屋上に行ってくるよ。じゃあね」
159 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:15:18.49 ID:rW/sMJ5uo
少年「……」
少年「……今日も曇りか」
少年「明日も明後日もその後もずっと曇り……」
少年「くそっ 何が『雇ってやってる』だ。あのジジイめ」
少年「大人の給料3分の1しか寄越さないでこき使うくせに。足元見やがって!」
少年(早く大人になりたい。そうしたらもっとお金がはいる。そうしたら……あいつにも)
少年(屋上からは橋の向こう側が見える。
こっちとはまるで違う、どこもかしこもキラキラしてる別世界……)
少年(あ……僕と同じくらいの年の人が歩いてる。横にいるのは友だちか)
少年(笑い声がここまで聞こえてきそうだ。……あれが制服ってやつなんだろうな。
靴もバッグも服も、なにもかも高そうだ)
少年(……あいつらの着てるあの服を売れば……どれだけの薬を買えるだろう。
高いほうの薬だってたくさん買えるんだろうな……)
少年(あそこの高級レストランで食べてる奴らの一回分の食事代だけで
妹の病の進行をどれだけ遅らせることができるんだろ)
少年(このままだとあいつは……もう長く……は)
少年(僕が……橋を越えて、ちょっとだけ奴らの金を盗んでしまえば)
160 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:16:54.08 ID:rW/sMJ5uo
少年「だって命がなにより尊いはずだろ?」
少年「……僕が盗んだって、あいつらはそんなに困らないはずだ」
少年「あいつらの食事一回分。持ち物ひとつ分。たったそれだけで妹の病気を治せるかもしれないんだ」
少年「そしたらこんなところすぐ出ていってやる。
それでお母さんとお父さんを探しに……この街壁の外へ……妹といっしょに」
少年「あいつといっしょに……」
少年「……」
少年「……」
少年(……わかってる。盗んだ金で病気が治っても、あいつは喜ばないだろう)
少年(いきなり大金をもってったらすぐ気付くだろうな)
少年「……!やべっ もう休憩時間終わる!またあのジジイにネチネチ言われる。戻らなきゃ!」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
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161 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:18:59.68 ID:rW/sMJ5uo
ダン!
勇者「くそっ 鍵はどこにあるんだよ」
元神官「雄竹の里 神の宮 永遠の泉 離島の浜辺……
この『終末記』にあったっていう文言ですが」
元神官「もしかしたらこの4か所にそれぞれ鍵があるんじゃなくて、
この4つがひとつの場所を指しているのかもしれませんね」
戦士「えー……と、すると、竹林と泉と神宮がある離島ってことか?」
戦士「さっきから地図とにらめっこしているが、そんなところないぞ。
俺たちも広く世界を旅してきたがそんな離島聞いたことない」
元神官「まあ、竹と泉と島はともかく、神宮なんて限られてますからね……
神殿に登録されてるところは全て探したし」
元神官「とすると、もっとひねった解釈が必要なんですかね。
竹……イネ科タケ亜科多年生常緑木本、タケ群とササ群に大別、竹八月に木六月、筍……」
勇者「俺を頭痛で殺す気か? 難しい単語の羅列を今すぐやめろ」
勇者「だーーもう、なにが『終末記』だっ 古代人のアホが!!
そんな意味わからんヒントだすんじゃねーよ!なぞなぞ解いてるほど暇じゃねーんだよ!」
姫「落ち着きなさい勇者。魔王さんがあんなことになって焦るのも分かりますが、
冷静にならないと分かるものも分かりませんわ」
勇者「ひ、姫様。すみません、お見苦しいところを」
姫「いえ構いません。ところで……行き詰っているのならほかのことに目を向けてみませんか?
鍵のことも何かひらめくかもしれないわ」
元神官「と仰いますと……?」
姫「鍵ではなく扉……と思わしき場所をお兄様が発見なさったの。私が案内します」
勇者「扉を……!?」
162 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:20:22.19 ID:rW/sMJ5uo
王立図書館
勇者「……図書館!?」
姫「ここの地下よ。ついてきて」
コツ……コツ……コツ……コツ
元神官「あれ?この先って……?図書館は地下2階までですよね?」
姫「ええ。地下3階以下は王家の者と図書館長のみ閲覧可能となってるわ」
姫「向かうのは地下4階、最下階。暗いから足元に気をつけて……きゃっ」ズルッ
戦士「大丈夫ですかな」ガシ
姫「……ごほん。私みたいにならないように皆さんくれぐれも気をつけて」
姫「……ここよ。ここが地下4階」
勇者「ここに扉が?」
姫「ええ。下を見てちょうだい。床の紋様、扉に見えませんか?
それにちょうどドアノブのところが窪んでいるでしょう」
姫「もしかしたら、そこに嵌めるべきものが『鍵』なのかも……」
勇者「確かに扉に見えますね。これが……。この先に、『彼』がいるのか」
163 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:22:30.38 ID:rW/sMJ5uo
元神官「? 戦士さんどうかしました?獅子の像を見つめて……
なにかあります?」
戦士「ああ、この像だが、一度壊れたものを修復したものなのだろうか」
姫「その通りですよ。人魔戦争のときの王都襲撃で、
確か図書館は地下2階までしか被害がなかったはずなんですけれど」
姫「ここでその獅子像だけが壊されていたみたい」
戦士「これは……剣による傷だな。それも相当の強さで壊されたものだ。ふうむ」
勇者「……」ジッ
勇者「なあ、こいつの左目」ガコッ
戦士「うおおお!?お前何やっとるか!?」
元神官「勇者様!?弁償ですよ弁償!!払えるんですか!?」
勇者「す、すみません姫様!でも四の五の言ってらんないっていうか!弁償はするんで!」
姫「いえ、いいですけど……その水晶が何か?」
勇者「この床の扉のくぼみにぴったり嵌りそうだと思いまして。
ちょっとやってみますね」
ガコ
勇者「ぴったり嵌りましたね」
姫「……」
元神官「……」
戦士「……」
164 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:23:46.02 ID:rW/sMJ5uo
元神官「……ふう……竹も宮も泉も離島も全く関係ありませんでしたね~~!ふう~~!」
勇者「俺いつかあの終末記書いた古代人に会ったら、絶対邂逅一番ぶん殴るわ」
戦士「やってやれ」
姫「と、ところでこの先に……創世主がいるのですよね?」
勇者「姫様は宮殿に戻って皆に知らせて来ていただけますか?
俺たちはこのままあいつに会ってきます!殴ってきます!」
戦士「よし、行くか!!」
元神官「ええ!!」
姫「でもその扉、どうやって開くの?」
勇者「……え!?…………ああ、えっと……」
勇者「…………どうする!?戦士!!元神官!!!」
戦士「いや、わからっ……」
ガパッ
元神官「ああっ!? 床が……っ!!」
姫「ちょっ私まで! きゃーーっ」
戦士「ぐぬわあああああ!」
勇者「うわああああっ」
165 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:26:41.02 ID:rW/sMJ5uo
スタッ スタッ グキッ!
勇者「おい誰だ最後のグキッて」
戦士「俺の腰だ……!!」
勇者「大丈夫か!?無理すんな!戦士は最年長なんだから!おっさんなんだから!」
戦士「だ、黙れ!俺はまだ現役だ。姫様、お怪我はありませんか!?」
姫「ええ、あなたが抱えてくれたおかげで。ありがとう」
元神官「あーいいな姫様はお姫様だっこされて優しく受け止めてもらえてー……」
勇者「ん?なんだよ、俺だってお前のことちゃんと同じように受け止めてんじゃないか」
元神官「逆です。勇者様、私がいまどんな体勢か見えます?海老反りですよ!!!
お姫様だっこは私が仰向けの状態になっていないと成り立ちません!!」
勇者「あー わっり!暗くて見えなかったわ。すまんすまん」
元神官「誠意がこもってないんですよぉ誠意が……!
はーっ もう、全然女の子の扱い方が分かってませんね……っ」
元神官「そんなんじゃいつまでたっても彼女できませんよ勇者様」プイ
勇者「なぁ……っ!?それとこれとは関係ないだろ!
つーかお前こそそろそろ男捕まえて結婚しないと婚期……」
元神官「勇者様、これから創世主に会うかもしれないっていうのに、そんな無駄話してる暇ありませんよ」
元神官「さあ、創世主はどこなんですか!?気を引き締めていかないと……!!」シュッシュッ
勇者「おいっお前から言いだしたんだろーが!」
166 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:35:08.82 ID:rW/sMJ5uo
姫「この空間はなんでしょう。地下4階よりも下なんてないはずなのだけど」
戦士「大分広い空間ですな。む、あそこになにか置いてあります」
戦士「……これは?台座か?」
勇者「こっちは大きさと形状からして剣の台座かな」
元神官「もうひとつは何でしょうね。何でもおけそう。窪みの大きさからして、書かなにかでしょうか」
勇者「……ここには創世主はいないようだな」
勇者「……あれが扉じゃなかったのか?」
勇者「……」
勇者「いやでも、姫様でさえ知らなかった王立図書館の地下とか
なんかそれっぽくないか。もうちょっと調べてみようぜ」
姫「なんか穿った見当のつけ方するわよね、勇者って……」
戦士「いつもあんなんですよ」
コツコツ
コツンコツン
勇者「ん!! なんだかここの壁だけ、叩いた時の音が違うぞ。
隠し通路があると見た」
勇者「姫様……ここの壁ブッ壊していいですか?」
元神官「勇者様、もうちょっと言い方考えましょうよ」
姫「非常事態ですもの。責任は私がとるわ。やっちゃってください」
ガラガラガラ……
姫「あらっ 本当に隠し通路……というか隠し階段が向こうに!
こんなのいつつくられたのかしら?」
戦士「まだ下があるのか」
167 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:36:59.85 ID:rW/sMJ5uo
勇者「いま、地下何階あたりだ……?」
勇者「ずいぶん長く階段を下ってきたが」
元神官「螺旋階段なのでなんとも言えませんね。
でも小一時間は降りてますよ。まだ続くんですかね……」
戦士「目回ってきた」
姫「ふう……これは一体どういうことなのかしら」
姫「あっ 見て!下に光が漏れてるわ。きっとあそこで階段は終わりよ」
ギイッ
元神官「うっ 眩しい。ここは……」
姫「! 扉があるわ!」
勇者「あの扉が光ってんのか」
戦士「これは当たりなのではないか?誰も知らない地下の光る扉とはかなりそれっぽいぞ」
元神官「確かにこの上なくそれっぽいです」
姫「あなたたちの会話、ふわっふわ過ぎません!?」
勇者「これは何でできてるんだろう。不思議な……感じがするな」
勇者「そうだ、時の神殿と同じような感じだ。この向こうに創世主がほんとに……」
元神官「……」ゴクリ
勇者「…………」
姫「……」
168 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:44:28.59 ID:rW/sMJ5uo
勇者「おい出て来い創世主!!あの影出すのやめろ!!ふざけんな!!説明しろ!!!」ガンガン
姫「さすが勇者。数秒前の神妙な空気を一瞬で壊しましたね」
元神官「ごくりとかやっちゃった自分が恥ずかしいです」
戦士「……勇者、気持ちは分かるが鍵がないことには無駄だろう」
勇者「チッ」
勇者「しかし、間違いないな。これが俺たちの探していた扉だ」
戦士「根拠があるのか?」
勇者「ああ。触った瞬間びびっときた。なんというか……」
勇者「ぞわっとした。具体的に言うとそうだな……」
勇者「………………ぞわぁってしたんだ」
元神官「頑張れ勇者様の語彙!」
勇者「とにかく間違いない!あとは鍵を見つけるだけなんだ!」
勇者「あとは、鍵を……!!」
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169 :◆TRhdaykzHI 2014/05/21(水) 22:49:00.70 ID:rW/sMJ5uo
きょうはここらへんで
1作目から読んでくれてる方ありがとうございます
こんな続いちゃってすみません 完全に自己満ですはい
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/22(木) 00:28:13.28 ID:KwqvQJCS0
乙
171 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/22(木) 00:55:46.99 ID:AsL9BJUt0
乙
勇者の語彙力ェ…
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/22(木) 01:10:22.00 ID:aOkWEbu1o
乙
173 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2014/05/22(木) 02:22:09.84 ID:7WRNOgz20
やべ見逃してた
ずっと見てるぞ!おつ
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/05/22(木) 03:44:54.44 ID:f1OTS+B20
やっと追いつきました!
乙です応援してます
177 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:46:44.29 ID:0pa6hmm8o
――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
少女「お兄ちゃん、きょうはおやすみなの……?」
少年「そっ!休み。今日は家にいる」
少年「ちょっと外出てみるか?」
少女「いいの……?」
少年「今日は顔色もいいし、咳もでてないからな。でもちょっとだけだぞ」
少女「そといく!いきたい」
少女「いきたいいきたいいきたいっ」
少年「だからちょっとだけだぞ!じっとしてろ、マスクつけて……」
少年「マフラーも。上着も!咳でたらすぐ帰るからな」
少女「うん……!」
少女「わー 人がいっぱいいるよ、お兄ちゃん」
少年「そりゃいるよ。街だからな。どこ行きたい?」
少女「シスターさんにあいたいな……」
少年「じゃ教会だな。どうせ暇してんだろうから相手してくれるよ」
178 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:47:28.89 ID:0pa6hmm8o
スタスタ
少年「……ん?」
少女「…………」
少女「けほ……」
少女「けほっ……ごほごほ」
少年「……あー……やっぱだめだな。帰ろう。また今度シスターには会えるよ」
少女「ごほ…… うん……」
少年「おんぶしてやるから」
少女「うん……ごめんね……」
少年「なんでお前が謝るんだよ……」
179 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:48:06.76 ID:0pa6hmm8o
夜
少女「ごほごほ……げほっ……けほ」
少年「薬飲んでもおさまらないな……くそ、なんでだ?」
少年「前はこれでおさまったのにっ……」
少年(……もう効かないのか?)
少年(……どうしよう……)
少年(…………だめだ、僕が兄貴なんだからしっかりしないと)
少年「ごめんな、やっぱり今日外に連れてかなければよかったな」
少年「……ごめん……大丈夫か?」
少女「きょうたのしかったよ……」
少女「またいっしょにつれてってね」
少年「うん……行こうな」
180 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:49:15.82 ID:0pa6hmm8o
* * *
少年「くそ、あのジジイ」
少年「僕が9歳の誕生日を迎えたら給料上げるって前に言ってたくせに……
しれっと忘れたフリしやがって」
少年「どうせ最初から嘘だったんだ……ハゲジジイめ」
少年(まあいい、今日は給料もらったし、あいつにもいいもの食べさせてやりたいな)
○○「よう。持ち帰りでなんか買ってくかい」
少年「うん、ライ麦パンふたつとあと卵……それからオレンジのジャムも」
○○「ははは、ここは食堂であって食材店じゃないんだがな。まあいいさ」
○○「白パンふたつにオムレツにジャムに、えーとほうれん草とソーセージの炒め物?」
少年「は!?ぜんぜん違うって!なに言ってんだよ? そんな金ない」
○○「気にすんな、今日だけ赤字覚悟の全品50%オフセールだ。いつも通りの値段でいいよ」
少年「そんなことしたらあいつにばれるって……!」
○○「あのジジイはもう帰ったよ。ほら早くしねーと俺の気が変わっちまうぞ、いいのか?」
少年「……ほんとにいいの?」
○○「いらねーなら別にいいけど?」
少年「いる!いります!ありがとう!!」
○○「また明日な」
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181 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:50:20.40 ID:0pa6hmm8o
少年「げっ 外もうこんなに暗い。今日は仕事が長引いたからだな」
少年「早く帰らないとあいつも心配してるだろうな」タッ
タッタッタッタ……
少年(ここの通り……暗くなるといつもより倍治安悪いんだよなぁ。気をつけないと)
少年(にしてもよかった。今日の晩御飯は豪華だ。あいつもうまいもん食えば元気になるだろ)
少年(野菜と肉なんて食べるのいつ振りだろ?高いんだよな)
少年「!」
少年(花か……つんでこうかな。女の子だしこういうの好きだろうな)
少年「本物ならもっといいんだけど。滅多にお目にかかれないし」
少年(こんなんでも喜ぶかな……)
少年(さ、帰るか。もうすぐだ)
スタスタスタ……
スタスタスタ……
少年「……」
少年(足音……?)
182 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:50:57.10 ID:0pa6hmm8o
少年(……後ろに誰かいる……? 気のせいか?)
少年「………」ダッ
グイッ
少年「うぐっ」
ズルズル
少年「おいっ 離せよ!なんなんだよっ」
ドサッ
「いやー……ね?随分いいもん持ってるなーって。お兄ちゃんたちにもそれ分けてくんねーかな」
「一人じゃ食べ切れね―だろ?」
「痛い目合いたくなかったらーー……分かるよなぁ、ガキ」
少年「……!」
少年「……こ……これは一人で食べるんじゃなくて……」
少年「家で待ってる妹と…………」
バキッ
少年「!!」
183 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:51:44.15 ID:0pa6hmm8o
「うんうん、だからね?その妹と同じくらい俺たちもハラ減ってるわけ」
少年「……う……ぐ…… ふ、ふざけんな。これは……だめだってば」
「おっ、頑張るね少年。そういうの大事だよ」
「いつまで持つかな? 俺1分と見た」
「じゃあ俺2分。ひゃははは」
・
・
・
・
・
・
・
・
少年「……………………ゲホッ……」
「うっわ こいつこんなに金も持ってるぜ。ラッキー」
「じゃあな坊主。悪いな。俺たちを恨まずに国を恨めよ」
184 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:53:32.22 ID:0pa6hmm8o
少年「……かえせよ!!それだけは……頼む、返してくれよっ!」
少年「薬も買わないといけないんだよ……っ!食べ物……だって!それがないと……」
「あー?知るかよ。おいさわんじゃねー」ゲシ
少年「うわっ!!」
「あははははは……」
少年「……」
少年「待てよ……待ってくれよ……なあ」
少年「待って……」
少年「…………」
185 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:54:09.79 ID:0pa6hmm8o
少年「…………ハァ」
少年「……いってぇ……くそ、鼻血とまんねえ」
少年(あ……)
少年(花もあいつらに踏みつぶされてぐちゃぐちゃになってる……
これじゃあいつに持ってけないな)
少年(……)
少年「あー……明日からどうしよう」
少年「………………」
ピラッ
少年「はあ……はぁ…… わぶっ! なんだよこれ。チラシ……」
少年(街の外の学問施設……奨学生募集……年齢問わず……生活金全補助……)
少年「街の外…………か」
186 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 21:59:19.38 ID:0pa6hmm8o
少年(もしも僕一人だけだったなら)
少年(こんなクソみたいな街を抜けだして、このまますぐに街壁の外へ行ったのに)
少年(もしも僕一人だけだったなら高価な薬を買う必要もなく。
食事代は一人分ですみ、毎日怒鳴られながら一生懸命仕事を続ける必要もない)
少年(もしも僕が一人だけだったなら
妹の止まらない咳を聞く度に感じる胸が押しつぶされそうなほどの不安もない)
少年(もしも……)
少年(…………逃げたい。
全てを捨ててこの街から逃げ出したい……)
少年(街の外は本物がたくさんあるに違いない。
少なくともここよりはマシなところだろう)
少年(僕一人なら逃げられる。着の身着のままであの門を通り抜けてしまえばいいだけなのだから)
少年(食べ物も水もなんとかなるだろう。
最悪一日なにも口にしなくても耐えられる。そんなことは慣れている)
少年(穴が開いているこの靴で、どこまでもどこまでも走っていって……
荷物なんか持たずに……)
少年(軽いままならどこまでも走っていけるんだ)
少年(そうしてるうちにきっと世界のどこかにいる僕のお母さんとお父さんにも会えるだろう)
少年(見つかるだろうか。僕がずっと欲しかったものが)
少年(僕は僕を守ってくれる存在がほしい)
少年(庇護してくれ、困ったときに助けてくれる存在が、喉から手がでるほどほしい。
大丈夫だと言って安心させてくれる存在がほしい)
少年(ずっとほしかった)
少年(この街の外なら見つかるかな……)
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187 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:04:31.86 ID:0pa6hmm8o
少年「……」
少年「……」
少年「………………」
少年(だめだ……それじゃだめなんだ)
少年(街の外がどんなに素晴らしい世界だったとしても……
お母さんとお父さんに会えたとしても……)
少年(仕事をしなくてよくても、毎日おいしいご飯が食べられたとしても)
少年(横にあいつがいなきゃ、僕は本当に笑えないよ……)
少年「うっ……ぐす……うぐっ…… いてっ」
少年「こんなこと考えるなんて最低だ……」
少年「……早く、帰ってやらないとな。随分遅くなっちまった」
少年(とりあえず家の家具とか僕の服とか売って……仕事も増やしてもらって
それで今月はなんとか乗り切ろう)
少年(食費も僕の分を削ればぎりぎりいけるかもしれない)
少年(……お母さんの……ペンダントも、必要なら売ろう。
そうしないと薬は買えないかもしれない)
188 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:05:29.32 ID:0pa6hmm8o
少年「あっ 今日の分の夕飯」
少年「くっそー……あいつら絶対いつかぶっ殺してやる……」
少年「仕方ない、こんなボロボロの上着でも売ればちょっとくらい金もらえるかな」
少年「うっ さむ……」
コツ……コツ……コツ……コツ……
少年(……パンいっこしか買えなかった……くっそ)
少年(あー、もう10時……あいつ寝てるかな)
ギイィ……
少年「……」
少年「□□□□……」
189 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:06:30.48 ID:0pa6hmm8o
少年(寝てるかな……?)
ドタドタドタッ
少年「!?」
少女「うわあああああああんっ!」ギュッ
少年「えっ!? な、なんだ!?」
少女「お兄ちゃん、お兄ちゃん……っ」
少女「うえええええん……ひぐ……うわああああああああんっ!!」
少年「どうした? なにかあったのかっ?」
少女「おにいちゃぁん……うっう……えぐっ」
少年「……帰るの遅くなっちゃってごめんな。仕事……長引いてさ」
少年「□□□□」
少女「……□□□□、お兄ちゃん」
少女「お兄ちゃん……ごめんね。ごめんね……」
少年「なんでお前が謝るんだ?」
少女「ううん……」
190 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:08:12.78 ID:0pa6hmm8o
少年「仕事長引いたうえに帰り道でこけちゃって、こんな有様だ」
少女「いたい……?」
少年「いや、そんなに」
少女「ひやすのもってくる」
少年「ありがと」
少年「お腹すいてんだろ? 遅くなって悪いな。ほら」
少女「……」
少女「お兄ちゃんは?」
少年「実は、今日どうしても帰り道に腹がへって、歩きながら僕の分は食べちゃったんだ」
少女「えーっ」
少年「悪い悪い。我慢できなかった」
少年「うまいか?」
少女「うん。おいしい。……でもおなかいっぱいになりそうだから、はんぶんこしよ」
少年「全部食え。食わないとチビのまんまだぞ」
少女「お兄ちゃんだってちっちゃいじゃん! はい」
少年「ちょ…… むぐっ」
少女「もうお兄ちゃんの口にはいったから、それお兄ちゃんのだよ」
少年「……お前だんだんズル賢くなってくな」
191 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:09:30.67 ID:0pa6hmm8o
少女「……ね、お兄ちゃん」
少女「……ずっとだまっててごめんね」
少女「ずっとだましてて……ごめんね」
少女「……もういいんだよ」
少女「いいことおしえてあげる……」
少女「カギをね……あけてあげる」
少女「ばいばい。お兄ちゃん」
―――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
192 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:12:12.04 ID:0pa6hmm8o
魔王城
魔王「…………ぐー……」
勇者「ハァ……まだずっと寝たまんまか」
勇者「……アホ面だなぁ」
竜人「あ?」
勇者「ハッ……お前がいたの忘れてた……すいませんなんでもないです」
竜人「一刻も早く鍵を見つけたいのですが、なかなかうまくいきませんね」
魔女「でも王都の扉には鍵穴がなかったよねー。てことはやっぱ普通の鍵じゃないんじゃない?」
勇者「普通の鍵じゃない……じゃあ何なんだ」
勇者「鍵って何なんだよ……」
勇者「魔王、すぐ全部終わらすからな。もうちょっと待ってろよ」
魔王「…………」
魔王「…………」パチ
勇者「魔王!?」
魔女「魔王様?」
竜人「目が覚めたのですか!?」
193 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:15:58.14 ID:0pa6hmm8o
魔王「……」
勇者「俺が分かるか?」
魔女「ちょ、どいて勇者!あたしが魔王様と話すのっ!!」
勇者「いってえ!やめろ魔女、毛が抜けるっ」
魔王「ゆ……ゆうしゃくん……」
魔王「勇者くん…………きけ」ガッ
魔王「……か……かぎは……かぎ……は」
勇者「鍵!? 鍵がどうした?」
魔王「鍵は…… も……ものではない……」
魔王「……ことば……」
魔王「……『お…………」
勇者「『お』……!?」
魔王「ぐぅ……」
勇者「寝た」
194 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:22:58.96 ID:0pa6hmm8o
竜人「鍵は言葉……?『おぐう』ってなんでしょう!?」
勇者「『ぐう』は魔王の寝言だ」
勇者「一体『お』って……?」
勇者「ん……まさか」
魔女「分かったの?」
勇者「……ちょっと試してみたい。王都に行ってくる!」
竜人「私たちも行きます」
195 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:23:59.94 ID:0pa6hmm8o
* * *
王都 図書館地下
元神官「勇者様、鍵を見つけたかもって?」
姫「……本当に?」
忍「勇者様ほんとに鍵見つけたんですかー!?」
妖使い「どんな鍵だったんだ?もったいぶらずに見せてくれよ」
忍「あーっ私も見たいです。見せてください」
妖使い「なあ勇者聞いてる?気になるなあ、見せろって」
勇者「ええい左右からやかましい!見せることはできないよ」
勇者「鍵はものじゃなかったんだ」
妖使い「ん……?」
勇者「いま試す」
196 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:26:28.39 ID:0pa6hmm8o
勇者「……」
勇者「『おかえり』」
……カチャ……
勇者「!」
ギイィィィ……
勇者「うぉわっ ほんとに開いた」バタン
魔女「いやいや、なんで今閉めたの。早く突撃しよーよ」
竜人「さっさと創世主ぶっ殺しに行きましょう。もう一回開けてください」ブンッブンッ
戦士「殺る気満々か お前ら。殺しに行くわけではないのだぞ」
騎士「そそそそそうですよ、早く世界の異変をととと止めませんととと」
姫「あなた、本当について行く気?大丈夫?」
元神官「皆さん無茶はしないでくださいね」
姫「必ず帰ってくると約束して」
勇者「もちろんです」
姫「……」
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197 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:28:58.80 ID:0pa6hmm8o
ブオンッ ブォンッ
竜人「気合い入れていきましょう。いかに不意をつけるかが勝負ですよ」
戦士「だから奇襲をかけるわけではないと言っておるだろうが!!」
戦士「それにお前、ちょっと空気読め。剣振るの一旦やめい」ガキン
竜人「はい?」
姫「…………あ、あの……竜人さん……も、お気をつけて。くれぐれもお怪我をなさらぬよう」カァ
姫「私もいっしょについていけたらよかったのですけど……」
竜人「大丈夫ですよ、私たちにまかせてください」
竜人「四肢がもげても必ず奴の首をとってきます。血祭りです」
姫「で、ですからお怪我はなさらぬよう!!四肢はもげてはいけません!!」
忍「あの人こわっ!絶対後ろめたい過去あるって若、まじで」
妖使い「……勇者、どうして鍵があれだって分かったんだい」
勇者「ああ、あれか?鍵は言葉だって魔王に聞いて……それで思いついたんだけど」
勇者「『雄竹の里 神の宮 永遠の泉 離島の浜辺』のそれぞれの頭文字つなげただけだ。
それで、『おかえり』……それで開くとは俺も思ってなかったが」
勇者「単純な暗号だったな。つーかそのまんまだ。もっと早く気付けばよかったぜ」
妖使い「へー。おかえりだって、鍵にしては変な言葉だね」
妖使い「じゃあ創世主はただいまって迎えてくれるのかな。ハッハッハ」
勇者「どっちかっつーと逆だよなぁ」
勇者「よーし準備はいいな行くぞお前ら!覚悟はいいか!!」
魔女「いつでも!わーい焼き打ちだーーーっ!」
勇者「よっしゃ行くぞーー!!」
ギイィイィ……
198 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:35:13.25 ID:0pa6hmm8o
戦士「……む、ここは……!?屋外ではないか?」
妖使い「王都の地下に空があるなんて、君たちの国すっごいなー!これどうやってんの?」
勇者「いや、別空間に転移させられたんだろうな。
あの城の中に創世主がいるのか?」
竜人「見てください、城の天辺に誰かいますよ」
騎士「よ、よく見えますね。いますか……?」
魔女「じゃあみんなで四方に散らばって。あたし背後から仕掛けるから。
合図したら一斉にGO!だよ!一撃必殺!」
騎士「だから奇襲じゃありませんって魔女さん。
何故あなたも竜人さんもそんなアグレッシブなんですか!?」
??「『おかえり』……かぁ」
??「懐かしいな」
??「でも、それを言ってほしいのは君たちじゃないんだ」
199 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:35:59.23 ID:0pa6hmm8o
忍「なんかあの上にいる人しゃべってません?」
魔女「んー 全然聞こえないけど」
勇者「なんかボソボソ言ってんな」
勇者「おい降りて来い!!お前が創世主なんだろ!?」
勇者「世界を滅ぼしてるらしいが、やめろ!!ふざけんな!!勝手に消すんじゃねーよ!!」
??「あがくのはやめろよ。君たちのいる意味はなくなったんだ」
??「もういいんだ……ここは捨てられた世界なんだから」
ザアアァァァァァ……
竜人「城が崩れて……。あれが黒い水ですか?」
妖使い「そうだよ、俺たちが見たのといっしょだ」
??「君たちが気づいていなかっただけで、この世のものは全てこんなにも脆いんだよ」
??「夢から覚めればすぐ溶ける」
??「みんなが言う通り、こんなの全部くっだらねー、何の役にも立たない代物ってわけだ!!」
ザザザ ザザ
勇者「なんだ!?」
??「じゃ、今からアドリブは控えるように。劇の開幕だ」
??「全員配置について。台本通りに話せよ」
200 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:36:35.89 ID:0pa6hmm8o
ザッ……
妖使い「周りの風景が一気におどろおどろしくなったな」
妖孤「ひええ……もう帰りましょうよ主様~~」
妖使い「お前仮にも伝説の妖孤なんだからしゃきっとしろ!!情けないぞ!!」
妖孤「怒られた~~」
魔女「さっきからあいつなに言ってんの?誰か分かる人手あげてー。翻訳して」
勇者「おい、わけ分かんないこと言うな!これは劇じゃない、台本なんてねーよ!」
??「劇だよ。最初からそうだった」
??「陳腐で馬鹿みたいで、どっかで見た展開をつぎはぎ合わせで繋いだゴミみたいな三文芝居だ」
??「ご都合主義の展開任せ、整合性なんてないに等しい、子供だましでありきたり」
??「道端に落ちていても誰も気にとめないような……」
??「吹いたら飛んで行ってしまいそうなくらい内容がないに等しい時間泥棒。それがこれ」
??「主役、勇者・魔王。それから魔女に竜に戦士に神官に」
??「姫に王子に騎士……そして道化」
??「だってロールプレイングだろ。君たちはずっと演じ続けてきた」
??「自分に与えられた役をこなせばそれでよかった。今この瞬間まではね」
??「世界を救いたいんだっけ? 僕を倒せたらいいよ」
201 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:38:57.67 ID:0pa6hmm8o
勇者「あー!?ロールケーキか何だか知らないが、戦いで決着がつくなら有り難い!」
魔女「レアチーズケーキだかアップルパイだか知らないけど、さっさと姿現しなよ」
竜人「ロールプレイングですよ。二人とも話ちゃんと聞いてました?」
戦士(ロールプレイングって何だ……とは聞けない雰囲気)
騎士(家帰ったら辞書引こうっと……)
ザッ!!
スタッ……
忍「何か来ますよ!」チャキ
――キィンッ!!
戦士「むっ!! ぐ……くっ!なんて力だ!こいつは……!?」
魔女「え……!?これって」
勇者『……』ググ
魔女「勇者!?」
勇者『ははは……勝てるかな?』チャキ
騎士「魔女さんあぶなーい!!」ズサッ
202 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:40:18.66 ID:0pa6hmm8o
妖使い「きっさまぁ!!寝返ったのかこの裏切り者!!死に晒せ!!」
勇者「ま、待て!俺はここにいるぞ!あれは偽物だ!!」
竜人「これは……困りましたね。どっちの勇者様の首を折ってしまうか分かりません……」
勇者「怖いこと言うなよ!!ちゃんと本物じゃないか確認しろよ!?」
忍「これは好都合!死ねえぇぇぇぇぇオラァァァァァッ」
勇者「ちょっとは戸惑って!」
ドカーン
勇者「無傷か。じゃあ俺が相手だ!自分くらい倒せるに決まってんだろ!」キン
勇者『……』ガッ
キィンッ ザザッ キンッ ザシュ
騎士「うわ……す、すごい」
戦士「俺たちも援護するぞ!」
騎士「はい!正直自分場違いな気がしなくもないですが、はい!!」
203 :◆TRhdaykzHI 2014/05/25(日) 22:42:23.15 ID:0pa6hmm8o
今日はここまで
次バトル回です
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/28(水) 02:37:54.68 ID:vsGsAi/d0
乙です
206 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:20:35.84 ID:RsnkkEoCo
勇者「ぐっ、強い……さすが俺。なかなか強いぜ。はあはあ」
勇者『……』スッ
バキャアァァッ!!!
妖使い「なにぃっ!うわあ!! 妖孤をとっさに盾にしたおかげで俺は無事だが、みんな大丈夫かあー」
妖孤「主様に温かい人の血は通っていますか~~? 死ねボケ主」
魔女「わあなんて破壊力。ていうかこれ魔法じゃないの」
竜人「斬撃に魔力を纏わせたのですね」
勇者「なにっ? そんなことできんのかよ?」
竜人「魔法が上手な勇者様となると……これは……」
忍「本物の勇者様より手ごわいですね!」
勇者「くっそ~~俺が気にしていることを~~!俺のコンプレックスを抉り抜いてきやがってぇ」
勇者「つーかそれなりには魔法だって使えるし!魔王の隣にいるから下手に見えるだけだし!」
勇者「うおおおお!こうなったら何が何でもお前を倒す!!」
妖狸「きゅう……」
なめこ「旦那……あっしはもうだめでさ……さよなら……」
妖使い「妖狸!それになめこ!!大丈夫か!?」
妖使い「な……なめこ!!なめこーーーーーーーーーーーーっ!!!」
妖使い「なめこ死んだわ。ギャグ枠次なにいれよ」
忍「若!ふざけてねーで戦ってください!」
妖使い「合点でい!」
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207 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:22:09.18 ID:RsnkkEoCo
ガキィン!
勇者『勝てるわけないじゃん。創造物が創造主に勝てっこないって』
勇者『あはは。今の悪役っぽい台詞だろ。そしたら君はたぶんこう返すんだ』
勇者『そんなのやってみなけりゃ分からないだろー とかなんとか』
勇者「……!」
勇者『あはは』
ザシュッ!!
勇者「うおっ!?」ヒョイ
勇者「……!!」
勇者『まあ、楽しかったよ』ヒュッ
トン
魔女「麻痺魔法っ」
勇者『おっと……危なかった』ブン
騎士「魔女さん!!下がっててください!」パッ
騎士「ぼ……僕があなたをお守りいたしますので!」
魔女「誰だっけ?」
騎士「ひどいっ!!騎士ですよぉ!!」
208 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:23:36.75 ID:RsnkkEoCo
戦士「ぐぅっ……ぐああああ!!」ズダンッ
勇者「戦士!大丈夫か!」
戦士「勇者の姿にやられると尚更腹立たしい……!ぐはあ」
勇者「すまん!」
妖使い「どらああああ!なめこの仇じゃボケーーー!!去ねぇ!!」ダッ
勇者「馬鹿、こっちは本物の俺だ!!あっち向かえあっち!!」
妖使い「臨兵闘者皆陣列在前!封!」バシッ
妖使い「よーしこれで敵の力を封じたぞ勇者!いまだ、畳みかけろー!」
勇者「ふっざけんなテメーーーーーーーーーーっ!!!なにしてくれてんだよ!!?」
勇者『あはは。コント?おもしろいな』ズバッ
勇者「ぎゃーーっ」
勇者(……!)
勇者『……』ビッ
勇者「くっ……うっ このやろっ!」
勇者『その剣もらい』ヒュ
ヒュンヒュンヒュン……カッ
209 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:32:59.46 ID:RsnkkEoCo
勇者「うおらあ!」ガシッ
勇者「ふんっ」グル
勇者『あれ?』
勇者「せえええええいっ!!」
忍「おお、見事な一本背負い!」
ビュン
勇者『……投げてどうなるんだ?』クルッ
ゴオッ……
竜「空中でお前を捕まえられる」ガパ
勇者『……あー 確かに』
ガブッ!!
ズダン……ッ!!
勇者「う……自分が竜に噛まれてる姿はあまり見て楽しいもんでもないな」
210 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:35:39.93 ID:RsnkkEoCo
ギチギチギチ……メキメキ
勇者『……』
竜(骨を砕いているのに、こいつ痛みがないのか?)
竜「ぐっ……しぶとい奴め」ギギ
勇者『いまのはおもしろかったよ』ガッ
忍「よーし今のうちにこいつの口に火薬つめとこっと」
魔女「よーし今のうちにこいつに毒麻痺睡眠スタン下痢混乱魔法かけとこっと」
魔女「ついでに触手も」
騎士「な、何故!?」
竜「馬鹿力め…… 勇者様!私がおさえているうちに……!」
勇者「待ってろ、いま行く!!」
戦士「……むっ 皆気をつけろ!!上方から何か来る!!」
勇者「えっ」
ズズン……!
勇者「なに……っ!?」ガク
妖使い「うわっ」ビタン
騎士「ぐぐぐ……なんだこれ!?体が重い!」
勇者「これは……!重力魔法だ!」
勇者「俺が知ってる中でこれを使えるのはあいつしかいないんだが……まさか」
211 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:37:01.24 ID:RsnkkEoCo
スタッ
竜「……え!?」
魔女「! 魔王様!?」
魔王『……うん』
勇者「いや、偽物だ。魔王があんな高いところから竜の背に飛び降りれるわけないだろ!」
勇者「あんな運動神経ある奴は魔王じゃない!!」
魔女「確かに」
戦士「確かに」
勇者「竜人逃げろ!」
トン
魔王『――……』
竜「!! ガフッ……」
212 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:38:45.65 ID:RsnkkEoCo
魔女「うわっ 竜人がやられた!!」
勇者『……』
魔女「ってあたしもピンチ! えい、睡眠魔法!」
勇者『……』バチッ
魔女「ええ……斬られた……そんなんアリ?」
魔女「うわぁっ……!」
ドサッ……
魔女「えっ?」
騎士「魔女さん……お怪我はないですか……ゴフ」
魔女「えっ!……えっと……えっと……」
騎士「騎士です……」
魔女「騎士!!大丈夫!?なんであたしを庇ったの」
騎士「ひ……ひとつ……お願いがあります……」
魔女「なに?」
騎士「僕は影が薄くて……モブ同然ですが……」
騎士「できたら僕の名前を……覚えて……くださ……」ガクッ
魔女「騎士ーーーーーーーー!」
忍「ああっ なんだかこれはさすがに不利なんじゃ」
妖使い「あ」
忍「え?」
バチバチバチバチ……
魔王『逃がさないよ』
忍「あー……」
妖使い「あの俺、絶縁体じゃないから……」
――カッ!!
アーーーー…
勇者「忍ーー!妖使いーー!」
213 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:42:40.37 ID:RsnkkEoCo
魔女「く。騎士の死は無駄にはしないよ。仇は討つからね!」
勇者「あいつ死んだの!?」
戦士「勝手に殺すな!まだ息はある。ほかの者もな」
勇者「しかしあっという間に数減ったな……あと残ってんの3人だけか」
勇者「あいつ一人だけでも手こずるのに、それに魔王が加わるのは……
さすがにちょっとまずいな……」
勇者『2対3くらいが妥当だよね。一人を大人数で叩くなんてかっこ悪いよ』
魔王『そうだそうだ。いっけないんだー』ピョンピョン
勇者「……っ……く……。その喋り方かわいいな……」ガク
戦士「おい……このメンツでお前までふざけだすと、俺はどうしていいか分からん」
魔女「でもほんとに困った!勇者はともかく魔王様の姿だとやりづらいよ」
勇者「確かに。俺はともかく魔王はちょっと戦いづらい……!」
戦士「勇者なら別に全力で斬りかかれるんだがな……!」
勇者「お前らほんとに俺に遠慮がないな」
魔王『重力魔法』
戦士「来るぞ!避けろ!」
魔女「あたしは箒乗って空から呪文かけるね」ヒョイ
魔女「魔王様に沈黙呪文きくかわかんないけどやってみる!」
214 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:45:50.92 ID:RsnkkEoCo
勇者「俺はまずこいつの動きを止める……!!
戦士は魔女の援護を!」
戦士「分かった!」
勇者「かかってこい偽物……!」
勇者『……ははっ』
ジャリッ ガッ!!
――――――――――――――
――――――――――
――――――
ズガッ ガガガガッ!!
勇者「はあ……はあ…… ぐっ またそれか!」
勇者「おりゃあ!」ザシュ
勇者『そろそろ死ぬ気になった?』
勇者「なんねーよ!」キィン
勇者「お前この世界を大昔につくったんだろ?
なのになんで今更壊そうとするんだよ」
勇者「この世界の存在理由ってなんだよ」
勇者「なんで俺たちを消したいんだ」
勇者『ああ?てめーらには関係ねーよ』
勇者『とっとと消えろ!!』
勇者『見るだけで……思い出すだけで苦しいんだ。
この世は呪いそのものになってしまった』
勇者『どうせ遅かれ早かれこうなることは分かってた』
勇者『消えろ――……』スッ
勇者(ん!? 上段、突き、フェイントからの振りおろし……俺がよく使う攻撃だ)
勇者(そうか、こいつは俺の分身だから、それを逆手にとれば……!)
勇者(次はどうくる?)
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215 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:46:32.36 ID:RsnkkEoCo
勇者「……」サッ
勇者(水平斬りか!俺だったらその後、相手が避けたら体勢を崩すために下段を狙う。
相手が防御したらそのまま押し切る)
勇者(やっぱり足元狙ってきたな……じゃあ次は突きの連続が来る)ガッ
勇者(そしたら……振り下ろし、袈裟切り……次は)
勇者(袈裟切りからの左切り上げか、フェイントか……どっちだ!?)
勇者(……フェイント!!)
ギインッ!!
勇者「と見せかけての切り上げだーー!!」ズバ
勇者『……!』
勇者『……あーあ。やられちゃったな』ドサッ
ハラハラ……
勇者「はあ……はあ……黒い水……こいつもか」
勇者「自分が馬鹿で助かった……すごい攻撃読みやすい」
勇者「俺のフェイントあんなに分かりやすいのか。まだまだだな……気をつけよ」
216 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:53:59.93 ID:RsnkkEoCo
魔王『氷の槍と大地の波』
バキバキパキ……パキッ
ベキベキベキ
戦士「うおおっ……」
ズズズズズッ
戦士「うおおおおおお!!?」ダダダダッ
戦士「ぐっ これでは全然近づけんではないか!
しかしこれで俺に注意を引きつけて、魔女が空中から沈黙呪文をかけられれば!」
ズガンズガンズガン
戦士「がーーーっ こんなもの叩き切ってやるわい!
大剣使いの戦士とは俺のこと…… おっ?」バキッ
戦士「……氷を斬った剣が……凍りついて……」
戦士「これじゃ使いものにならん!! くそっ!!」
戦士「魔女!!早くしてくれーー!俺が死ぬ前に!!」
217 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 21:54:35.68 ID:RsnkkEoCo
魔女「うう、でも空中からでも全然近づけないんだよー」
魔女「氷の槍がこっちにもびゅんびゅん飛んでくるしっ!」
魔女「……!なっ……」
魔女「攻撃の片手間に、土魔法でつくったオーブンと火炎魔法で……クッキーを焼いているだとぉっ」
魔女「もっと注意ひきつけて戦士!暇をもてあました魔王様がクッキー焼きはじめてるよー!」
戦士「ク、クッキー!?もっと注意をって……
無茶言うでない!地上は地形がどんどん変わって逃げ回るのも一苦労なんだぞ!」
戦士「ハッ……!?」
戦士「しまった、挟み撃ち!」
魔女「戦士ーー!」
戦士「くうっ!」
魔女「戦士の犠牲は無駄にしないよ」
戦士「見切りが早すぎるぞお前……!」
バキッ!!
戦士「なっ!お前ら大丈夫なのか!?」
騎士「まだまだいけます……!」
竜人「少し意識が飛んでしまっただけです」
魔王『増えたー』モグモグ
218 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 22:06:15.56 ID:RsnkkEoCo
竜人「魔王様の姿を借りるなど不届き千万……極刑です」
竜人「あいつの元までなんとか切り開きましょう!3人いればいけます」
騎士「い……けますかね?100人いても無理そうなんですが」
戦士「弱気になるな騎士!それでも国王直属の騎士か?」
魔女「がんばってー騎士!あたしの礎になってー!」
騎士「な……!?魔女さん……僕の名前とうとう覚えてくれたんですか!?」
騎士「……僕やります。僕が先陣を切ります!!」
竜人「礎とか言われてますけどいいんですか」
戦士「しっ。本人が幸せそうなんだからほっとけ……」
騎士「うおりゃあああああああああ」バキッバキッ
ズバッ!
219 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 22:08:08.37 ID:RsnkkEoCo
魔王『……』ブツブツ
竜人「ん!?」
魔王『火鳥 雷虎 氷獅子 岩土竜 風狼』
騎士「うぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
戦士「なんだあれは!?」
竜人「囲まれたらアウトですね」
騎士「なんですかこのオンパレードはーーー
魔王さんも勇者さんも恐すぎなんですけど!!」
騎士「どんだけポテンシャル秘めてんですかーーーっ」
ズガンッ!!ビュンビュン バリバリバリ……ピシャーン! ゴォォォォ……
魔王『あはははは……』
騎士(僕死ぬなコレ)
魔女「しめた!地上がもはや地獄絵図だけど、これで魔王様もどきがあっちに気を取られた!」
魔女「一気に接近して……!」ビュ
220 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 22:10:11.95 ID:RsnkkEoCo
魔女「沈黙呪文っ」
魔王『……』チラ
バチッ!!
魔女「うそ、防がれた……」
魔女「だけじゃない!?はねかえされっ……!?」
魔女(うっそ!あたしが沈黙になっちゃった!)
火鳥「ピィィィ」バサバサ
魔女(いやーーーー助けて本物の魔王様ーー)ビュン
竜「魔女!こっちに!」
竜「なにやってんですか」
魔女(失敗しちった)
竜「ん? 勇者様の方は片付いたようですね」
竜「……魔女、まだ箒は使えますよね」
魔女(使えるけど)
竜「じゃああちらを頼みますよ。私はこっちを」
魔女(オッケ)
221 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 22:13:08.39 ID:RsnkkEoCo
騎士「くっ……この!」ブン
騎士「うわっ 熱……!!」
戦士「気をつけろ!近づきすぎると一瞬で丸こげになるぞ!」
戦士「……普通に斬って倒すのは難しいな。なんとか……あいつら同士をぶつけられれば」
竜人「それがいいと思います」
竜人「あれは魔王様の姿をしていますが、とても及びませんね。
魔王様だったらこんなでたらめな魔法の使い方はしません」
竜人「あの火の鳥と氷の獅子を誘導して、衝突させればうまくどちらも消せるはずです」
戦士「なるほどな。同じように岩と雷も誘導してと……」
騎士「あっ また重力魔法きますよ、気をつけて!」
ズシャッ
戦士「騎士!!おまっ……自分で注意喚起しといて自分だけ逃げ遅れてどうする!?」
騎士「うぐっ 僕のことは構わず先にあっちを! ぎぎぎぎぎ……」
竜人「今日どんだけ死亡フラグたてるんですか!」
ズズズズ……
騎士「うわーーーああ」
戦士「騎士ぃぃーーーーっ 馬鹿者!」
222 :◆TRhdaykzHI 2014/05/28(水) 22:19:07.86 ID:RsnkkEoCo
魔王『はははは……!』
魔女「よおし、いまだ!」ビュン
魔王『分かってるよ?』
シュルシュル
魔女「! ……行ってきて、勇者!」
勇者「ああ!」バッ
魔王『ん?』
勇者「このやろうっ!!覚悟しろっ!!」チャキ
魔王『また君か。いい加減飽きたよ』ズズッ
――キィン!
勇者「空中から剣を!?」
魔王『折れない魔法の剣だよ』ヒュッ
勇者(はやっ……)
魔王『どうしたの?さっきより遅いよ。斬らないの?』
勇者「斬るに決まってんだろ!お前は……本物の魔王じゃない!」
魔王『本物なんてこの世界に何一つなかったよ。最初から』
魔王『全部にせもの』
グイッ
勇者「……!」
魔王『雷魔法っ』
カッ……!
魔女「勇者!!」