世にも奇妙な物語

【世にも奇妙な物語】言葉のない部屋

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キャスト: 木村拓哉 放送日

高度成長期。都会の片隅で時に忘れられたかのような骨董品店。
ウィンドウに展示された、
当時でさえ古ぼけたオープンリールデッキを
見つめる工員服の青年(主人公)。
店先に出てきた店主に給料袋から値札分の現金を取り出して渡し、
デッキを持ち帰る。

家具のない殺風景な古アパートの一室。
卓袱台の上にデッキを設置し、
マイクに向かっておずおずと語りかける主人公。
「ほんずつ(本日)は晴天なり……」
『ほんずつは晴天なり……』
「♪こんぬ(に)つは、こんぬつは、世界のくぬ(国)から……」
『♪こんぬ(に)つは、こんぬつは、世界のくぬ(国)から……』
自分の声や口調がそのまま再生されるのに目を輝かせる主人公。

小さな自動車工場。
談笑する仲間たちから離れた所で一人座り込んでいる主人公。
休憩時間が終り、重労働に喘ぐ。
一日が終り、部屋に戻ると意を決したように
デッキに向かって録音を開始する。
「……僕は、集団就職で東京にやって来ました。
 仕事は毎日やりがいがあるし、
 友達もたくさん出来、今日もみんなと遊びに行ってきました。
 本当に東京に来てよかったです……」
自分の理想とする東京暮らしを思い描きながら、
訥々とマイクに語りかける主人公。

一昨日と同じ昨日、昨日と同じ今日、今日と同じであろう明日……
帰宅とともに再生ボタンを入れるのが主人公の日課となっていた。
そんなある日、
職場で唯一言葉を交わした老人の送別会に誘われたが、
その楽しそうな雰囲気にどうしても馴染めることができず、
アパートに帰って一人蹲る主人公。

その夜も再生ボタンを押す。
膝を抱え、目を輝かせながら、
自分を励ます言葉が流れるのを待っていた彼の耳に届いたのは
こんな言葉だった。
『……田舎さ帰りてぇ……』
愕然とする主人公。

『仕事はきつくて毎日毎日おんなじ事の繰り返し……』
再生ボタンを切るが、言葉はなおも続いた。
『友達なんか一人も出来やしねぇ
 ……こんな事なら東京なんか来るんじゃなかった
 ……田舎のみんな元気にしているかなぁ
 ……帰りてぇ……』

「やめろ、やめてくれぇっ!」
恐慌状態に陥り、後じさりする主人公。
胸を押さえて前のめりに倒れる。

翌朝。体をくの字にして横たわる主人公を見下ろす検死医。
現場検証中の刑事に話し掛ける。
「他殺の線はありませんね……詳しくは解剖してみないとわかりませんが、
 心臓の発作による自然死と思われます」
頷く刑事が卓袱台を占領しているデッキの再生ボタンを押す。
流れ出す主人公の声。

「……僕は、集団就職で東京にやって来ました。
 仕事は毎日やりがいがあるし、
 友達もたくさん出来、今日もみんなと遊びに行ってきました。
 本当に東京に来てよかったです……」

刑事が呟く。
「こんなに楽しい生活を送っていた、未来ある青年が急死するなんてなぁ」
青年を見やる刑事。
青年の死に顔は、眠っているようにも微笑しているようにも見えた。

[おまけ]
骨董品店の前に佇むタモリ。
「青年が聞いたのは彼自身が隠していた本音だったのでしょうか。
 まぁ私の場合は前途洋々と上京し、
 楽しい友人ややさしい家族に恵まれ……」
自慢話を続けようとする背後から、
オープンリールデッキを担いだ骨董品店の主がマイクを手に近付く。
主に気がつくタモリ。
「……え……もしかして録音してる?」
頷く主がマイクを突き出し話の続きを促す。
逃げ腰になるタモリ。
そしてエンディングのスタッフロール。

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