後味の悪い話

【後味の悪い話】『僕が死ぬだけの百物語』の45話

917: 本当にあった怖い名無し 2022/10/21(金) 05:15:00.22ID:5gYBvcfk0
『僕が死ぬだけの百物語』の45話。不気味でありながらも、どことなく切なくて、なんとも言えない

暑い夏の日、遠くへ引っ越すことになった幼い男の子、シゲくん
引っ越し当日、仲良しの女の子でたる千夜ちゃから別れを惜しまれ、最後の思い出として二人で「かくれんぼ」をして遊ぶことになった
千夜ちゃんは必死に隠れようとする
「今日は絶対に見付かりたくない」
もし見付けられてかくれんぼが終わったら、大好きなシゲくんと本当にお別れしないといけないから
千夜ちゃんは森の中に不法投棄されていた冷蔵庫の中に隠れる
シゲくんは千夜ちゃんを探し、物音を聞き付け、冷蔵庫を開けようとした
しかし、手が止まる
冷蔵庫の中から、シゲくんを想う千夜ちゃんのすすり泣く音がしたから
シゲくんは彼女の気持ちを察し、ただ「ごめんね」と呟くと、冷蔵庫を開けずにその場から立ち去った
その気配を感じた千夜ちゃんは、シゲくんを呼び止めるために冷蔵庫から出ようとする
しかし、どんなに押しても冷蔵庫の扉は開かない
千夜ちゃんは冷蔵庫の中に閉じ込められてしまったのだ

918: 本当にあった怖い名無し 2022/10/21(金) 05:16:43.44ID:5gYBvcfk0
それから十年後
シゲくんは地元に戻ってきた
幼い頃の記憶は曖昧だったけど、千夜ちゃんのことだけはハッキリと覚えていた
「あの子は僕のために泣いてくれた。それなのに、僕はどうすることも出来なくて、あんな形で別れてしまった。彼女は今も怒っているだろうか?それとも、僕のことなんて忘れているだろうか?」
彼女を想いながらあの森の中に入ると、冷蔵庫があの時のまま残されていた
その傍らに、美しく成長した千夜ちゃんが佇んでいた
シゲくんは昔の事を謝罪する
千夜ちゃんは「開けなかったのは、優しさでしょ?」と言い、朗らかに笑って許してくれた
そんな千夜ちゃんの美しさと優しさに、シゲくんは思わず赤面して気まずくなり、あの冷蔵庫を徐に開いてみようとする
すると千夜ちゃんが顔色を変え、「開けないで」と言う

「“シュレディンガーの猫”って思考実験を知ってる?
毒ガスが出る可能性が有る箱の中に猫を閉じ込めた場合、箱を開けて中を確認するまでは猫の生死はわからない。つまり、生きてる状態と死んでる状態が同時に存在するの。

それでも・・・、開ける・・・?」

シゲくんは滝のように汗をかきながら、冷蔵庫を開けるかどうか葛藤するが、やはり開けないことにし、「アイスを食べに行こう」と千夜ちゃんを誘う

千夜ちゃん「シゲくん・・・優しいね、シゲくん」

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