後味の悪い話

【後味の悪い話】眼球奇譚「再生」

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568:再生1:2006/06/25(日) 02:15:32 ID:DuFqMul30
綾辻行人著の眼球奇譚に収録されている再生という話。

大学講師の主人公が教え子の女性、由伊と恋仲になる。

やがて深い中になり、結婚を考えるようになったある日、由伊は主人公に自分の秘密を打ち明ける。

曰く、”自分の体は呪われている”と。

幼少時より幾度も怪我を負ったが、その痕跡は跡形もなく消えてしまい、失った四肢すら生えてくるという。

愛する由伊の言葉を疑いなく信じる主人公。
本来事故で失ったはずであるという由伊の白く美しい腕を見ながら主人公は言う。
「それはね由伊。呪いではなく祝福されているんだよ」

だが二人の幸せは長くは続かなかった。

由伊はクロイツフェルド・ヤコブ病という病に冒され、
急速に痴呆が進み一年以内に寿命を終えてしまうと宣告される。

そして痴呆が進み主人公の事もおぼろげにしか思い出せなくなる由伊。
「私がすべてを忘れてしまう前に二人で過ごしたあの山荘で静かに暮らしたい」

569:再生2:2006/06/25(日) 02:16:13 ID:DuFqMul30
山荘で暮らし始める主人公と由伊。
しかし病の進行は止まらず、由伊は自分の意思で動くこともしゃべることもあまりなくなっていった。

由伊を暖炉前の椅子に座らせ、一人静かに酒を飲む主人公。

酩酊し、いつの間にか寝入ってしまった主人公は激しい物音で目が覚める。
暖炉の前の椅子に座わらせていた由伊が火の消えかけた暖炉に頭を突っ込むようにうつ伏せに倒れていた。

由伊の足元には空のウィスキー瓶が転がっている。
これに由伊は躓いたのだろうか、あるいは…。

緩慢な動きで由伊を暖炉から引き出す。
髪も顔も醜く焼けただれ、美しかった由伊の面影はなくなっている。

泣きながら由伊の名前を呼ぶが、意識を失っているのか由伊はその言葉に反応することはない。

主人公は思い出す。
あの日、由伊のいっていた言葉を。

「それはね由伊。呪いではなく祝福されているんだよ」
呆然と呟く。

570:再生3:2006/06/25(日) 02:18:27 ID:DuFqMul30
血と脂にまみれつつ由伊の頭部を切り離す主人公。
焼け爛れた頭部は外に捨て、体だけを綺麗に拭き白いドレスを着せて椅子に座らせる。
美しい由伊の顔が再生すると信じて。

あれからどのくらい経ったのであろうか。
幾日幾週間、主人公は由伊の顔が再生するのを待ち続けた。

腐り果てていく由伊の肉体。

主人公は祝福された体というのは嘘であったのかと、嘆き崩れる。

そのとき山荘の外、激しい豪雨の音に混じり奇妙な唸り声が耳に届いた。
赤ん坊が泣くような、小さな獣が鳴くような、甲高くひび割れた叫び声。
恐る恐る外を見る。

そこには雨に打たれ泥まみれになった焼け爛れた由伊の顔。

その口が裂けるように開き、奇妙な声を漏らし続けている。
切断した首の傷跡から胎児のような体を生やしながら。

こちらが再生の本体だったのか…

虚ろな由伊の目が主人公を捉え、爛れた唇で言葉を動いた。

「先生」

長々と書いてゴメン。

585:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 10:20:59 ID:Vk+5ovFhO
>>570
最後はグロいけど、なんか綺麗で切ない話だ

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