後味の悪い話

【後味の悪い話】神林&キリカシリーズ「女優」

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5:本当にあった怖い名無し:2008/12/02(火) 01:54:07 ID:DwSRsu3d0
神林&キリカシリーズっていうシリーズもののミステリー漫画から

小説家の神林俊彦は殺人事件に遭遇することが多く、そのたび探偵役を務めている。
以前の事件の際に知り合った稀代の名女優・織田雪絵が、
数年ぶりに舞台に立つというので、その稽古を見に行くことにした。

織田は役者としてのこだわりが非常に強く、ドラマや映画などの記録に残るものには滅多に出ず、
専ら舞台専門の女優。その舞台でも、自分が認めた役者としか共演しないという頑固さの持ち主。
その織田が惚れこんでいる新人女優がいるという。
数年ぶりに織田が舞台に立とうと思ったのは、その女優と同じ舞台に立ってみたいという思いからだった。

舞台裏から織田を訪ねようとした神林は、スタッフの青年が軽く言い争っているのを見た。
青年Aの持っていた写真を青年Bが取り上げ「これがお前の彼女かよ不細工すぎ」と言って笑い物にしていたのだ。

陰湿な感じではなく、あくまでもからかってる感じであったが、気に障った神林はBを止めた。
神林は写真を取り返す際に、そこに写るAの彼女だという女性の顔を見た。
分厚い眼鏡をかけ、良く言えば純朴な感じだが、はっきり言えば芋っぽいというかダサくて地味すぎる女性だった。

だが、女性の浮かべている満面の笑みは、全くの他人である神林ですらほっとさせられるような温かさがあった。
「きっと素敵な人なんですね」と神林が言うと、青年は照れたように笑った。

織田を訪ね、その後に例の女優と顔を会わせる神林。
女優は垢ぬけた感じで、整った容貌の持ち主だったが、いまいち存在感が希薄で、
気づけば背景に埋没してそうな、舞台女優としての迫力のようなものを全く感じさせない人物だった。

神林との会話もどこか上の空で、本当にこれが噂の女優なのかと神林は首をかしげる。
が、ひとたび舞台に立つと女優は別人と化した。
女優が演じるのは、織田演じる母からの束縛に対抗しようとする、激しい自立心を持つ娘の役。
舞台の上の女優はまさにその娘そのもの。体中から熱気を発するかのようなその姿は、先ほどとは別人だった。

織田は今までの経験や知識から計算して役作りをしている。
だが、女優はそんな計算などせず、役そのものになりきることで役を全うするのだという。
普段の彼女の生気のなさは、その代償のようだった。

6: 本当にあった怖い名無し:2008/12/02(火) 01:56:03 ID:DwSRsu3d0
稽古中、女優は舞台から転落してしまった。
結構な高さがあるので、意識不明の重体となり、渋々代役が立てられた。
役に熱中するあまりに舞台の上であることすら忘れ転落したのではと思われていたが、
女優の所属事務所は女優に多額の保険金をかけていたという噂が神林の耳に届く。

もしかして事務所の連中がなにか仕掛けていたのではと調べるうち、
事務所の人たちは特に関係しておらず、Aが犯人だと判明した。

Aの彼女=女優であった。
かつて、Aと女優は同じ劇団で裏方を務めていた。
そのころの女優は地味でダサかったが、Aは女優を愛していた。

だからこそ、女優が内心では裏方ではなく、舞台に役者として立ちたがっていること、
しかし外見やその他のハンデなどのために、その望みを表に出すことすらできずに悩んでいることに気づいた。

お洒落をする暇もないほど裏方としての忙しい日々の中で、
女優はすっかり自分の容姿を諦めていたが、実際には磨けば光る存在であった。
Aは女優のハンデを克服する方法を考案し、外見も磨いてやった。

そして、女優ははじめて舞台に立ち、舞台の魅力に憑かれてしまった。
はじめての舞台は好評を博し、女優は役者としての道にはまりこんでいった。
演じれば演じるほど、舞台の上での生を送るほど、現実での女優は精彩を欠いていった。

Aが気づいた時には、女優はただ役を演じるだけの器になっていた。
引き抜かれるままに、女優はAや他の劇団員を見捨てて今の事務所に移った。
その方がより多くの役を演じられるからと。Aに対しての別れの言葉もひどく機械的だった。

それでも諦めきれずAは女優を追いかけ事務所に裏方として入ったが、
女優はAのことなどすっかり忘れていた。
以前よりも、ますます女優の演技は素晴らしいものになっていた。

一方で、舞台を降りた時の女優の無感情っぷりはますます拍車がかかっていた。
「僕が好きだったあの子は死んでしまった なのに、
体だけが生きて動き続ける姿を見るなんて耐えられなかった」
供述し終えたAはそう言って泣いた。

後日、目覚めた女優は、最後に演じた「娘役」そのものの激しい気性の人格となっており、
今までの記憶を全て失っていた。それが一時的なものなのかどうかはわからないという。

7: 本当にあった怖い名無し:2008/12/02(火) 13:46:41 ID:mhp1HsT40
ゲー後味わるーー

8: 本当にあった怖い名無し:2008/12/02(火) 21:58:07 ID:CWOmm8700
ガラスの仮面を何となく思い出した。

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