後味の悪い話

【後味の悪い話】飯島早恵『渚のバッドエンド』

64: 本当にあった怖い名無し 2018/07/14(土) 15:08:04.91ID:UeWPZfF60
飯島早恵『渚のバッドエンド』

平凡なサラリーマンだった主人公は、まるで「最初から存在しなかった」かのように会社をクビになり、絶望する
そして傷心から「海を見に行こう」という凡庸でつまらない発想をし、車に乗って海へ向かって走り出した

道中、主人公が赤信号で一時停止していると、ヒッチハイクをしていた女子高生が勝手に主人公の車に乗り込んでくる
この底抜けに明るくお調子者の超可愛い(自称)女子高生、家では父親から虐待され、学校ではいじめられ、家出をして万引きを繰り返しているらしく、「この世界のどこにも居場所が無い」と語る
主人公は女子高生に強引に言いくるめられ、なし崩し的に二人で海へ向かうことになる

その後も主人公は一癖も二癖も有る薄幸の道連れ達を次々と拾っていく
ボッタクリの結婚相談所に全財産を貢いだ上に、結婚詐欺師に騙されてオンライン詐欺に手を染めてしまい、自殺未遂を繰り返す女性行員
借金を重ねて豪遊し、その責任を夫に押し付けて借金取りから逃げた主婦と、その幼い息子
そして極め付けは、目下逃亡中の凶暴な無差別大量殺人鬼
奇遇なことに、彼等の誰もが「自分の存在」に関する心の葛藤を抱え、そして「海が見たい」と感じていた
この不快な仲間達と共に、主人公は珍道中を繰り広げながら海を目指すことになる
0065本当にあった怖い名無し
2018/07/14(土) 15:12:49.00ID:UeWPZfF60
主人公一行の話と同時進行で、数々の怪事件を追う刑事サイドの視点も語られていく
万引き、オンライン詐欺、借金取りの殺人、そして無差別大量殺人
事件を追って行くうちに、刑事は海の方角へと向かっていく……

とうとう主人公一行は海岸へとたどり着き、それぞれが思い思いに海を満喫する
殺人鬼と幼い息子は銃でカモメを撃って遊んでいた
その光景をただぼーっと眺める、疲れ果てた主人公
すると主人公の隣で膝を抱えて座っていた女子高生が、主人公に語りかける

「あんた凄いね。こんなとんでもない連中を引き連れて、本当に海までたどり着いちゃうんだから」
「私、皆と同じで、自分がこの世界に存在してるのか、してないのか、分からなかったんだ」
「でも、ここまで来て分かった。私、存在したい、この世界に」

その後、女子高生が「付き合ってみる?」「……一晩3万で」などと冗談を言って主人公(童貞)をからかったり、
互いに憎まれ口を言い合ったりして、最終的に「二人は似た者同士でお似合いだ」ということがわかって、なんだかんだで良い雰囲気になる

66: 本当にあった怖い名無し 2018/07/14(土) 15:14:32.55ID:UeWPZfF60
そこへ、サイレンを鳴らしながらパトカーが大挙してやって来る
「逃げろ、警察だ!」
殺人鬼に命じられるままに、主人公達は車に乗り込んで逃走した
警察とのカーチェイスの末に、主人公達の乗った車は崖から転落してしまう

気が付くと、主人公は警察に保護されていた
しかし女子高生たちの姿は無く、刑事の話によると、転落した車の中には主人公しかいなかったらしい
女子高生たちは海に投げ出されたのか、それとも逃げたのか
主人公は仲間達を見付けてくれるよう刑事に懇願する

刑事は怪訝そうな顔をしながら奇妙な尋問を行う

刑事「失礼ですが、あなたの性別は?」
0067本当にあった怖い名無し
2018/07/14(土) 15:17:14.79ID:UeWPZfF60
主人公「は……? どう見たって僕は男じゃないですか!?」

取り調べが終わっても、主人公は取調室に監禁され続けた
仲間達がどうなったのか、これから自分はどうなるのか
主人公はストレスで気が狂いそうだった
すると、どこからともなく仲間達の声が聴こえ始めた
主人公は周囲を見回すが、仲間達の姿は見えない
仲間達の声は主人公の頭の中から響いているのだ

『あなたはね、多重人格なんだよ』

女子高生も女性行員も、主婦も、その息子も、殺人鬼も、本当はこの世界には存在せず、主人公の頭の中に存在する人格だった
万引きをしたのも、オンライン詐欺をしたのも、借金取りを殺したのも、無差別連続殺人をしたのも、全て……

主人公は取調室内にあった鏡を目にし、自分の本当の姿を知って愕然とする

主人公の本当の姿は、ヨボヨボに年老いた老婆だった
「主人公」という人物も最初からこの世界に存在せず、「一人の老婆の中に生まれた複数の人格の内の1つ」に過ぎなかった

頭の中で、女子高生が主人公に語りかける
「お婆ちゃん、末期ガンなんだ。あと3か月ももたないと思うよ」
「あんたの人格が一番長く表に出ていられたのはね、あんたがお婆ちゃんの初恋の相手にソックリだったからなんだ」
「お婆ちゃんと初恋の人のたった1度のデートの場所はね、あの海岸だったんだよ……」

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