後味の悪い話

【後味の悪い話】日景丈吉「猫の泉」

720: 本当にあった怖い名無し 2010/11/06(土) 15:41:56 ID:f5kAAgWi0
日景丈吉 「猫の泉」

日本人の主人公はヨーロッパの山中にある小さな村を訪れる。風景や猫の写真を撮るのが目的だったが、
村人達は主人公を迎えて「異邦人だ、異邦人だ」と騒ぐ。それほどまでに、この村に外界から人がやってくるのは
希なことだった。

村長は主人公に、彼がこの村にやってきた三十人目の異邦人であること、またこの村では、異邦人の十人目ごとに
占いをしてもらう風習があると告げる。占いの能力などない、と主人公は戸惑うが、村長が示したのは村の大きな
時計台であった。なんでも、異邦人だけが、時計台の言葉を聞き分けられるのだという。時計が話すのは夜中だけ。

半信半疑のまま、主人公は時計台で一夜を過ごす。当然言葉など聞こえるはずもない、聞こえてくるのは大きな
歯車達が産み出すため息のような「ガッタン ゴットン」といった音ばかり。
ところが、それを聞いているうちに、その音が
「去れ 若者よ 洪水 大時計」
といった単語に聞こえるような気がしてきた。だが主人公はそんなことあり得ないと思い、また険しい山中の村で
洪水などあるはずもないと思い、そのことは誰にも言わなかった。
占いの結果が出ないということで、次の夜も主人公はまた時計台に泊まらされる。夜、満月に照らされた村から
沢山の猫たちが時計台にやってきて主人公と戯れ始めた。猫たちと遊びながら、主人公は愚痴まじりに呟く。
「時計台が話すなんてあり得ないよね。洪水 大時計 なんて聞こえてくるなんて・・・」
そして主人公はそのまま時計台で寝てしまった。

翌朝
目を覚ました主人公が見たのは、時計台と、猫と、誰もいなくなった村の風景だけであった。

直裁的な描写は何もないが、夜中に時計の予言通り洪水がおき、時計台にいた主人公と猫だけが助かったと
ほのめかせる終わり方になっている。
主人公が最初の夜に素直に時計の言葉を告げていたら、村人は助かったのにと思うと、なんとも後味が悪い。

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