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120: 1/2@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:06:02.21 ID:+73Sjjzf0.net
和田慎二『深海魚は眠らない』
和田慎二の復讐譚は、される側が結構エグい殺され方で耐性ない人がトラウマになりやすいものの
基本的にはする側の活躍でされる側が報いを受けてスッキリ、てのが多い
しかしこの話に限ってはあまりスッキリしない
70年代半ば、山奥に富豪と妻と娘二人が幸せに暮らしていた
だが娘の片方が重い心臓病を患い、外国で高額の手術を受けなければ死ぬ
富豪は財産を処分し現金に換え、妻子を車に乗せ空港目指して山道を下った
しかし若い男が飲酒運転する車にぶつけられ富豪は重傷、妻と娘は気絶
若い男は政治家の息子で、両親と共に恋仲の女性タレントと出かけていたのだ
事故がバレたら息子どころか政治家まで失脚、タレントもスキャンダルでおしまいだ
もう一台の車にいたマネージャー・ボディガード、政治家の主治医らも結託し
証拠隠滅のため富豪夫妻と娘は殺されて谷底へ落とされ、金も全て奪われた
…それらを、事故の瞬間に車の窓から投げ出されていたもう一人の娘が見ていた
十年後の80年代半ば、政治家夫婦と息子、元主治医で今は病院長、女性タレントに
Aというセレブの女性が懇意になり、山奥の古城型別荘(以下、城)に招いた
そこに、ある人物から政治家達の調査を依頼された探偵も来ていた
しかし到着後数時間でAの執事とタレントのボディガードが殺され、Aは姿を消す
執事以外の使用人はいない上に客達の車は全てパンクさせられ、電話線も切られていた
(当時携帯電話やインターネット通信の類いは全く存在しない)
嫌な予感がした一同は、それでも城を出て過酷な山道を自力で歩きたくないので
タレントのマネージャーだけを麓の町へ向かわせ、車をとって来させる事にした
そこへハイキング中の雨宿りに来た女子高生B&C
二人は入れてもらったお礼に、使用人代わりにこの城の料理を担当する事になる
恥ずかしがり屋でドジっ子のBと積極的で誰にでもすぐ馴れ馴れしくするCのドタバタは
読者と探偵にはいい気分転換になるが、後ろ暗い過去のある一同はむしろイライラする
121: 2/3@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:08:25.42 ID:+73Sjjzf0.net
2/2が長すぎるって怒られたので2/3になってしまった後味悪い
Aの執事とタレントのボディガードを誰が殺したのかは作中ではっきり描かれないが
その後A視点で彼女がタレントと病院長(元主治医)を殺すシーンが出てくる
だが政治家夫婦とその息子はAが犯人と知らないので恐怖に震える
錯乱して十年前の悪事を口走ろうとした妻を政治家は突き落として殺してしまった
おまけに麓へ向かったはずのマネージャーが城の物置で死体になってたので一同絶望
だがみんなで城を調べていたらAの隠しガレージを発見、動く車もあった
意地悪な政治家息子は父とBCと探偵を置き去りにして一人で車で逃げてしまった
その後政治家と探偵はそれぞれ別のポイントから犯人に気づいた
大人びたセレブ女Aもドジっ子JKのBも、十年前の生き残りの娘の変装
Cに出会ったのは全くの偶然だったが、誰にでもすぐなつくCの人の良さを利用して
Bとしてのアリバイを作りつつAとして殺人を重ねた(詳細割愛)
もし早いうちにAが怪しまれて一同が城を出て過酷な山道を選んだとしても
Bとして同行すればまだ殺すチャンスが続くからだろう
政治家息子には逃げられたが、残った政治家を惨殺するとA=B=主人公は自首した
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122: 3/3@\(^o^)/ 2015/09/27(日) 23:12:14.29 ID:+73Sjjzf0.net
これでラストなんで少し加筆修正した
探偵は、実は執事は殺されておらず自分で死を偽装しただけで、
しかも正体がAの後見人である事を見抜いた
後見人は語る…主人公の心臓病はとっくに限界、十年も生きているのが不思議
しかし実は十年前に主人公から手術の機会を奪ってしまったのは彼だったのだ
この心臓病は幼少期のうちに手術出来ないと、
体が大きくなってからの手術は心臓への負担が重く不可能なのに
主人公の父の富豪と手術の約束をした外国の医者を
彼は自分の子を手術させるため脅迫で横取りして、こっそり日本へ来させていたので
もし富豪一家が政治家達に殺されず外国へ生けても、医者とすれ違いになり
主人公は手術出来ずに外国へ行った無理がたたって死んでただろう
しかしそこまでして助けた実子にもあとで別の病気で死なれ、
彼は主人公の後見人となり復讐を手伝うのが最後の生きる希望だった
探偵は、主人公の命はもはやあと数時間から数日で尽きることを察した
ところで政治家息子は逃げ切れていなかった
あのあとすぐ後見人が車泥棒として通報したため留置場にぶち込まれていたのだ
それを知ってて自首した主人公は彼の檻に近づく、背後に刃物を隠しながら…
ここで暗転したままストーリーは突然終わる
主人公が復讐対象の最後の一人である政治家息子を殺せたかどうかはわからない
警官に取り押さえられたかもしれないし、殺す直前に命が尽きたかもしれない
政治家息子の運転ミスが発端だっただけに奴だけ生死をぼかされるのは残念だし
殺せたとしても主人公はすぐ死ぬのでスッキリとは言い難い