2chスレ・読み物

【読み物】むかしむかし、一橋商学部卒の若者がいました。

スポンサーリンク

※「ほんとそうだな」と思ったので載せました

むかしむかし、一橋商学部卒の若者がいました。

@nekogal21

むかしむかし、一橋商学部卒の若者がいました。
能力は高いもののコミュ力がなく、
就活で商社や外コンに蹴られて自信を失った彼が辿り着いたのは限界日本企業。
失意の底にある若者に対し、先輩社員たちは「大きくなぁれ、立派になぁれ」と
営業のコツや稟議書の書き方、根回しを教え、大切に育てました。

あれから十数年。線の細かった若者はぐんぐん育ち、
いまや立派なエース社員です。
目を細めて彼の成長を喜んでいた先輩社員たちでしたが、エースが就業時間中、
会社のパソコンを使ってビズリーチを見ていたとシステム情報部からの報告が入りました。
神をも恐れぬ大胆な犯行。
社内に緊張が走ります。

最初にエースに声をかけたのは、かつての指導役の課長でした。
「どうよ、最近悩みとかない?久々に飯にでもいこうぜ」
とカジュアルなスペインバルに誘います。
W杯の話をつまみに、腹を割って話し合おうとしたのです。
飲みニケーション。
それは昭和の高度経済成長期から引き継がれてきた、伝家の宝刀。

「あ、子供の寝かしつけがあるんですいません」
そう、30代のエースは共働き。
家族との時間を犠牲にして社内で馴れ合うという、昭和の価値観そのものを拒絶します。
課長が「昔のチームメンバーで集まって飲もうよ」と誘ってもなしのつぶて。

うんとこしょ、どっこいしょ。まだまだかぶは抜けません。

次は部長の番です。teamsで月イチ1on1面談を設定し、ざっくばらんに話します。
「去年外資に転職した鈴木、部門ごと無くなって大変らしいぞ。
未経験でコンサル行った佐藤もキツいらしいな。
うちに残れば、安定して年収1000万だぞ」
不安と安心を相互に煽る姿は、自分に言い聞かせているようでした。

しかし、エースは
「会社に残っても、権限もない中間管理職にしかなれないじゃないですか」とバッサリ。
滅私奉公を続けたその先にある、過酷な椅子争い。
出世レースに勝った頃には60歳を超えているという虚しさ。
部長は何も言い返せません。

うんとこしょ、どっこいしょ。それでもかぶは抜けません。

最後に出てきたのは役員です。
「実は君のためにNY駐在の座を用意しててね。また明日から一緒に頑張ろうじゃないか」
と耳元で囁きます。
「僕も昔駐在したけど、家族にとっても良い経験だったなぁ」
と窓の外を見つめる役員。
世界の中心、マンハッタン。
その魅力に抗えるサラリーマンなどいないはずです。

でもエースは冷静です。
「それ、空手形ですよね?ムンバイの田中さん、NY駐在の約束があったのに
専務がお気に入りを押し込んだから玉突きでインドに飛ばされたって聞きましたよ」
そう、ここは日本企業。口約束なんて吹けば飛ぶ儚いものです。

うんとこしょ、どっこいしょ。やっぱりかぶは抜けません。

課長も部長も役員も最初から知っていました。
力を合わせ、言葉を尽くした所で彼を翻意させられないと。
年功序列に縛られた硬直的な人事制度、成果を無視する報酬体系、経年劣化が進んだ組織。
持続可能でないと理解していても、
何もしないことが正解だと育てられた人たちは変わることができないのです。

大きく、つややかに育ったかぶ。
限界日本企業は、手塩にかけて育てたエースをみすみす流出させてしまいました。
彼だけでなく、期待の若手も次々と辞めていきます。
価値観が多様化したこの時代。

理不尽な全国転勤に耐えて社内でしか通用しないスキルを磨いても
得るものはないと皆、気づいてしまったのです。

ではエースや期待の若手が次々と抜けてしまった企業は崩壊したのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
個人の能力に依存しない組織運営こそが、日本企業の真骨頂。
ほかの社員が「エース」や「期待の若手」としての役割を与えられ、
閉塞感と停滞感で澱んだ空気の会社を必死に引っ張ります。

自分達の世代が逃げ切れれば良いと思っている経営陣。
役員になれれば退職金が増えるとそろばんを弾く中間管理職。
会社にぶらさがるだけの平社員たち。
彼らは転職していった元同僚たちの失敗を祈りながら、
今日も外に出て行こうとする優秀なかぶの足を引っ張ります。

うんとこしょ、どっこいしょ

(完)

参照元:https://twitter.com/nekogal21/status/1598877882906206208

作者さんより

【宣伝】私の膨張した自意識が自我を持ち小説を書くようになったので予約してください。

created by Rinker
¥1,650 (2024/01/21 14:05:01時点 Amazon調べ-詳細)

— 窓際三等兵@息が詰まるようなこの場所で (@nekogal21) December 3, 2022

created by Rinker
¥2,178 (2024/04/20 23:33:30時点 Amazon調べ-詳細)

皆のコメント

@hopetodietil43
時々かぶを抜こうとする合いの手が入るのが可愛くてサラッと読んでしまいました
うんとこしょ、どっこいしょ

@dothebestican
最後のオチに繋がってて良かったですね!

@matuou11
結構多いのが、中堅に入った途端、人手不足の猛烈な負荷がかかり
責任とノルマが激増した割に
給料がほとんど増えないので
ヤル気を失って転職するか
不成績で精神を病んで病院送りで辞める…

@wit_000
日系大企業から外資へ転職した自分のことのようだった笑
社会人としてのいろはを一から指導頂いた先輩方には大変感謝しているが、
閉塞感と年功序列の根強い日本企業文化は今の優秀な若手には息が詰まるはず。
一度きりの人生を後悔のないように生きたいものです。

@Karamanboudesu
いいねー🤣
合いの手が入るところが芸術点高い🤣
最近、「おおきなかぶ」はトルストイだと知ってビックリしたんだよね🤣ロシア民話。
日本的社会主義の揶揄にも見えてさらにいい感じなってるとおもいます。

スポンサーリンク

-2chスレ・読み物