後味の悪い話

【後味の悪い話】火の鳥「羽衣編」

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72:本当にあった怖い名無し:2006/03/22(水) 23:05:19 ID:bgZoBpN3O
手塚治虫の「火の鳥」はいちいち後味悪い。すごく心がきれいになる本だとは思うが。
一番手短な「羽衣編」について

73:本当にあった怖い名無し:2006/03/22(水) 23:08:42 ID:bgZoBpN3O
昔、浜の近くのある貧乏な男の家に美しい女がやって来た。
その女が、家の近くの木に自分の羽衣をかけて海へ泳ぎへ行っている間に男はその羽衣を見つける。
そして、もう金も食べ物もないと、羽衣を市場に持って行くことを考えるが、家の陰から女が「その着物は私のもの、それが無ければ船へ戻れない」と男に声をかける。

男「そんなこと言うなら証拠をみせろ、顔を出せ」
女「2時間ほど前私はこの浜についた、つい浜の美しさ清らかさに泳ぎたわむれ過ぎた」
男「どう言われようと拾ったもんは拾ったもんのだ」
女「おねがい、こんな姿ではそこへ出て行くこともできない」
男「おまえさん泣いてなさるのか、たしかに出にくかろう 今別な着物を持って来るから待ってろ」
そう言って男は着物を持って来る。女は、「もしあの着物が売られたりしたら恐ろしいことがおこってしまうなんとしてでも取り返さなければ」と嘆く。

戻って来た男は着物を渡し、「とても美人だ、おらおなごの肌をみるのは初めてだ。こっち向いてるうちにはやく着ろ」
と女に気を使って後ろを向く。しかしその間に、いつの間にか女が消えてしまう。
「やっぱりあいつはモノノケだったか、」と思うが、実は女は男の家の中に居て、羽衣を取り返そうと探していた。
男は怒り女を引きずり出すと、「おまえさんの素性が聞きたい。どこから来てどこの生まれだ」と聞く。女は「私は遠い遠い国…いえ、空の上の国から長い旅をして参りました」と答える。
「空の上から?おまえさんは天女なのか」と男が言う。
「天女…」と、少し考え、うなだれる女。
その間男は、「天女は神の使いで何でも願いを叶えると言うじゃないか、おまえさんが本当に天女なら話を聞いてくれ。
おらたちまずしいものは毎日いじめられどおしじゃ。お上のご領地ができて、山も畑も浜も海もご領地だ。
漁師がとった魚もみんなお上にとられる。とうとうこの浜も禁漁地になった。おらたちはつらい。
おまえさん、もし天女ならおらの家に住んでくれ。天女がいればおらも幸せだ。働く気になれる」

74:本当にあった怖い名無し:2006/03/22(水) 23:12:22 ID:bgZoBpN3O
やがて時が経ち子供も生まれ、三人は仲良く暮らしていた。子供はとてもかわいい娘で、いずれはいい人と結ばせようと男が言う。
しかし、「だめよその子は結婚させないの!」
「天女のおまえが生んだこの子も天女みたいなきれいな子だ、なんでいけない?
そうかおまえその子つれてもうじき出て行くんだな。
なああれから三年たって世の中も変わった殿様も変わったくらしもよくなった。出て行くことはないずっとここに住んだらどうだ」
「衣を返してもらったら出て行く約束よ」
「頼むおら三年間お前のために夢中で働いた。」
「ええあなたはよくやってくれた。私もあなたと別れたくない。」
「おとき(女の名)お前の国じゃ大きないくさがあちこちであって、一打ちで何万もの人間を殺す武器があるという話だな。
海も山も野も荒れ果てとると言うな。
それがいやでこの国に渡って来たというな。
ここは住みやすいとは言えないがここのとこいくさもない、殿様もいい人だ、魚もとれる、一生おらの女房でいたらどうだ」
おときは何も答えない。
そのうち浜の方が騒がしくなり、たくさんのさむらいがやってくる。
「この度いくさをおこし各村より兵をつのられるようになった。同道せい」

75:本当にあった怖い名無し:2006/03/22(水) 23:13:34 ID:bgZoBpN3O
「いくさなんて滅相もない、おらを兵隊に使うなんてとんでもない」
「この人はとても人などあやめられませぬ」
「馬子にも衣装というだろう、貴様のようなバカにも鎧を着せれば立派な兵隊だ」
「許してくださいおらには女房子供がいる」
「どの家でもそう言う、イヤとぬかせばこの場で殺す」
「さあこい、手間をかけるやつだ」
「おときー助けてくれー」
「お待ちなされませ、これを差し上げますので夫を見逃して」
それはあの衣だった。
「それを渡すんじゃない」と男は言うが、おときはそれをさむらいに渡し見逃してもらう。
「どうしてあの衣をくれてやった、あれはお前が命より大事にしていた宝なのに」
「あなたにはかえられない」
「あの衣がこの国の人手にわたるとおまえは死んでしまうといつかいっていたじゃないか」
「はいあれはこのこの国では作れぬ品…でも私の国ではごく当たり前の衣。
ズク(男の名)私は遠い国から来たと言いましたが、じつはその国とはいまから千五百年前も未来の国なのです。
未来の国のものを過去の国に持ってくれば歴史が変わる、それは恐ろしい罪なのです。」
「そんなむずかしいことおらにはわからない、あれを取り返してくる、待っていろ」
「だめ、ズク、行っちゃあぶない、兵隊にとられてつれていかれる、いかないで」

おときの止めるのにもかかわらずズクは行ってしまう。

76:本当にあった怖い名無し:2006/03/22(水) 23:16:23 ID:bgZoBpN3O
それから一年がたった。
おときは娘に話を聞かせる。
「お聞き母さんは千五百年も先の世に住んでいたの。
その頃皆殺し戦争があって、孤児だった母さんは収容所へ入れられた、そしてその時代を人間をうらんだ。

そのとき不思議な鳥をみたの。その鳥はからだが火のように燃えていた。そして母さんののぞみどおり昔の世界へ送ってやるといったのよ。
帰りたくなるまで居ていいと。そのかわり約束したの、歴史をけっして変えないことを。
母さんの服がこの時代の人手にわたれば繊維品の歴史は変わってしまう。
そしておまえが生まれてしまってもしおまえが大きくなれば、未来人の産んだ子孫がひとりできてしまう。
タイム・パラドックスになるわ。おまえは生まれてはいけなかった。
堪忍して、母さんのわがままな無慈悲な仕打ちを許して」
そしておときは我が子を殺そうとする。
しかし、やっぱりその子を殺すなんて出来ない。
「ズクはもう死んでしまったし、娘や帰りましょう母さんの国へ。
いくら皆殺し戦争が続いたって私とおまえはきっと生き延びてやるわ」

そしておときは未来へ帰る。

だがそのあと、もういないおときを呼ぶものがいた。
「おときー!おとき…布を取り返してきたぞ…おとき!どこだ、帰ったでよ、おらだ…おとき…おとき!どこさ行っただ戻ってこう………いってしもうたか…
おときおらおめえが愛しい……けどだめだおめえを追いかけてこの布を返してやることもなんねえ…」
ズクのからだはすっかり傷だらけになって息も絶え絶えであった。
ズクは四年前おときとはじめてあった、家のそばの松の木の下に穴を掘った。
「この布は…だれにもわたさねえぞ この松の根元に埋めるで心配するな」
「何百年も何千年もよ ここに埋めておくでよ……きっと…きっととりに戻ってこう…」
そのままズクは死んでしまう。

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