後味の悪い話

【後味の悪い話】大石圭「自由殺人」

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613:本当にあった怖い名無し:2006/12/26(火) 02:09:20 ID:My9pq5zI0
クリスマスになると大石圭の「自由殺人」を思い出す

とある金持ちの男(以下、主犯)は海外から
裏ルートで13個の銀色のアタッシュケースを購入する。
中身は小型ビルを跡形もなく破壊するほどの??力?≠?持つ爆弾

それらは12月24日の正午から深夜0時まで、
一時間ずつ順に自動的に爆発されるよう設定されている
アタッシュケースはダイヤルキーがついており、
ダイヤルを合わせて開けば指定時間前にも爆発する
主犯はそれらのアタッシュケースを、今までの自分の人生で
わずかでも関わりのあった者たちに送った

元マラソンランナーの女性・戦争経験者の老人・リストラされて鬱な中年を中心として、
爆弾に関わった者の生い立ちやら心情やらがつづられていく。
とある掃除婦は悪戯だと思って爆弾を捨てた。それを拾った浮浪者は
金目のものを期待してダイヤルを合わせていき、浮浪者ごと街の一角が吹っ飛んだ。

鬱中年はテキトーな時期にテキトーに見合いで会った女と結婚し、
元々なかったようなものだった夫婦愛もあっという間に冷め、
娘は非行に走り息子は引き篭りと絵にかいたような家庭崩壊っぷり。
その上リストラ。鬱だ死のうと指定の時刻に人気のない公園に行く。
そして野良犬とかを追っ払った後に一人で死んでいった。

喪男は密かに片思いしてた清楚な子が男とくっついたのを逆恨みし、
彼女たちが働く店に爆弾を仕掛けた。そして指定の時刻前から
店の正面にあるコンビニ内に陣取り、
清楚子たちが死んで行くのをニヤニヤしながらウォッチングする事にした。
が、喪男が思うよりも爆弾の威力は強く、喪男もコンビニと共に消滅

その頃には元マラソンやらその他の数名が爆弾を警察に提出したせいもあり、
爆弾が出回っている事が発覚して外出は避けるよう報道された。
とある老夫婦は孫と共にマンションで楽しいクリスマスを送っていたが、
マンションが爆発、死んでしまった。
そのマンションに住む中学生の少年が、自室に爆弾を仕掛けたからだった。
(少年自身は指定の時間前に外出していたので無事)

614:本当にあった怖い名無し:2006/12/26(火) 02:10:16 ID:My9pq5zI0
老人は戦時中に人肉食べたり人殺したリした経験をトラウマにしていて、
戦後に連れ添った妻が亡くなった今では心の支えもなく鬱々としていた。
優れた若者たちが次々と死んでいった戦場で、
同じように散るはずだった自分は生き残ってしまったと
罪悪感を感じ続けていた。

命すら賭けて守ろうとしたのはこんな国だったのかと若者への憎悪も抱いていた。
若者が多いところで心中してやろうかと考えながら、いつものように海岸でゴミ拾いをしていると、
中学生ぐらいの集団が話しかけてきた。彼らも同じようにゴミ拾いをしていた。
老人のゴミ拾いを見かけて自分たちもやりはじめた、
老人は偉いと中学生たちは口々に言った。

腐ってたのは現代の若者じゃなくて俺の方だ……老人はそう思い、
指定の時間前の夜も更けてきた頃に、
妻の写真と爆弾を持って海に向かって船をこぎはじめた。
が、時間になっても爆発しない。恐る恐るアタッシュケースを開くと、中には
かつて妻と行った旅行で見た事のある、星の砂が大量に詰まっていた。
旅行の時の妻の笑顔を思いだし「俺また生き残っちまったよ」と
むせび泣きながら老人はまた岸へと舟をこいでいった。

主犯は元マラソンランナーを呼び出し、ベルトコンベアの上で走れと命じた。
一定の距離を一定の時間以内に走りぬければ残りの爆弾の在り処を教えると言う。
主犯は実は元マラソンのストーカーで、
マラソンの走る姿を間近で見たいというのも犯行理由の一つだった。
正義感の強いマラソンなら爆弾を警察に届けた上に、
他の者を救うために自分の誘いに乗るはずだと悟っていたのだ。
マラソンは走り続け、救えた者もいれば救えなかった者もいた。

615:本当にあった怖い名無し:2006/12/26(火) 02:11:52 ID:My9pq5zI0
全て走り終えたマラソンに、主犯は語る。
主犯はマラソンに対するように、爆弾を送りつけた者の中では
老人にも他とは違う思い入れがあるという。
ある時ふと旅行に出た主犯は、幸せそうな老夫婦を見た。

なにかが気にかかりしばらく老人と同じアパートに住み暮らし、二人の平凡な幸せを観察し、
そして老人の妻が死ぬまでを見届け続けた。
葬式に出席しながら、主犯は生まれてはじめて泣いたという。

老人に渡そうとしてやっぱり渡せなかった爆弾は今主犯の自宅にあるという。
「僕はここで死にます」と主犯は宣言するが、
死に逃げは許せないとマラソンは最後の力を振り絞り、
主犯を案全域まで引きずって行った。やがて主犯は逮捕された。
弁護団は「殺意を持ったのは爆弾を現場に放置した人間の方」と徹底的に争う構えを見せていた。

年内に事件に関与した人物全てが明らかになったが、爆弾の出荷ルートは不明のまま。

翌年も、その翌年も、クリスマスはやってきた。
しかし日本でそれが祝われる事はなくなった。
クリスマス商戦という言葉も死語になった。
その日は多くの人々の命日となったのだから。
『隣人愛』という言葉がその日に消滅したと評する者もいた。
ただ一人のおかしな男が犯罪を行ったわけではなく、
ごく平凡な人々も加担した事への恐怖は事件後も続いた。

もはや誰も信じる事ができなくなった人々にとって、唯一の救いはマラソンだった。
マラソンが事件に関わった事は大々的に報道され、
かなり美人な容姿もあって様々なところからスカウトがきた。
しかしマラソンはそれを断り、事件前と変わらない生活を送っていた。
それから何年もの日々が過ぎたがクリスマスがくるたびに人々は忌まわしい事件を思いだし、
そして同時に、見知らぬ人々のために歯を食いしばり走りつづけた人の事を思い出した。

一応マラソンという救いはあるものの、
読んでて老人や鬱中年や喪男に強く感情移入したのでかなり鬱な気分になった

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