ホラー 後味の悪い話

【後味の悪い話】デッドバイデイライト「殺人鬼レイスの過去」

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176: 本当にあった怖い名無し2019/10/30(水) 08:10:27.29ID:AabQs+M40
デッドバイデイライトというホラーゲームに登場する殺人鬼の一人、レイスの過去

若き青年、フィリップは故郷を離れ都会の街へとやってきた。持つものはその身ひとつ。金も寝る場所も彼にはなかったが新生活に対する期待と希望を胸に栄えた街並みを眺めていた。

車の解体作業を行う仕事の面接を受けることができた。
フィリップが若いからかはたまた運が良かったのかはわからなかったが面接は合格した。
すべてがうまく行っていた。この時フィリップは本気でそう思っていた。

会社の社員として正式に迎えられると、フィリップは粉砕業務を任されることに決まった。
粉砕業務はパターン化されており、フィリップは決められた操作で機械を操作し車を粉砕するだけで良かった。
真面目で純朴なフィリップに適した業務だった。

会社で働き数ヶ月もすると会社の持つ独特な空気を感じるようになった。フィリップの故郷は犯罪が跋扈する地域であった。犯罪が絡む空間には独特の匂いがするものだ。

交わされる多額な金銭、買収された警察官、犯罪の匂いは日増しに強く感じさせ 、会社が裏社会と通じていることを否応なしに感じさせた。
それが如何なるものであったか具体的なことまではわからなかったがフィリップは気にも留めなかった。
犯罪など珍しいことではなかったし彼自身の業務は犯罪とは無関係なようだったからだ。

フィリップは与えられた仕事を淡々とこなした。流れてくる廃車を粉砕機にかけ鉄の塊に変えて行った。平穏と安寧の日々、それを終わらせる運命の日は唐突に訪れた。

177: 本当にあった怖い名無し2019/10/30(水) 08:12:44.85ID:AabQs+M40
とある日、いつも通り粉砕業務を行っているとトランクから血が滴り落ちているのを発見した。
フィリップはトランクを開けた。自分の想像した未来が違っていることを祈りながら。

トランクの中には若い男が縄で縛られ詰め込まれていた。
フィリップは訳がわからなかったが、ともかく男の拘束を解き逃した。男は駆け出し一命を取り留めた。
フィリップがホッとしたのも束の間、その男は上司に捕まりその場で首を掻き切られた。

目の前で飛び散る血飛沫。何の躊躇いもなく人を殺す上司の鮮やかな動作。あまりにも非現実的な光景にフィリップは呆然としていた。
どさりと地に落ちる死体を見、目の前に立つ上司を見、フィリップは否応なしに気づかされた。そうだ。聞かなければならない。トランクに詰め込まれた人間、目の前に転がる死体、今まで僕は何をしていたのか!と。
フィリップは上司に対し説明を求めた。

そして明かされた事実はあまりにも理不尽で残酷なものだった。
解体業は名目でありその実は殺人を請け負う殺人工場であったこと、自分が殺人を執行する処刑人だということだった。

フィリップは絶句した。自分は知らない間に数多くの人間を殺していたのだ。
今まで数多くの車を粉砕機にかけた。何度も何度も人間を粉砕機にかけた。
普通の人間には戻れないと思った。今まで犯罪を犯さす、真面目に正しく普通の人間として生きてきた。
なのに殺人鬼にされてしまった。これからはもう人殺しとして人を殺し続けるしかない。
彼の精神は崩壊した。自分の意思で殺人を犯すより、狂って分別がわからなくなった結果人を殺してしまう方が楽だったから。
フィリップは手にした工具を上司の脳天に強く叩きつけ、その場から立ち去った。

彼の行方を知る者はいなかった。彼に出会った時、そこには死が待っているだろう。

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