後味の悪い話

【後味の悪い話】漫画『砂ぼうず』

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597本当にあった怖い名無し2021/10/05(火) 14:26:26.05ID:MBO4ufug0
『砂ぼうず』という漫画から、第二部に登場する「腹裂きの鳴海」のエピソード。
マッドマックスや北斗の拳のように戦争によって荒廃して砂漠化した遠い未来が舞台。
シュールな世界観ながらも第一部ではコメディタッチなエピソードが多かったのだが、話が進むに連れて政治絡みのシリアスな要素が増えていき、第一部のラストではついに戦争が勃発。
第二部からはコメディ要素ほぼ皆無でシリアスそのものな戦争もののストーリーが展開する。

第一部主人公が主役の座から降板し、第二部からは戦場をかき回して荒稼ぎしているノンポリのモグラな傭兵の少女が主人公となる。
少女は「悪霊」と呼ばれ、このエピソードでは「呪い」と称される術を駆使して戦う。

戦争は西と南が争っている。
西の農村に、平凡な農夫である鳴海という男と、身重の妻がいた。
そんな村に、南が誤射した砲弾が落ちてきて、妻が巻き込まれた。
鳴海が駆け付けた時、妻は腹が裂けるという致命傷を負っており、砂の上には内臓と胎児がブチ撒けられていた。
妻と胎児が太陽の光に焼かれて真っ黒く変色していくのを、鳴海はただ茫然と眺め続けていたらしい。
やがて鳴海は農具を銃に持ち替えて「民兵」と成ると、一人孤独に南軍と戦い始めた。
それまで戦闘経験などまるで無い平凡な農夫だったというのに、なんと彼は兵士としての才能を開花させ、多くの南軍兵を殺害した。
それだけにとどまらず、鳴海は南軍兵をなるべく生け捕りにしてから「生きたまま腹を裂いて砂漠に放置する」という残虐な行為に走り、「腹裂きの鳴海」と呼ばれて南軍を恐怖に陥れた。
やがて鳴海は西軍から正式に評価され、大勢の部下を配属されて部隊を指揮するまでに至る。

598本当にあった怖い名無し2021/10/05(火) 14:28:42.69ID:MBO4ufug0
いつものように鳴海が部隊を引き連れて南軍兵狩りを行っていたところ、主人公である少女が現れる。
少女は鳴海の部隊を撹乱すると、南軍兵達を連れて逃げた。

一旦、少女の用意した秘密の地下壕に匿ってもらった南軍兵達は、助かったと胸を撫で下ろす。
しかし少女は「気まぐれに助けただけだから、後は自分達で何とかしろ」と言って立ち去ろうとする。
このまま放置されたら、地下壕で餓死するか、鳴海の部隊に捕まって今度こそ腹を裂かれて殺されてしまう、助けてくれ、と懇願する南軍兵達。
妻と子供がいる者、母親に「必ず生きて帰る」と約束した者、彼らは必死だった。
それでも少女は、お前らのような雑魚を助けて何のメリットが有るのか、と冷徹。
すると南軍兵は「軍の物資を横領して貯め込んだ大金が有る」と白状する。
少女はこの話に乗り、鳴海の部隊を倒すべく奇襲を挑む。

少女の「呪い」は、「当人が『見たくない』と潜在意識で思っている忌まわしい存在、トラウマの幻覚を見せる」というのも。
レ○プ趣味があった者は、梅毒に感染して顔面が溶け落ちる幻覚を見た。幼い頃に悪人を殺して迫害された過去のある者は、その時の事を追体験した。
この呪いによって鳴海の部隊はほぼ行動不能に陥って壊滅状態に陥る。
だが、なんと鳴海だけは部隊達と違い、普通に動いて応戦してきた。
それでも少女は鳴海の背後に回って銃口を突き付けることに成功し、こう質問する。
「どうして普通に動ける?あたしの『呪い』で、あんたには『死んだ奥さんの幻覚』が見えてるんじゃないのかい?」
鳴海は答える。
「そんなもの、『普段から見えてた』よ。腹から内臓と胎児が飛び出した状態の女房が、いつも俺の目の前にいて、『あの日』と同じように俺に手を伸ばして必死にこう言うんだ、『殺して』ってな」
鳴海は少女の方を振り返る。
「女房と胎児の姿が消えてくれるのは、南の連中の腹を裂いている瞬間だけだ」
そして鳴海は笑った。その眼は完全に狂っていた。
少女は悟る。
「そういうことか。あんた、『既に呪われてた』んだね・・・」
少女は鳴海を殺さずに気絶させた。

599本当にあった怖い名無し2021/10/05(火) 14:30:29.74ID:MBO4ufug0
地下壕に戻り、南軍兵達から横領金の隠し場所を聞いた少女は、「本当に金が有るのか確認してから解放する」と言うと、防空壕の入り口を固く塞いで南軍兵達を幽閉してから出て行った。
そのまま防空壕の中で待ち続ける南軍兵達。
やがて、一人が疑問を口にした。
「あいつ、何で俺達の話を信じたんだろう?」
そう、窮地に立たされた人間は、助かるために咄嗟の嘘を吐いたっておかしくはない。
横領金が存在する証拠なんて何一つ無かったのだ。
それなのに、あの少女はあっさりと南軍兵達の話を信じてくれた。
南軍兵達は気付く。
「もしかして、最初から知ってた上で、俺達を助けたんじゃないのか?」
少女は、最初から南軍兵達の横領した金を狙っていた。南軍兵達の位置を鳴海に密告して襲われるよう仕向けたのも少女であり、全て彼女の計画通りだったのだ。

まんまと横領金の横取りに成功した少女は、高台でドリンクを飲んで優雅に寛ぎながら高笑いしていた。
戦時中なんだ、戦争で稼がなきゃ。荒稼ぎするチャンスなんて幾らでも転がっている。

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