師匠シリーズ

【師匠シリーズ】タイトルなし 2

【師匠の】師匠シリーズを語るスレ第六夜【行方】

師匠シリーズセルフパロディ。

274 :本当にあった怖い名無し:2008/04/12(土) 08:32:26 ID:dVnAnwBk0
たしかキッカケは師匠が京介さんにこのデカ女というようなことを言ったことだったと思う。
それに対して京介さんは冷静に「女より背が低くて満足か?」と反撃していた。
「は? 僕の方が高いだろ」と鼻で笑う師匠に、
わざとらしく吹き出して「貴様が? 冗談。じっさいこっちのが高いじゃないか」と京介さん。
「なに」
ムッとして師匠が詰め寄る。
「みろ。僕の方が高い。女の背は3センチ増しだかなんだか知らんが、それ入れても僕の方が高い」
「靴見ろよ靴。普通のスニーカーだろうが、バカ。条件は一緒だ。それに私の方が目線が上だろ」
「目が悪いんじゃないのか。微妙とかじゃなくて明らかに僕の方が高い」
「急に背筋伸ばして、バカみたい。必死なんだ、こんなことで。まあ私のが高いけど」
「なんだこのデカおん……オトコオンナが」
「言い直してんじゃん。認めてるじゃん」
「うるさいぼけ」
「死ね」
そんなやりとりを草木を愛でるような心持ちで眺めていた俺だったが、急に話がこちらに向いてきた。
「おい。測れよ。どっちが高いか。まあどうでもいいけど」
「どうでもいいのはこっちだよ。男より高くても嬉しくもなんともないんだけど」
いいからとにかく測れとステレオで言われた。
そして俺は渋々二人のそばに歩み寄ったが……

275 :本当にあった怖い名無し:2008/04/12(土) 08:33:52 ID:dVnAnwBk0
「近い近い近い!」
あろうことか二人は正面を向いて睨み合いながらわずか数センチの距離まで近づいたのだ。
「普通背比べっていったら背中合わせでしょ!」
見てるこっちがドキドキする。
舌打ちをしながら二人はお互い背中を向けてぴったりとくっついた。
くっつかなくてもいいじゃん。そう思って少しイライラする。
「おい。どっちが高い」
「この変態、今あきらかに全身の関節必死で伸ばしてんだけど。プルプル震えてるし」
「は? それはそっちのことだろ」
言い争いを聞き流しながら比べて見るが、よくわからない。同じくらいに見える。
手をピンと伸ばし、水平にして二人の頭に乗せようとしたが、京介さんからダメ出しがあった。
「髪に触るな」
しかたなくその辺で真っ直ぐな小枝を見つけてきて二人の頭の上にそっと乗っけた。
「おい。どうなんだ」
「まあどうでもいいけど、私昨日5時起きなんだよね。
 起きてから時間たつと軟骨だかなんだかが収縮して背が縮むらしいな。まあどうでもいいけど」
「僕なんて4時…3時起きとかかな。まあいつもそのくらいだからね、起きるの。あ、2時くらいだったかな昨日は。
 それに起きてすぐ凄く重いもの運んだしね。あれは効いたな。関節に。もうホント、自分でも背が縮んだのわかったもん。
 え? 何運んだって? あの……あれとか、ホラ。……テレビとかね」
あんたそんな深夜にテレビ運んでどうしようってんだ。
見ていられない。

276 :本当にあった怖い名無し:2008/04/12(土) 08:35:19 ID:dVnAnwBk0
「おい、まだか。どっちなんだ」
「どっちだ」
小枝は水平に保たれたまま、二人の頭の上に乗っている。
俺は少し離れて見たり、近づいたりしながらどっちに傾いているか見極めようとしていた。
「まだか。おい」
「そうだ。早くしろよ。この負けず嫌い野郎が、体中の筋を必死で伸ばしすぎて体力の限界に近づいてるみたいだしな」
「おまえだって、やけにドキドキしてるじゃないか」
「そっちこそ心臓バクバクいってるの伝わってくんだけど」
「おまえの方がドキドキしてる」
「そっちのがバクバクしてる」

小枝を頭に乗せて。
背中をぴったりとくっつけて。
町外れの公園に夕日が射し、二人の影が長く伸びる。
それはとても美しい双面のオブジェに見えて。
少し、切なくなった。

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